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最終章
第87話 警告
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電話を切った舞は、千早と瑞穂に事情を説明した。
とたんに、二人の顔からさっと血の気が引き、青ざめていく。
三人は手分けをしてここから徒歩五分程度の範囲のところを探すことにした。
真桜を一番に見つけたのは瑞穂だった。
ここから近い公園の、階段を降りたところに血を流して倒れていたという。
気を失っていたが、息はあったため瑞穂がすぐに救急車を呼んだ。
真桜の母親がすぐに駆け付け、結局母親だけが付き添うことになり舞と千早と瑞穂の三人は医者からの連絡を待つことになった。
額の傷と手足の骨折はあったものの幸い命に別状はなかった、と病院から連絡があったのはそれから一時間後のこと。
三人はすぐに病院へ駆けつけた。
母親は真っ赤になった目をハンカチで覆いながらも、気丈に笑顔を見せながら舞たちを迎えてくれた。
頬はこけ、やせ細っていて、衰弱しきっているのが一目で分かった。
まだ40代だろうが、年よりも老けて見えた。
無理もないだろう。拓海が亡くなった上に、娘までこんな目にあったのだから。
三人は病室に入ると、そっと中を覗き込む。
入院患者は今は一人しかいないらしく、すぐに真桜が目に入った。
窓の方に顔を向け、すっかり真っ暗になった夜の世界を虚ろな目でぼんやりと見つめていた。
呼びかけると肩をぴくりと動かし、緩慢な動きでこちらを振り向く。
舞達の顔を確認するとほっとしたのか表情がぐにゃりと崩壊し、その瞳にじわじわと涙が溢れていった。
「真桜ちゃん!」
真っ先に真桜を抱きしめたのは瑞穂だった。
呆然とする舞と千早を余所に、なんの躊躇いもなく、真桜の体を強く包み込む。
その動きはとても自然なもので、本当に真桜の安否を心配しているように見えた。
「……本当に良かった、無事で。」
真桜を抱きしめる手に力が入り、瑞穂の白いしなやかな手は震えていた。
真桜も、瑞穂の背中におずおずと両手を回して泣きじゃくる。
「真桜ちゃん…いったい、何があったの?まさか、誰かに……」
ようやく舞の口から出た言葉は、それだった。
真桜は舞に視線を向けると、真桜はゆるゆるとかぶりを振った。
「階段の前におっきめな石が…置いてあったみたいで。気づかずにそれに躓いて階段から落ちちゃったんです…」
「石…?」
舞と千早、そして瑞穂も顔を見合わせて眉を寄せる。
あそこは公園だから、石が色々なところにあるのは普通のことと言えば普通のことだ。
しかし、これは果たしてたまたま運悪く、なのだろうか。
普通なら石が置いてあったくらいでなんとも思わないだろうが、これまでの経験上ただの偶然だとはとても思えなかった。
顎に指を当てて考え込んでいると。
ふ、と視線がベッドの横のテーブルの上に置かれた真桜のスマホに釘付けになる。
下の部分にあるランプが、緑色にチカチカと点滅していた。
誰かからLINEでも来たのだろう。普通ならその程度で気にしなかったと思う。
だけど何故か嫌な予感がして、スマホから視線を外すことができなかった。
無意識に舞はスマホを指差し、「何か連絡来てるみたいだよ。」と真桜に伝えていた。
真桜はテーブルのスマホに指を伸ばし、電源ボタンを入れた。
と、みるみるうちに真桜の表情が強張っていく。
スマホを持つ手がぶるぶると震えていた。
やっぱり……!
舞は自分の嫌な予感が当たったことを確信して、真桜からスマホを奪い取る。
瑞穂も千早も、横からスマホを覗き込んできた。
そこに映っていたのはLINEではなく、メール画面だった。
差出元のアドレスは、初期の使い捨てのようなアルファベットがただ羅列しただけのメールアドレスだった。
そして短く、こう書かれていた。
『これ以上、余計な深追いはするな。今回だけはこの程度で済ませてやる。』
間違いなく、犯人からの牽制のメッセージだった。
とたんに、二人の顔からさっと血の気が引き、青ざめていく。
三人は手分けをしてここから徒歩五分程度の範囲のところを探すことにした。
真桜を一番に見つけたのは瑞穂だった。
ここから近い公園の、階段を降りたところに血を流して倒れていたという。
気を失っていたが、息はあったため瑞穂がすぐに救急車を呼んだ。
真桜の母親がすぐに駆け付け、結局母親だけが付き添うことになり舞と千早と瑞穂の三人は医者からの連絡を待つことになった。
額の傷と手足の骨折はあったものの幸い命に別状はなかった、と病院から連絡があったのはそれから一時間後のこと。
三人はすぐに病院へ駆けつけた。
母親は真っ赤になった目をハンカチで覆いながらも、気丈に笑顔を見せながら舞たちを迎えてくれた。
頬はこけ、やせ細っていて、衰弱しきっているのが一目で分かった。
まだ40代だろうが、年よりも老けて見えた。
無理もないだろう。拓海が亡くなった上に、娘までこんな目にあったのだから。
三人は病室に入ると、そっと中を覗き込む。
入院患者は今は一人しかいないらしく、すぐに真桜が目に入った。
窓の方に顔を向け、すっかり真っ暗になった夜の世界を虚ろな目でぼんやりと見つめていた。
呼びかけると肩をぴくりと動かし、緩慢な動きでこちらを振り向く。
舞達の顔を確認するとほっとしたのか表情がぐにゃりと崩壊し、その瞳にじわじわと涙が溢れていった。
「真桜ちゃん!」
真っ先に真桜を抱きしめたのは瑞穂だった。
呆然とする舞と千早を余所に、なんの躊躇いもなく、真桜の体を強く包み込む。
その動きはとても自然なもので、本当に真桜の安否を心配しているように見えた。
「……本当に良かった、無事で。」
真桜を抱きしめる手に力が入り、瑞穂の白いしなやかな手は震えていた。
真桜も、瑞穂の背中におずおずと両手を回して泣きじゃくる。
「真桜ちゃん…いったい、何があったの?まさか、誰かに……」
ようやく舞の口から出た言葉は、それだった。
真桜は舞に視線を向けると、真桜はゆるゆるとかぶりを振った。
「階段の前におっきめな石が…置いてあったみたいで。気づかずにそれに躓いて階段から落ちちゃったんです…」
「石…?」
舞と千早、そして瑞穂も顔を見合わせて眉を寄せる。
あそこは公園だから、石が色々なところにあるのは普通のことと言えば普通のことだ。
しかし、これは果たしてたまたま運悪く、なのだろうか。
普通なら石が置いてあったくらいでなんとも思わないだろうが、これまでの経験上ただの偶然だとはとても思えなかった。
顎に指を当てて考え込んでいると。
ふ、と視線がベッドの横のテーブルの上に置かれた真桜のスマホに釘付けになる。
下の部分にあるランプが、緑色にチカチカと点滅していた。
誰かからLINEでも来たのだろう。普通ならその程度で気にしなかったと思う。
だけど何故か嫌な予感がして、スマホから視線を外すことができなかった。
無意識に舞はスマホを指差し、「何か連絡来てるみたいだよ。」と真桜に伝えていた。
真桜はテーブルのスマホに指を伸ばし、電源ボタンを入れた。
と、みるみるうちに真桜の表情が強張っていく。
スマホを持つ手がぶるぶると震えていた。
やっぱり……!
舞は自分の嫌な予感が当たったことを確信して、真桜からスマホを奪い取る。
瑞穂も千早も、横からスマホを覗き込んできた。
そこに映っていたのはLINEではなく、メール画面だった。
差出元のアドレスは、初期の使い捨てのようなアルファベットがただ羅列しただけのメールアドレスだった。
そして短く、こう書かれていた。
『これ以上、余計な深追いはするな。今回だけはこの程度で済ませてやる。』
間違いなく、犯人からの牽制のメッセージだった。
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