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6 初授業

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朝起きて一階に下りると。もうリオはいなかった。置き手紙と朝食が置いてある。手紙を手に取ろうとした時食卓横の電話のベルがなった。

「はい、もしも・・・」

「あ、ベルまだ家!?ごめんね、朝起こしてあげられなくて、急いで!始業まであと10分!遅刻しちゃう!一時間目アリメの授業でしょ。死ぬ気ではしって!」

「は、はいいいい!」

遅刻!授業の初日から遅刻なんて・・・。それにリオに心配かけさせて、私ってば本当・・・そんなことを言っている場合じゃない。
ベルは急いで制服を着ると髪も整えず家を飛び出す。朝食のパンを咥え、森を抜けて寮から学校へ続く道を走っていると他にも遅刻組が走っていた。学校の敷地内はホウキで飛ぶことも制限されているので走るしかない。仲間がいることに少しの安堵を覚えつつ。学園の玄関口へと急ぐ。玄関から中に入るとベルは上履きをスリッパ履きしながら階段を駆け上った。よりによってなんでアリメ先輩の授業教室は6階なのか。4階にさしあたった時。チャイムが鳴った。終わっ・・・いやまだ鳴り終わるまでが勝負だ。ベルは自分にそう言い聞かせて階段を一気に駆けあがる。教室のドアに手をかけた瞬間チャイムが終わった。勢いよくドアを開ける。

そして、全力の謝罪だ。

「おくれましたー!すいません!!」

クラスの視線が私に降り注いでるのが痛いほどわかる。

「ベルルカ・ツォーレン・・・。遅刻の理由は何かな?」

アリメ先輩はニッコリと柔らかい笑顔で近づいてきた。

「ね、ねぼー・・・です。」

「正直ですね。」

「ほんとぐっすり寝ちゃったので、本当にびーっくりなんですよ!熟睡!」

「・・・ふ・・・くっ・・・あ、いや、そういうのはいいから席に着きなさい。急いで!」

アリメ先輩が笑いを堪えてるのを見てベルは少し安心した。授業になると怖いなあ。と思う。でも、真剣にやってるってことなのだろう。ベルが急いで席に着くとすぐに授業が始まった。

「皆さん初めまして。アリメ・リベルタです。この授業を履修していただき感謝します。僕の授業では魔法理論学をやります。間違いないかお確かめの上ご出席ください。では、一時間目では今後のガイダンスと次回までの課題を配ります。合わせて予習の仕方なども指導させていただきますので。それではプリント1ページをごらんください・・・」


ーーー授業が終わってアリメ先輩が出て行った後も教室にいた全員が動かず話さず、呆然と席に座っていた。授業の最後に配られた課題は本1冊分の厚さ、これを2日後に提出なんて出来るはずがない。更にガイダンスで話された内容に含まれる難しい単語達・・・言葉も出ない。
しばらくたって誰かが喋った。

「この授業・・・とるの止めようぜ」

友達数人が答える。

「ああ・・・」

「意味不だな」

「無理だこんなの、誰が出るんだ?」

そして立ち上がると課題をその場に置いて帰ってしまった。アリメ先輩目当てで来た女の子達も、真面目に取りに来た学生達も、適当に来た人達も、みんなそれに続くように何かぐちぐちと喋りながら帰って行った。ちなみに私はラルクの横に座っていたのだが、ラルクもボケーっとして動かないままだ。

「ラルクー?大丈夫?」

「・・・はっ!えと、えへへ全然僕にはわからないよ。ベルどうしようね?」

「このままじゃこの授業誰も参加しないかな?」

「うーん、それじゃあ先生かわいそうだね。取り敢えず僕は二回目も出てみるよ。わかんないけど、僕魔法理論学をきちんと学んでみたいんだ!ベルは?」

「そっか、私も辞めるつもりはないよ。」

「だったらリムも参加する!理解できないけど。極めれば新しい魔法すら創れる学問・・・せっかく学園に来たんだしやってみたいの!」

後ろの方に座っていたらしいリムちゃんがかけよってきた。教室には私達以外にもう誰も残ってはいなかった。もしかしたら本当にこの三人だけなのかも。
とりあえず次の授業の時間があるので考えるのは後にして課題を持ち次の教室へと向かう。

 次にベルが取った授業はミア先生の授業だ治癒魔法も習ってみたかったので受けてみる。授業は楽しそうだったのでこれも履修することにした。
この学園では午前に好きな授業を選択して取ることが出来る。最初の2 限分はお試し期間らしい。それを自分で選び自由に必要単位分とれば、その後は必須履修教科を受けてやっと放課後だ。初めての授業は色々と新鮮な気分を味わうことが出来た。

「ふう、なんだか眠くなっちゃうね。」

ラルクが抜けた声で言う。

「私も~。授業ってなんであんなに心地よくねむたくなっちゃうんだろうね?」

あくびをしながらリムちゃんは本当に眠たそうにしている。

「みんな、帰ったらお昼寝だね。」

ベルも正直言うと結構眠い。帰ったら本当にお昼寝しようかと思っているところだ。
そんなことを言いつつ帰り道の分岐地点まで来ると3人は手を振ってお別れをする。

ベルが家に帰ると今日はもう既にリオが帰っていた。

「おかえり、ベル。」

「ただいま!」

「どうだった?遅刻した?」

「遅刻・・・しちゃいました。でも、本当に1秒くらいだったんだよ?惜しかったなあ。アリメ先輩怒ってた。」

「あはは、意外とそういうのに厳しいんだよねあいつ。」

「あとね全然話は変わるんだけど・・・アリメ先輩の授業・・・その・・・私達3人以外取らなかったらどうなるのかな。」

「んー。そうだね。3人程度しかいなければ流石に授業中止なんじゃないかな?」

「え、中止なんてそんな・・・」

「いや、別に珍しくはないんだよ。履修する生徒数に比べて授業の数が多いんだ毎年授業中止で暇を持て余す先生が数人はいるんだよね。」

「そうなの?でも、アリメ先輩は初めての授業だし。楽しみにしてたみたいだし・・・」

「ベルが心配することもないさ。好きなのとればいいよ、アリメの事は気にせずね?」

「うん、でも私はアリメ先輩かわいそうとかそういうの関係なく魔法理論学は履修しようと思うんだ。ラルクも出るっていうから。」

「ラルク君はともかく女の子が魔法理論学とるなんて珍しいね。なんで学びたいのか聞いても?」

「だって応用すれば魔法を自分で作れちゃうなんて魅力的でしょ?それに私実は魔法理論は独学で少し知識があるんだ。」

「簡単じゃあないけど確かにそうだね。独学!凄いね、僕はダメだよーあれは苦手。」

「私、昔お花を冠にしたくて花冠をつくる魔法作ったことあるんだ!」

「え!?自力で?」

「そうなの。多分、あれ以来1度も出来ないけど・・・確かに作れたはずなの。よく思い出せないなあ。ラルクに聞けば覚えてるかも?」

小さい時の淡い記憶だ。小さい子がまぐれで出来ることではないし、もしかしたら夢かもしれないそう思ったりもしたが。あのなんとも言えない嬉しい感覚が忘れられず独学で魔法理論学の勉強を始めた。しかし、学べば学ぶほど魔法の生成は難しく自分の過去に疑問を持たざるを得なかった。確かラルクも一緒にいた時の事だったはず。ちゃんと聞いたことはなかったけど今度彼の記憶も確かめておこう。

「・・・そう。」

「なんだか、たまにあるんだよね。知らないはずなのに知ってること。なんだかおかしな話だけど。」

「これはもしかしたら・・・だけど。聞いたことあるんだ。前世の記憶がたまに引き継がれる人の話をね。そういうのが小さい時によくパッと思い出して話す人がいるみたい。ベルのはそれかもしれないね。」

「前世・・・かあ。そうだったら面白いけど。」

ベルはそういうのをあまり信じない質だ。本で見るおとぎ話やファンタジーは好きだけど。自分の目で見たもの以外は信じられない。ただそのような伝承を聞いたことは何回かあった。魔法の概念を考えればそれもありえない話ではないのかもしれない。

「よく言い伝えられてるのは前世で魔力が高かった大魔法使いや大昔に存在していたドラゴンの一族だった人なんかが覚えてるってやつかなあ?諸説あるけどそういう人達が記憶を持ち越しやすいだかって本で見た気がするよ。」

「へえー。それになぞらえると私が前世で大魔法使いとかドラゴンだったかもかあ。ちょっと嬉しいかも?」

ベルはリオの話を聞いて、前世かあ・・・正直あんまり信じてないけど。そうだったら素敵だな。前世で友達だった人とかに会ったらきっとうれしいんだろうな。なんて考えて少し楽しくなってしまった。こういう考えは1度考え出すと止まらなくなる。

「おじゃましマース!!」

リオと話していると、アリメ先生がチャイムも鳴らさず飛び込んできた。
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