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最終章
第94話 方向性
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千早と"あのこと"があってから、舞は千早と口を聞いていなかった。
正確に言えば、千早が舞のことを避けているといったほうが正しいだろうか。
顔を合わせても千早はすぐに目を反らし、声をかけないでくれオーラを出していた。
正直舞からしても、もう千早に対してできることはないと思った。
千早は、本気なのだ。
本気で犯人を見つけ、自分の手で復讐をしたいと考えている。
そのためには、舞を利用してでも。
どんな手を使ったとしても、犯人を捕まえたいのだ。
"たとえその結果警察に逮捕をされたとしても、私はやめない。"
それだけの強い覚悟を、この前電話で話した時に分かってしまった。
結局舞の言葉は、千早には届かなかった。
まるでざるでは決して掬えない、水のように。
今もフラワー池で昼ご飯を食べている舞の目の前を、一組のカップルが手を繋いで笑い合いながら通り過ぎていく。
他にもぱらぱらと、女友達同士で笑い合っている学生の姿が目に入った。
そんな光景を見てしまうと、自然と目から涙が零れ落ちる。
もう、沢山だった。
普通の女子大生生活を過ごしたい。
この年齢でしか楽しめない時間を、復讐のために無駄にはしたくなかった。
女友達と恋愛トークで盛り上がったり、彼氏を作ってデートをしたり。
他の人が当たり前のようにしている"普通の生活"を取り戻したいだけなのだ。
犯人に復讐することだけに囚われている千早と普通の生活を送りたいと願う舞ではもう、完全に向いている方向が違う。
千早とはずっと仲良くしていたかったけれど、こうなってしまっては致し方がない。
舞は食べ終わった弁当を閉じて、カバンの中に戻す。
代わりにスマートフォンを取り出した。
そうだ、今日は真桜のお見舞いにでも行こうか。
ちょうど今日は昼休み明けの一コマだけで、講義は終わりだ。
もしかしたら千早もお見舞いに来て鉢合わせしてしまうかもしれないかとも思ったが、久しぶりに真桜とも話をしておきたい。
そろそろ真桜も退院できるはずだ。
怯えたような彼女の青白い顔が、頭に浮かんで、ちくりと胸が痛む。
彼女にも舞の気持ちを伝えておくつもりだった。
そして、真桜の考えも聞いておきたい。
だけどあの怯えた様子を見る限り、彼女もこれ以上捜査を進めることは望まないだろうことは想像に難しくなかった。
あんな目に合って、次こそは殺されるかもしれないという恐怖心を生み出すには十分だっただろう。
元々気弱な正確の真桜が、自分の命を狙われる危険を晒すことはおそらくしない。
舞としては、できれば真桜にもこの件からは手を引いてもらいたい。
これ以上危険な目には合ってほしくなかった。
それで、暴走している千早を一緒に守ってもらおう。
これ以上犯人のことを調べ続ければ、間違いなく千早の命が危ない。
けれど舞一人では、とうてい守り切れない。
だったら…真桜に協力をしてもらうしかなかった。
千早はあんな風に変わってしまったけれど、友達であることには変わりない。
友達を黙って見殺しにすることだけは、舞にはできなかった。
舞は立ち上がると、スカートに着いた土を払い、校内へと向かった。
正確に言えば、千早が舞のことを避けているといったほうが正しいだろうか。
顔を合わせても千早はすぐに目を反らし、声をかけないでくれオーラを出していた。
正直舞からしても、もう千早に対してできることはないと思った。
千早は、本気なのだ。
本気で犯人を見つけ、自分の手で復讐をしたいと考えている。
そのためには、舞を利用してでも。
どんな手を使ったとしても、犯人を捕まえたいのだ。
"たとえその結果警察に逮捕をされたとしても、私はやめない。"
それだけの強い覚悟を、この前電話で話した時に分かってしまった。
結局舞の言葉は、千早には届かなかった。
まるでざるでは決して掬えない、水のように。
今もフラワー池で昼ご飯を食べている舞の目の前を、一組のカップルが手を繋いで笑い合いながら通り過ぎていく。
他にもぱらぱらと、女友達同士で笑い合っている学生の姿が目に入った。
そんな光景を見てしまうと、自然と目から涙が零れ落ちる。
もう、沢山だった。
普通の女子大生生活を過ごしたい。
この年齢でしか楽しめない時間を、復讐のために無駄にはしたくなかった。
女友達と恋愛トークで盛り上がったり、彼氏を作ってデートをしたり。
他の人が当たり前のようにしている"普通の生活"を取り戻したいだけなのだ。
犯人に復讐することだけに囚われている千早と普通の生活を送りたいと願う舞ではもう、完全に向いている方向が違う。
千早とはずっと仲良くしていたかったけれど、こうなってしまっては致し方がない。
舞は食べ終わった弁当を閉じて、カバンの中に戻す。
代わりにスマートフォンを取り出した。
そうだ、今日は真桜のお見舞いにでも行こうか。
ちょうど今日は昼休み明けの一コマだけで、講義は終わりだ。
もしかしたら千早もお見舞いに来て鉢合わせしてしまうかもしれないかとも思ったが、久しぶりに真桜とも話をしておきたい。
そろそろ真桜も退院できるはずだ。
怯えたような彼女の青白い顔が、頭に浮かんで、ちくりと胸が痛む。
彼女にも舞の気持ちを伝えておくつもりだった。
そして、真桜の考えも聞いておきたい。
だけどあの怯えた様子を見る限り、彼女もこれ以上捜査を進めることは望まないだろうことは想像に難しくなかった。
あんな目に合って、次こそは殺されるかもしれないという恐怖心を生み出すには十分だっただろう。
元々気弱な正確の真桜が、自分の命を狙われる危険を晒すことはおそらくしない。
舞としては、できれば真桜にもこの件からは手を引いてもらいたい。
これ以上危険な目には合ってほしくなかった。
それで、暴走している千早を一緒に守ってもらおう。
これ以上犯人のことを調べ続ければ、間違いなく千早の命が危ない。
けれど舞一人では、とうてい守り切れない。
だったら…真桜に協力をしてもらうしかなかった。
千早はあんな風に変わってしまったけれど、友達であることには変わりない。
友達を黙って見殺しにすることだけは、舞にはできなかった。
舞は立ち上がると、スカートに着いた土を払い、校内へと向かった。
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