駄菓子屋六角堂の騒がしい日常

百川凛

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「はぁ~……」

 黒のジャケット、白いワイシャツ、ひざが隠れる長めのスカート、肩から下げた合皮製の鞄、三センチヒールの低めのパンプス。長い黒髪を後ろでひとつにきっちりと結び、健康的なナチュラルメイクを施した顔。

 一目で就活中と分かる格好をしたあたしは、溜息をついてとぼとぼと石段を上っていた。

 花森はなもり小町こまち、二十二才。就活という名の強敵ボスに負け続けている就活浪人生。受けた会社は数知れず、そのくせ内定の数はゼロである。……泣きたい。
 おかげで心身ともにボロボロだ。友達は在学中に内定を貰ってとっくに働いてるっていうのに……はぁ。

 今日の面接だって結果を聞くまでもなく落ちただろう。これは単なる諦めではない。何十ヶ所も受けていれば面接官の反応で合否なんて大体分かるのだ。その経験から、今日の所は確実にアウト。

『あ~、そうだね。君は若いしやる気もあるし、うちより他の企業で働いた方が合ってるんじゃない?』

 ってあからさま過ぎんだろ!! 採用する気ないよね!? これ絶対採用しないよね!? 他行けって言っちゃってるもん受かるわけないじゃん馬鹿なの!?

「はぁ~~……」

 動かしていた足を止め、目の前の大きな拝殿を睨み付ける。

 ねぇ神様、一体あたしの何が悪いの?

 賽銭箱に小銭を入れて、私はもう一度問いかけた。

 ねぇ神様、一体あたしの何が悪いの?

 別に神様に文句言ってるわけじゃないよ? ただ知りたいだけ。だってあたし、見た目は可もなく不可もなくの平均レベルだし、一応大学(地元の無名大だけど)も出てるし、やる気だってあるし、情報処理やその他諸々の資格だって持ってるし。中小企業の一社くらいは受かっててもいいと思うんだよね。そりゃなるべく良い会社に入ることを目指してるし、それなりに名のある会社ばかりを選んで受けてるのは問題なのかもしれないけど。でも、でもさ? とんでもない一流企業なんて高望みしてるわけでも就職に不利な理由があるわけでもないのに、ここまで就職出来ないなんてちょっと異常じゃない?? ニュースでは世の中の景気は回復してきてるって言ってるけど、あたしの周りは大氷河期継続中だ。

 ここまで落ち続けると、自分は社会に必要のないただのゴミクズなんじゃないかと思えてくる。燃やされて灰になるだけのいらないゴミ、空気中を漂う存在価値のないただのクズ。そりゃ会社もこんなゴミクズ女要らないよね。居たって邪魔なだけだもん。さーせん。生きててさーせん。……ああ、自分の性格がどんどん卑屈になっていく。これ以上拗らせてしまう前にねぇ、神様、どうか。


〝次こそは就職出来ますように!!〟


「はぁ~」

 ……帰ろう。
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