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最終章
第88話 犯人からのメッセージ
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真桜と千早と舞の三人は、スマートフォンとにらめっこしたまましばらく固まっていた。
瑞穂も先ほどまで一緒にいたが、用事があるからと真桜のことを心配しながらも先に病室を出て行った。
瑞穂が出て行った後、入れ替わるように真桜の母親が一度病室に顔を覗かせたが、千早が「もう少しだけ三人でお話をさせてもらえますか?」とお願いしたため、母親は怪訝そうな顔になりながらも了承してくれた。
病室を出て行く際、怯えているような真桜の方にちらっと視線を送り、少し後ろ髪を引かれるようにしていたが。
なんとなく、母親には、聞かせたくないというのは舞も同意だった。
「今回はだいぶ大胆だな、犯人さんは。こんな風にメッセージまで残してくれちゃって。まるで手のひらで踊らされているみたいで気分悪い。」
腕を組みながら悔しそうに下唇を噛む千早。
その横で、真桜はまだぶるぶると身体を震わせていた。
焦点の合っていない目でぼんやりと天井を見つめている。
舞は千早に頷きながら、その小さな背中を優しく擦ってあげる。
「やっぱり今回のことは、偶然じゃなかった…」
「そういうことだろう。今回に関しては犯人は真桜の命を狙っていたわけではなく、警告してきたんだよ。これ以上深入りしたら…もっとひどい目に合わせるってな。」
オブラートに包んで言ってはいるが、"もっとひどい目"というのが自分達の死を意味していることは、三人とも暗黙の了解だっただろう。
それは千早と真桜の青ざめた顔色からも見て取れた。
真桜は今回奇跡的に命には別状なかったが、打ち所が悪ければ最悪のことも考えられた。
おそらく犯人にとっては、真桜が命を落としたとしても問題なかったと考えていたに違いない。
それにしてもなぜ今回はこんなメッセージを送ってきたのだろうか。
これでは"殺人予告だ"と言ってるようなものではないか。
まるで犯人が、自分を見つけられるものなら見つけて見ろよ、と挑発しているような。
あるいは、仮に見つかったとしても構わないとさえ思っているのだろうか。
どちらにしても犯人に弄ばれてるような気がして、舞は身震いをした。
ふと千早が、真桜のスマートフォンの画面をとんとんと指差した。
「このメッセージ、七時五十六分に送られているよな。真桜から電話があったのは七時五十一分。つまり真桜が階段から落ちた後に送信されたことになる。」
「…そうだね。」
「その時Cafe cosmosには私と舞、そして…河野瑞穂がいた。つまり瑞穂にはまたアリバイがあることになるな。」
短い前髪を掻きあげながら千早が言うと、それまで怯えて黙っているだけだった真桜が突然水を得た魚のように声を上げる。
「だから、瑞穂さんは犯人じゃありませんっ!!!現にお兄ちゃんのことも今回のことも、瑞穂さんにはアリバイがあるじゃないですか…っ」
真桜は血が出るのではないかというくらい、膝に置かれた握りこぶしを手のひらに食い込ませる。
その目は充血していて、まぶたが腫れぼったくなっていた。
「真桜。」
突然優しい笑顔になり、千早は真桜の拳にそっと手を乗せた。
優しく、包み込むように。
その笑顔は、復讐など考えていない時の以前の千早の笑みだった。
「瑞穂が犯人だと思いたくない真桜の気持ちはよく分かる。でも可能性が少しでもある限り、個人的な感情は真実を遠ざけてしまうこともある。先入観は捨てないといけない。分かってくれるな?」
小さな子供を諭すように言うと、真桜は唇を一文字に結びながらもこくりと頷いた。
千早も満足そうに真桜の頭を撫でる。
その後、すっと目を細めて厳しい表情に戻した。
「少なくとも、やはり拓海は自殺なんかではないということがこれではっきりした。」
千早の意見には二人とも何の異論もなく、頷いた。
膝の上で腕を組んだ彼女が、交互に舞と真桜の二人に視線を送ってくる。
そして一つ息を吐くと、ゆっくりと開口した。
「それで舞、真桜。辛いかもしれないが、改めて詳しく教えてくれないか?舞は高校時代から起きた不可解な出来事。真桜は、瑞穂が拓海を嫌いになったきっかけになったその出来事のことを。」
瑞穂も先ほどまで一緒にいたが、用事があるからと真桜のことを心配しながらも先に病室を出て行った。
瑞穂が出て行った後、入れ替わるように真桜の母親が一度病室に顔を覗かせたが、千早が「もう少しだけ三人でお話をさせてもらえますか?」とお願いしたため、母親は怪訝そうな顔になりながらも了承してくれた。
病室を出て行く際、怯えているような真桜の方にちらっと視線を送り、少し後ろ髪を引かれるようにしていたが。
なんとなく、母親には、聞かせたくないというのは舞も同意だった。
「今回はだいぶ大胆だな、犯人さんは。こんな風にメッセージまで残してくれちゃって。まるで手のひらで踊らされているみたいで気分悪い。」
腕を組みながら悔しそうに下唇を噛む千早。
その横で、真桜はまだぶるぶると身体を震わせていた。
焦点の合っていない目でぼんやりと天井を見つめている。
舞は千早に頷きながら、その小さな背中を優しく擦ってあげる。
「やっぱり今回のことは、偶然じゃなかった…」
「そういうことだろう。今回に関しては犯人は真桜の命を狙っていたわけではなく、警告してきたんだよ。これ以上深入りしたら…もっとひどい目に合わせるってな。」
オブラートに包んで言ってはいるが、"もっとひどい目"というのが自分達の死を意味していることは、三人とも暗黙の了解だっただろう。
それは千早と真桜の青ざめた顔色からも見て取れた。
真桜は今回奇跡的に命には別状なかったが、打ち所が悪ければ最悪のことも考えられた。
おそらく犯人にとっては、真桜が命を落としたとしても問題なかったと考えていたに違いない。
それにしてもなぜ今回はこんなメッセージを送ってきたのだろうか。
これでは"殺人予告だ"と言ってるようなものではないか。
まるで犯人が、自分を見つけられるものなら見つけて見ろよ、と挑発しているような。
あるいは、仮に見つかったとしても構わないとさえ思っているのだろうか。
どちらにしても犯人に弄ばれてるような気がして、舞は身震いをした。
ふと千早が、真桜のスマートフォンの画面をとんとんと指差した。
「このメッセージ、七時五十六分に送られているよな。真桜から電話があったのは七時五十一分。つまり真桜が階段から落ちた後に送信されたことになる。」
「…そうだね。」
「その時Cafe cosmosには私と舞、そして…河野瑞穂がいた。つまり瑞穂にはまたアリバイがあることになるな。」
短い前髪を掻きあげながら千早が言うと、それまで怯えて黙っているだけだった真桜が突然水を得た魚のように声を上げる。
「だから、瑞穂さんは犯人じゃありませんっ!!!現にお兄ちゃんのことも今回のことも、瑞穂さんにはアリバイがあるじゃないですか…っ」
真桜は血が出るのではないかというくらい、膝に置かれた握りこぶしを手のひらに食い込ませる。
その目は充血していて、まぶたが腫れぼったくなっていた。
「真桜。」
突然優しい笑顔になり、千早は真桜の拳にそっと手を乗せた。
優しく、包み込むように。
その笑顔は、復讐など考えていない時の以前の千早の笑みだった。
「瑞穂が犯人だと思いたくない真桜の気持ちはよく分かる。でも可能性が少しでもある限り、個人的な感情は真実を遠ざけてしまうこともある。先入観は捨てないといけない。分かってくれるな?」
小さな子供を諭すように言うと、真桜は唇を一文字に結びながらもこくりと頷いた。
千早も満足そうに真桜の頭を撫でる。
その後、すっと目を細めて厳しい表情に戻した。
「少なくとも、やはり拓海は自殺なんかではないということがこれではっきりした。」
千早の意見には二人とも何の異論もなく、頷いた。
膝の上で腕を組んだ彼女が、交互に舞と真桜の二人に視線を送ってくる。
そして一つ息を吐くと、ゆっくりと開口した。
「それで舞、真桜。辛いかもしれないが、改めて詳しく教えてくれないか?舞は高校時代から起きた不可解な出来事。真桜は、瑞穂が拓海を嫌いになったきっかけになったその出来事のことを。」
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