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10話 3日目 お粗末様でした。

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気づけば朝を迎えていた。

辺りを見渡す俊は気絶した時の記憶を思い浮かべる。

「痛かったですね。飛んだ先があの柔らかい壁ならまだ良かったんですが・・・しかし、誰が僕をここに運んだんでしょう?」

俊は部屋出て人を探しているとメイドが近づいてきた。

「トオル様、ノベール様がお呼びです。」

メイドの後についていく俊は昨日のメイドの一人だと気づき話掛ける。

「昨日はちゃんとノックしたつもりなんですが、聞き取れてませんでしたか?」

「その、衣装選びで談笑しておりまして・・・誠に申し訳御座いません。」

足を止め謝罪をするメイドの反応にノベールへの誤解は解けていると安堵した。

「大丈夫ですよ、今思えばもう数回確認しておけば良かったですね。」

「私達にも落ち度はありますし・・・ただ別の問題が発生してはいますがそれはノベール様からお話があると思われます。」

「わかりました。ところで何処に向かってるんですか?」

「はい、ノベール様は現在お食事中で御座いますのでご一緒にどうかと思い準備させて頂いております。」

昨日は食事も取れずそのまま気を失ったのでちょうど良いと内心喜んだ俊だった。

部屋についた俊は入室し、ノベールと顔を合わせた。

「・・・・・・・」

ノベールは少し顔が赤くなり口を摘まむ。

「昨日はすいませんでした。その・・・事故でした。」

「いえ、こちらも気づかず・・・良ければお掛けになってくださって?話はお食事の後に致しましょう。」

メイド達により食事が運ばれ食事を楽しむ俊だった。

食事を済ませノベールは咳払いののち、前日の件を切り出す。

「トオル様、昨日は私《わたくし》をお探しだったようですが、何か御座いましたの?」

「そうですね。現状バグについて協力はしてますが、無一文となる為、オーク領に行く為にも路銀と食費を稼いでおこうかと。バグ解決後には幾らかの金銭は頂けるようですが今を生きる必要もあるので・・・」

「それでしたら食事はお城でして宜しくてよ?」

食事の負担がないのは良いが、街中の探索についでバグ探しをしたい俊は食事の度にお城に戻る手間を考えていた。

「いえ、それは嬉しいのですがバグを探している最中にお城まで戻っていると探す時間もかかりますから。それにノベールさんは大橋の件がありますから別行動になるでしょうしね。」

「大橋の方は問題御座いません事よ?魔法もありますから七日程で作業は終わりますし、現状は封鎖しておりますから氷の件を優先したいのですわ。」

「自分の世界と比較すると作業が早いんですねぇ・・・では大橋の方も問題はないようですし氷の件で連絡しますかね。」

「それはもちろんなのですけれど・・・もう一つの件もお話が御座いまして・・・」

もう一つの話と聞き、メイドの話もあった事から見てしまった事だろうかと身構える。

「そこまで身構えなくてもよろしいですわ。その・・・何処まで見ましたの?」

素直に伝えるべきか悩む俊だったが、後から揉め事になるのも嫌と思い直に伝えた。

「はい。下着姿は見てしまってますね。」

顔を赤く染めていくノベールは机に向かって倒れ込みメイド達が駆けつけ介抱をした。

「ノベール様、事故です!事故は見善に防げない事もあります!」

「そういえば、僕の世界ではこういった時、お約束の言葉があるんです」

「おぉ!ノベール様、トオル様が解決できるそうですよ!」

お約束という事をしらないメイド達はトオルの声を待った。

「えーと、ご馳走様でした。」

万遍の笑みを浮かべたトオルの表情を見てノベールは羞恥心から気を失ったのであった。

「ノベール様あぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ノベール様を寝室まで運びますから、トオル様はそこで大人しくお待ちください!」

メイド達に担がれ寝室へと運ばれるノベールを他所に、クロクに連絡を取る俊だった。



-----現在のバグ一覧-----
マップに自分の座標が表示されない。
ツジの村付近に判定がない地面があり落ちる。
牢屋内の壁が柔らかい。
強度のおかしな建物がある。
国立図書館の書庫の壁の強度
鍛冶屋の倉庫内の全て
大きな氷の塊
凍結魔法の威力

-----バグ?不明-----

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