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最終章
第104話 真相④
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「では、二つ目の事件です。」
紗耶香は人差し指と中指を立てた。
「あの事件は…そうですねぇ。あの事件以降は、直接的に私は誰かを憎んでいたとかそういう目的はありません。ただ瑞穂先輩に従っていただけです。瑞穂先輩のためならなんでもすると決めていたのです。たとえそれが殺人であっても。」
紗耶香は前髪を掻きあげた。
恍惚とした笑みを浮かべ、心底楽しいというような表情を浮かべている。
「あの子…織部陽菜子がターゲットとなった理由としては、まぁそうですね。ただ単に気に入らなかったから、とでも言いましょうか。あの子は目の前の幸せに溺れ、周りが見えていなかった。そこにいる、宮坂竜一と恋人になってからね。ちょうど良かったのよ、彼女はとても素直でマインドコントロールしやすかったしね。」
「…気に入らなかった?そんな理由で、陽菜子を殺したの?」
沸々と怒りが込み上げてくる。
そんな理由で、陽菜子は殺されたのか。
瑞穂と紗耶香の快楽のために……
そんな、もののために………
悔しくて、涙が溢れてきた。
「かわいそうにね、瑞穂先輩にさえ関わっていなければあんな目に合わなかったのに。ただ単に瑞穂先輩の目につくところに彼女がいた。それだけよ。」
「……なんてこと!よくも陽菜子を!!」
舞は紗耶香に掴みかかろうと手を伸ばした。
しかし紗耶香は身体を捻って、簡単にそれを避ける。
反動で、勢いよく前にすっ転んでしまった。
「危ないですよ、舞先輩。まだ話は終わっていません。お気持ちは分かりますが。」
余裕のある笑みを浮かべながら、紗耶香は舞を見下ろす。
その瞳には憐憫さえ浮かんでいた。
舞は力なくその場に項垂れる。
「本当なら瑞穂先輩は、そこにいる宮坂竜一と付き合いたいと思っていた。けれど、彼は瑞穂先輩ではなく織部陽菜子を選んだ。瑞穂先輩はプライドを傷つけられた。なぜ、美しい瑞穂先輩ではなく、あんな平凡な子が選ばれるの?そんなの許せるわけがない。」
紗耶香の言葉に力が入っていく。
そこで舞は違和感に気付いた。
まるで瑞穂本人ではなく、自分が悔しくて仕方ないという風に。
おそらく紗耶香は自分と瑞穂を重ね、瑞穂の傷みは自分の傷みであるかのように思っているのだ。
一心同体とでも思っているのだろうか。
「後は簡単よ、あの子に嫌がらせの手紙やあなたを名乗ったLINEを送り、あなたが竜一のことを好きなのだとそれとなく伝えるだけ。案の定、素直な陽菜子はすぐに信じて取り乱してくれたわ。あなたが犯人だと思ってね。」
「………」
「陽菜子はあなたを恨んだまま、死んでいった。」
紗耶香はまるで詩でも詠んでいるかのように続ける。
「あなたもさぞ悔しかったでしょうね。陽菜子と誤解が生まれたまま一生解ける機会を失い、さらに自分が陽菜子を殺してしまったのだと責めたでしょう?」
「……薄々は思っていたわ、仕組まれたものかもしれないって。」
「あら、そう。でもすでに後の祭りですね。」
舞は唇を噛みしめた。
悪魔だ。
目の前で唇を歪ませて嗤っているこの人物は、人間ではない。
正真正銘、悪魔だ。
「あぁ、そうそう。ちなみにいいことを一つ教えてあげましょう。」
無邪気な子供がするように、紗耶香は両手を胸の前でぽんっと合わせた。
「…まだ…なにかあるの?」
「あれは、自殺ではなかったのですよ。」
「……え?」
「だ、か、ら。自殺ではなかったんです。私が瑞穂先輩に頼まれて、織部陽菜子の背中を押したんですよ。」
「なんですって?!」
「あの子…瑞穂先輩に色々吹き込まれて、すっかり信じ切っていた。それであの日、彼女は本当に自殺をしようと屋上から飛び降りようとしていたのよ。だけど、あなたへの友情が心の中に残っていたんでしょうね、直前になって躊躇したのよ。」
「……え……」
舞は呆けた声しか出すことができなかった。
「飛び降りて自殺をすれば、あなたが真っ先に疑われる。そう気づいた陽菜子は、飛び降りるのをやめたのよ。あなたを守るためにね。だから…私が後押ししてあげたんですよ。」
頭をハンマーか何かで打ち付けられたような感覚が襲った。
あまりの衝撃に、頭が真っ白になる。
陽菜子が…飛び降りるのを躊躇した?
私の、ために……?
私のことを、まだ友達だと思ってくれていた……?
舞は視点の合わない目で紗耶香を見る。
殺人鬼は、舌を舐めると人差し指を唇に当てて首を傾げた。
「あら、もう降参ですか?まだまだ話はあるんですから、もうちょっと付き合ってくださいよ。」
紗耶香は人差し指と中指を立てた。
「あの事件は…そうですねぇ。あの事件以降は、直接的に私は誰かを憎んでいたとかそういう目的はありません。ただ瑞穂先輩に従っていただけです。瑞穂先輩のためならなんでもすると決めていたのです。たとえそれが殺人であっても。」
紗耶香は前髪を掻きあげた。
恍惚とした笑みを浮かべ、心底楽しいというような表情を浮かべている。
「あの子…織部陽菜子がターゲットとなった理由としては、まぁそうですね。ただ単に気に入らなかったから、とでも言いましょうか。あの子は目の前の幸せに溺れ、周りが見えていなかった。そこにいる、宮坂竜一と恋人になってからね。ちょうど良かったのよ、彼女はとても素直でマインドコントロールしやすかったしね。」
「…気に入らなかった?そんな理由で、陽菜子を殺したの?」
沸々と怒りが込み上げてくる。
そんな理由で、陽菜子は殺されたのか。
瑞穂と紗耶香の快楽のために……
そんな、もののために………
悔しくて、涙が溢れてきた。
「かわいそうにね、瑞穂先輩にさえ関わっていなければあんな目に合わなかったのに。ただ単に瑞穂先輩の目につくところに彼女がいた。それだけよ。」
「……なんてこと!よくも陽菜子を!!」
舞は紗耶香に掴みかかろうと手を伸ばした。
しかし紗耶香は身体を捻って、簡単にそれを避ける。
反動で、勢いよく前にすっ転んでしまった。
「危ないですよ、舞先輩。まだ話は終わっていません。お気持ちは分かりますが。」
余裕のある笑みを浮かべながら、紗耶香は舞を見下ろす。
その瞳には憐憫さえ浮かんでいた。
舞は力なくその場に項垂れる。
「本当なら瑞穂先輩は、そこにいる宮坂竜一と付き合いたいと思っていた。けれど、彼は瑞穂先輩ではなく織部陽菜子を選んだ。瑞穂先輩はプライドを傷つけられた。なぜ、美しい瑞穂先輩ではなく、あんな平凡な子が選ばれるの?そんなの許せるわけがない。」
紗耶香の言葉に力が入っていく。
そこで舞は違和感に気付いた。
まるで瑞穂本人ではなく、自分が悔しくて仕方ないという風に。
おそらく紗耶香は自分と瑞穂を重ね、瑞穂の傷みは自分の傷みであるかのように思っているのだ。
一心同体とでも思っているのだろうか。
「後は簡単よ、あの子に嫌がらせの手紙やあなたを名乗ったLINEを送り、あなたが竜一のことを好きなのだとそれとなく伝えるだけ。案の定、素直な陽菜子はすぐに信じて取り乱してくれたわ。あなたが犯人だと思ってね。」
「………」
「陽菜子はあなたを恨んだまま、死んでいった。」
紗耶香はまるで詩でも詠んでいるかのように続ける。
「あなたもさぞ悔しかったでしょうね。陽菜子と誤解が生まれたまま一生解ける機会を失い、さらに自分が陽菜子を殺してしまったのだと責めたでしょう?」
「……薄々は思っていたわ、仕組まれたものかもしれないって。」
「あら、そう。でもすでに後の祭りですね。」
舞は唇を噛みしめた。
悪魔だ。
目の前で唇を歪ませて嗤っているこの人物は、人間ではない。
正真正銘、悪魔だ。
「あぁ、そうそう。ちなみにいいことを一つ教えてあげましょう。」
無邪気な子供がするように、紗耶香は両手を胸の前でぽんっと合わせた。
「…まだ…なにかあるの?」
「あれは、自殺ではなかったのですよ。」
「……え?」
「だ、か、ら。自殺ではなかったんです。私が瑞穂先輩に頼まれて、織部陽菜子の背中を押したんですよ。」
「なんですって?!」
「あの子…瑞穂先輩に色々吹き込まれて、すっかり信じ切っていた。それであの日、彼女は本当に自殺をしようと屋上から飛び降りようとしていたのよ。だけど、あなたへの友情が心の中に残っていたんでしょうね、直前になって躊躇したのよ。」
「……え……」
舞は呆けた声しか出すことができなかった。
「飛び降りて自殺をすれば、あなたが真っ先に疑われる。そう気づいた陽菜子は、飛び降りるのをやめたのよ。あなたを守るためにね。だから…私が後押ししてあげたんですよ。」
頭をハンマーか何かで打ち付けられたような感覚が襲った。
あまりの衝撃に、頭が真っ白になる。
陽菜子が…飛び降りるのを躊躇した?
私の、ために……?
私のことを、まだ友達だと思ってくれていた……?
舞は視点の合わない目で紗耶香を見る。
殺人鬼は、舌を舐めると人差し指を唇に当てて首を傾げた。
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