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最終章
第102話 真相②
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「ふぅ、やっぱり素顔が一番ね。マスクは疲れるわ。」
紗耶香は少し汗ばんだ前髪を掻きあげる。
ウィッグも取れ、肩で切り揃えられた髪が露わになった。
そしてニッと唇の端を吊り上げて笑った。
「あ、あな、た…は……」
「あら、その様子だと久賀真桜の"中身"までは分かってなかったんですね?」
彼女はどこか憐れむような眼差しで、舞を見下ろした。
いびつに歪む、ピンクの唇。
その表情は憐憫に満ちている。
千早も、呆然とした様子で紗耶香を見ていた。
「ど、どこからだ。どこからお前は……」
わなわなと唇を震わせながら、千早が問う。
「あら、最初からですよ。」
からかうように紗耶香は笑った。
「あなた方が"探偵ごっこ"をしている間、私はずーっとそばにいたんですよ、"久賀真桜"として。本当に気づいていなかったんですね。」
「な、なにを……」
「おかげさまで、あなたたちの行動は手に取るように分かりました。まぁ、これも瑞穂先輩の入れ知恵ですけれど。大変でしたよ、久賀真桜を演じるのは。」
「じゃあ…本当の真桜は?私らが会っていた真桜は全部偽物だったのか?」
「そうですよ。…あぁ、でも何回かは本物の久賀真桜と会っているでしょうね。」
「つまり、本物の真桜は、お前たちに協力してたっていうのか?」
「その通りですよ、さすが栗花落千早さん。頭がいいですね。」
紗耶香は心から面白そうに笑いながら説明を続ける。
「そうですねぇ、あれは久賀拓海が亡くなって三人で復讐を決意した時かな。あの後、瑞穂先輩は真桜を呼び出してこう言ったんです。『舞が犯人よ。一緒に協力して犯人を捜すふりをして舞を泳がせておきたいの。犯人捜しの間は私があなたの身代わりになって情報収集するから』と。」
「なんですって…」
「真桜は瑞穂先輩のことをとても慕っていたから、簡単に引っかかってくれたわ。"そういうことなら協力します!"って意気込んでたわよ。お馬鹿さん。」
謳うように言う紗耶香を、舞は茫然と見つめる。
「じゃあ…真桜ちゃんが階段から落ちたのは……」
「ああ、あれは自作自演よ。」
そう言って紗耶香はスカートをめくり、膝を見せる。
そこには痛々しい傷が残っていた。
なんてこと…
そんなことまでしていたなんて。
「こうして私達はあなたを殺人犯として仕立て上げた。そしてできれば、舞を犯人だと思い込んだ栗花落千早が舞を殺してくれれば、私達の計画は完璧だったのに…」
紗耶香は竜一に視線を移すと、冷たい目で見つめてきた。
「なのに、邪魔が入ってしまった。そこに転がっている、宮坂竜一がね。」
舞ははっと竜一の方を見る。
さきほど止血をしておいたおかげで、今は血も止まってくれているようだ。
ほっと胸を撫でおろす。
「瑞穂先輩が保険をかけて宮坂竜一にも舞が犯人であることを吹き込んだのに……こいつは信じなかった。計算外だったわ、まさかあなたのことを庇いに来るなんて。」
ふん、と馬鹿にするように鼻で笑う紗耶香。
舞はじんわりと目の奥が熱くなるのを感じた。
竜一くんは信じてくれていたんだ。
私が、犯人じゃないって……
そのことを知れただけでも、胸がいっぱいになる思いだった。
「はいはい、感傷に浸るのは後にしてくださいねー」
紗耶香の楽しそうな声が、舞の思いをばっさりと切り捨てる。
「お別れの時間は後で取ってあげますから。それより、せっかくの機会だから今までのことを全部話してあげましょう。あなたも気になるでしょうから。」
そう言って紗耶香は、人差し指を前に出して怪しい笑みを浮かべた。
紗耶香は少し汗ばんだ前髪を掻きあげる。
ウィッグも取れ、肩で切り揃えられた髪が露わになった。
そしてニッと唇の端を吊り上げて笑った。
「あ、あな、た…は……」
「あら、その様子だと久賀真桜の"中身"までは分かってなかったんですね?」
彼女はどこか憐れむような眼差しで、舞を見下ろした。
いびつに歪む、ピンクの唇。
その表情は憐憫に満ちている。
千早も、呆然とした様子で紗耶香を見ていた。
「ど、どこからだ。どこからお前は……」
わなわなと唇を震わせながら、千早が問う。
「あら、最初からですよ。」
からかうように紗耶香は笑った。
「あなた方が"探偵ごっこ"をしている間、私はずーっとそばにいたんですよ、"久賀真桜"として。本当に気づいていなかったんですね。」
「な、なにを……」
「おかげさまで、あなたたちの行動は手に取るように分かりました。まぁ、これも瑞穂先輩の入れ知恵ですけれど。大変でしたよ、久賀真桜を演じるのは。」
「じゃあ…本当の真桜は?私らが会っていた真桜は全部偽物だったのか?」
「そうですよ。…あぁ、でも何回かは本物の久賀真桜と会っているでしょうね。」
「つまり、本物の真桜は、お前たちに協力してたっていうのか?」
「その通りですよ、さすが栗花落千早さん。頭がいいですね。」
紗耶香は心から面白そうに笑いながら説明を続ける。
「そうですねぇ、あれは久賀拓海が亡くなって三人で復讐を決意した時かな。あの後、瑞穂先輩は真桜を呼び出してこう言ったんです。『舞が犯人よ。一緒に協力して犯人を捜すふりをして舞を泳がせておきたいの。犯人捜しの間は私があなたの身代わりになって情報収集するから』と。」
「なんですって…」
「真桜は瑞穂先輩のことをとても慕っていたから、簡単に引っかかってくれたわ。"そういうことなら協力します!"って意気込んでたわよ。お馬鹿さん。」
謳うように言う紗耶香を、舞は茫然と見つめる。
「じゃあ…真桜ちゃんが階段から落ちたのは……」
「ああ、あれは自作自演よ。」
そう言って紗耶香はスカートをめくり、膝を見せる。
そこには痛々しい傷が残っていた。
なんてこと…
そんなことまでしていたなんて。
「こうして私達はあなたを殺人犯として仕立て上げた。そしてできれば、舞を犯人だと思い込んだ栗花落千早が舞を殺してくれれば、私達の計画は完璧だったのに…」
紗耶香は竜一に視線を移すと、冷たい目で見つめてきた。
「なのに、邪魔が入ってしまった。そこに転がっている、宮坂竜一がね。」
舞ははっと竜一の方を見る。
さきほど止血をしておいたおかげで、今は血も止まってくれているようだ。
ほっと胸を撫でおろす。
「瑞穂先輩が保険をかけて宮坂竜一にも舞が犯人であることを吹き込んだのに……こいつは信じなかった。計算外だったわ、まさかあなたのことを庇いに来るなんて。」
ふん、と馬鹿にするように鼻で笑う紗耶香。
舞はじんわりと目の奥が熱くなるのを感じた。
竜一くんは信じてくれていたんだ。
私が、犯人じゃないって……
そのことを知れただけでも、胸がいっぱいになる思いだった。
「はいはい、感傷に浸るのは後にしてくださいねー」
紗耶香の楽しそうな声が、舞の思いをばっさりと切り捨てる。
「お別れの時間は後で取ってあげますから。それより、せっかくの機会だから今までのことを全部話してあげましょう。あなたも気になるでしょうから。」
そう言って紗耶香は、人差し指を前に出して怪しい笑みを浮かべた。
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