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最終章
第101話 真相
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「せっかく犯罪者を断罪できるかと思ったのに…邪魔されてしまいましたね。」
真桜は舞の胸に倒れこんだ竜一を、冷たく見下ろす。
その目はもう、これまでとの真桜のものではなかった。
彼女の愛らしい表情は、すっかり消え去ってしまっている。
千早も、真桜の思わぬ行動に目を見開いていた。
「真桜ちゃん…どうして?」
舞は竜一を抱きしめながら、真桜に問いかける。
けれど、真桜の顔からは"表情"というものが一切亡くなってしまったかのように無表情のままだった。
「どうして?」
真桜は、ふっと鼻で笑った。
「よく言いますね、お兄ちゃんを殺した犯罪者が。」
「真桜ちゃん…いったいどうしちゃったの?」
「何がですか?」
「あなたは元々こんなことをする人ではなかったじゃない…」
「"こんなことをする人"?じゃあ聞きますが、私は舞さんから見てどんな人だったんですか?」
まるでロボットが喋っているかのような、機械的な真桜の声。
口調も、いつもの真桜のものとはまったく違うものだった。
舞は圧倒されながらも、必死で言葉を紡ぐ。
「私の知っている真桜ちゃんは…とても優しい人だよ。拓海さんや瑞穂のことを思う真桜ちゃんは、とてもまっすぐで純粋な人だった。」
真桜が笑いだす。
お腹を抱えて、けらけらと。
「あはっ、あはははははっ!」
そんな風に真桜が笑ったのを見るのも、初めてだった。
本当に心からおかしい、と言う風に。
真桜はこんな風にして笑う人だっただろうか…
舞が圧倒されていると、真桜が目尻を指で拭いながら言う。
しかしまだくすくす、と笑いを堪えているようだった。
口元に手を当てて、肩を震わせていた。
「ごめんなさい、だっておかしくって。舞さんは、本当に人の上辺だけしか見ていないお人よしさんなんですね。だから利用されるんですよ。」
「真桜ちゃん…」
「まぁ、いいでしょう。どうせこれですべて終わりなんです、せっかくですから全部話してあげますよ。何か聞きたいことはありますか?」
真桜はウェーブのかかった髪をくるくると指に巻き付けて弄びながら、楽しそうに笑う。
そこまで来て、舞は違和感を感じ始めていた。
なんだろう…なにかがおかしい。
だけど違和感の正体は、分からない。
横を見ると、呆然とした様子の千早が目に映った。
「…ねぇ。」
「なんですか?」
「もしかしてあなたが…これまでの出来事に関わっているの?瑞穂と一緒に…?」
舞がそう問うと、真桜は一瞬目をしばたたかせた後、またおかしそうに笑った。
「ええ、そうですよ。ご名答です!」
真桜は大げさにパチパチと手を鳴らした。
「まぁ、半分正解、半分不正解といったとことですけどね。」
真桜はまた指で髪をくるくると弄ぶ。
舞が"信じられない"という顔を見せると、真桜はゆっくりとした動作でゆらりと首を傾げた。
「舞さんは、久賀真桜が瑞穂さんと組んで犯罪に手を染めたとお思いなんですか?」
口元に笑みを浮かべながら、真桜が問う。
「どういう、意味?」
意味が分からない。
舞はなおも口元に笑みを浮かべている真桜を見上げる。
心臓が、早鐘を打っていた。
なんだろう……この違和感の正体は。
「どういう、意味なの…?」
再度舞が問うと、真桜は呆れたように吐息を漏らした。
「あぁ、もう。少しは自分の頭で考えてみてくださいよ。」
「……」
「久賀真桜が、"大好きなお兄ちゃん"のことを手にかけるわけがないじゃないですか。舞さんだって、そのことは知っていますよね?」
真桜はいたずらっ子の幼女のような顔をして笑う。
なに、これは……
人の中身が変わったようにしか思えない。
その時、頭の中で火花が散ったような衝撃が起こった。
まさか………
真桜は「ようやく分かったようですね。」と唇の端を吊り上げた。
「そう、こういうことですよ。」
真桜は、自分の顔に手をかけてつねるように持つと、思い切り顔を引っ張った。
「あ………あなた、は………」
舞は、その顔をよく知っていた。
勝気な目が現れ、舞を見下ろして微笑む。
そこに立っていたのは、雨宮紗耶香だった。
真桜は舞の胸に倒れこんだ竜一を、冷たく見下ろす。
その目はもう、これまでとの真桜のものではなかった。
彼女の愛らしい表情は、すっかり消え去ってしまっている。
千早も、真桜の思わぬ行動に目を見開いていた。
「真桜ちゃん…どうして?」
舞は竜一を抱きしめながら、真桜に問いかける。
けれど、真桜の顔からは"表情"というものが一切亡くなってしまったかのように無表情のままだった。
「どうして?」
真桜は、ふっと鼻で笑った。
「よく言いますね、お兄ちゃんを殺した犯罪者が。」
「真桜ちゃん…いったいどうしちゃったの?」
「何がですか?」
「あなたは元々こんなことをする人ではなかったじゃない…」
「"こんなことをする人"?じゃあ聞きますが、私は舞さんから見てどんな人だったんですか?」
まるでロボットが喋っているかのような、機械的な真桜の声。
口調も、いつもの真桜のものとはまったく違うものだった。
舞は圧倒されながらも、必死で言葉を紡ぐ。
「私の知っている真桜ちゃんは…とても優しい人だよ。拓海さんや瑞穂のことを思う真桜ちゃんは、とてもまっすぐで純粋な人だった。」
真桜が笑いだす。
お腹を抱えて、けらけらと。
「あはっ、あはははははっ!」
そんな風に真桜が笑ったのを見るのも、初めてだった。
本当に心からおかしい、と言う風に。
真桜はこんな風にして笑う人だっただろうか…
舞が圧倒されていると、真桜が目尻を指で拭いながら言う。
しかしまだくすくす、と笑いを堪えているようだった。
口元に手を当てて、肩を震わせていた。
「ごめんなさい、だっておかしくって。舞さんは、本当に人の上辺だけしか見ていないお人よしさんなんですね。だから利用されるんですよ。」
「真桜ちゃん…」
「まぁ、いいでしょう。どうせこれですべて終わりなんです、せっかくですから全部話してあげますよ。何か聞きたいことはありますか?」
真桜はウェーブのかかった髪をくるくると指に巻き付けて弄びながら、楽しそうに笑う。
そこまで来て、舞は違和感を感じ始めていた。
なんだろう…なにかがおかしい。
だけど違和感の正体は、分からない。
横を見ると、呆然とした様子の千早が目に映った。
「…ねぇ。」
「なんですか?」
「もしかしてあなたが…これまでの出来事に関わっているの?瑞穂と一緒に…?」
舞がそう問うと、真桜は一瞬目をしばたたかせた後、またおかしそうに笑った。
「ええ、そうですよ。ご名答です!」
真桜は大げさにパチパチと手を鳴らした。
「まぁ、半分正解、半分不正解といったとことですけどね。」
真桜はまた指で髪をくるくると弄ぶ。
舞が"信じられない"という顔を見せると、真桜はゆっくりとした動作でゆらりと首を傾げた。
「舞さんは、久賀真桜が瑞穂さんと組んで犯罪に手を染めたとお思いなんですか?」
口元に笑みを浮かべながら、真桜が問う。
「どういう、意味?」
意味が分からない。
舞はなおも口元に笑みを浮かべている真桜を見上げる。
心臓が、早鐘を打っていた。
なんだろう……この違和感の正体は。
「どういう、意味なの…?」
再度舞が問うと、真桜は呆れたように吐息を漏らした。
「あぁ、もう。少しは自分の頭で考えてみてくださいよ。」
「……」
「久賀真桜が、"大好きなお兄ちゃん"のことを手にかけるわけがないじゃないですか。舞さんだって、そのことは知っていますよね?」
真桜はいたずらっ子の幼女のような顔をして笑う。
なに、これは……
人の中身が変わったようにしか思えない。
その時、頭の中で火花が散ったような衝撃が起こった。
まさか………
真桜は「ようやく分かったようですね。」と唇の端を吊り上げた。
「そう、こういうことですよ。」
真桜は、自分の顔に手をかけてつねるように持つと、思い切り顔を引っ張った。
「あ………あなた、は………」
舞は、その顔をよく知っていた。
勝気な目が現れ、舞を見下ろして微笑む。
そこに立っていたのは、雨宮紗耶香だった。
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