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三章
第59話 女子会
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ある日の仕事帰り、舞は絵理と夕食を兼ねて近くのレストランに出かけた。
絵理は拓海も誘ったが、「女子同士でしか話せないこともあるでしょ。」とウインクしながら断った。
お世辞にも上手いとは言えないウインクに、絵理も舞も笑ってしまった。
レストランでしばらく他愛もない話をしていると、絵理が急に「そういえば舞ちゃん」と興味津々に顔を覗いてきた。
「舞ちゃんは彼氏とか欲しくないのー?」
あまりにも直球な絵理の質問に、飲んでいたオレンジジュースを吹き出しそうになる。
「な、なんですか急に!」
「だってぇ、舞ちゃんそういう話全然してくれないんだもん。」
絵理は拗ねたように唇を尖らせる。
いい歳して子供か!と思ってしまったけど、絵理がすると可愛らしく見えてしまう。
うーん…と舞は困ったように微苦笑した。
「絵理さん、私の高校時代のこと知ってるじゃないですか。」
絵理には高校時代の出来事を詳しく伝えてあった。
自分のせいで陽菜子を失ったことも、その恋人である竜一を好きだったことも絵理は知っている。
「知ってるよ?」
さらっとなんでもないことのように言うと、絵理はさきほどどは打って変わって真剣な顔つきになった。
「だけど舞ちゃん。もういいんじゃない?舞ちゃんはこれまで自分を責めてきて十分苦しんだ。舞ちゃんにだって恋愛する権利あるんだよ。」
「……」
恋愛する権利、か。
舞の心の中には、まだ竜一がいる。
亡くなった親友の恋人だった人。
その親友が亡くなったというのに、自分が竜一のことを想える資格なんて到底ない。
それに、と舞は当時のことを思い出し唇をきつく噛みしめる。
きっと竜一は、舞が陽菜子を殺したと思っている。
陽菜子が亡くなった後、竜一は目を真っ赤にしながら舞の目の前にスマホを突き出してきた。
"天誅"と書かれた自分から竜一に送られたLINE。
当然舞はそんなものを送った覚えがなかった。
誰かが舞のスマホを盗み、舞のスマホを使って竜一に送ったのだ。
その後それをした犯人が履歴を消したのだろう、舞のスマホにはその文章は残っていなかった。
最初は竜一もさすがに舞が送ったものだとは思っていなく、いたずらだと思っていたらしいが、陽菜子が亡くなったことで舞に矛先が向いたのだろう。
その後は竜一は舞を責めることはしなかったものの、一切口を聞いてくれなくなってしまった。
結局竜一への誤解は解けることはないまま、卒業を迎えてしまったのだ。
陽菜子を死に追いやってしまったことは事実なのだけれど…
舞は痛む胸を隠すように、ハンバーグを口に頬張る。
「舞ちゃん…もう自分を解放してあげて。人を好きになる気持ちってどうしようもないことなのよ。それがたまたま親友の彼氏だったってだけ。陽菜子ちゃんだってそのくらい分かってたはずよ。舞ちゃんに罪の意識をおわせるような、そんな子じゃなかったって舞ちゃんだって言ってたじゃない。」
「でも少なくとも陽菜子は私のことを恨んでいたと思います。それは事実です。」
「そんなことない。舞ちゃんは好きな人と幸せに…」
「私は未だに亡くなった親友の彼氏だった人を好きなんですよ。それでもそんなことが言えますか?」
遮るように舞は言った。
とたん、絵理の表情が曇った。
彼女の瞳が哀し気に揺れる。
「いいんです。」
舞は絵理に笑いかける。
「いいんです。私には支えになってくれる人が今は沢山いますから。絵理さんと拓海さん、それに千早さんだっています。それで幸せなんですよ。」
絵理はそっか、と小さく頷いた。まだ納得していないようだったが、絵理はそれ以上そのことに触れることはなかった。
「そういえば舞ちゃん!この後久賀くんと待ち合わせしてるんでしょ?時間大丈夫?」
絵理は店内の時計を見ながら言う。
舞は腕時計に目をやり、いけない!と立ち上がった。
この後、拓海と待ち合わせて拓海の家で妹さんと会うことになっている。
幸い、もうご飯はほぼほぼ食べ終わっていた。
舞はカバンを持ち自分の分の代金を机に置くと、絵理にすみませんと言って店を出た。
絵理は拓海も誘ったが、「女子同士でしか話せないこともあるでしょ。」とウインクしながら断った。
お世辞にも上手いとは言えないウインクに、絵理も舞も笑ってしまった。
レストランでしばらく他愛もない話をしていると、絵理が急に「そういえば舞ちゃん」と興味津々に顔を覗いてきた。
「舞ちゃんは彼氏とか欲しくないのー?」
あまりにも直球な絵理の質問に、飲んでいたオレンジジュースを吹き出しそうになる。
「な、なんですか急に!」
「だってぇ、舞ちゃんそういう話全然してくれないんだもん。」
絵理は拗ねたように唇を尖らせる。
いい歳して子供か!と思ってしまったけど、絵理がすると可愛らしく見えてしまう。
うーん…と舞は困ったように微苦笑した。
「絵理さん、私の高校時代のこと知ってるじゃないですか。」
絵理には高校時代の出来事を詳しく伝えてあった。
自分のせいで陽菜子を失ったことも、その恋人である竜一を好きだったことも絵理は知っている。
「知ってるよ?」
さらっとなんでもないことのように言うと、絵理はさきほどどは打って変わって真剣な顔つきになった。
「だけど舞ちゃん。もういいんじゃない?舞ちゃんはこれまで自分を責めてきて十分苦しんだ。舞ちゃんにだって恋愛する権利あるんだよ。」
「……」
恋愛する権利、か。
舞の心の中には、まだ竜一がいる。
亡くなった親友の恋人だった人。
その親友が亡くなったというのに、自分が竜一のことを想える資格なんて到底ない。
それに、と舞は当時のことを思い出し唇をきつく噛みしめる。
きっと竜一は、舞が陽菜子を殺したと思っている。
陽菜子が亡くなった後、竜一は目を真っ赤にしながら舞の目の前にスマホを突き出してきた。
"天誅"と書かれた自分から竜一に送られたLINE。
当然舞はそんなものを送った覚えがなかった。
誰かが舞のスマホを盗み、舞のスマホを使って竜一に送ったのだ。
その後それをした犯人が履歴を消したのだろう、舞のスマホにはその文章は残っていなかった。
最初は竜一もさすがに舞が送ったものだとは思っていなく、いたずらだと思っていたらしいが、陽菜子が亡くなったことで舞に矛先が向いたのだろう。
その後は竜一は舞を責めることはしなかったものの、一切口を聞いてくれなくなってしまった。
結局竜一への誤解は解けることはないまま、卒業を迎えてしまったのだ。
陽菜子を死に追いやってしまったことは事実なのだけれど…
舞は痛む胸を隠すように、ハンバーグを口に頬張る。
「舞ちゃん…もう自分を解放してあげて。人を好きになる気持ちってどうしようもないことなのよ。それがたまたま親友の彼氏だったってだけ。陽菜子ちゃんだってそのくらい分かってたはずよ。舞ちゃんに罪の意識をおわせるような、そんな子じゃなかったって舞ちゃんだって言ってたじゃない。」
「でも少なくとも陽菜子は私のことを恨んでいたと思います。それは事実です。」
「そんなことない。舞ちゃんは好きな人と幸せに…」
「私は未だに亡くなった親友の彼氏だった人を好きなんですよ。それでもそんなことが言えますか?」
遮るように舞は言った。
とたん、絵理の表情が曇った。
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「いいんです。」
舞は絵理に笑いかける。
「いいんです。私には支えになってくれる人が今は沢山いますから。絵理さんと拓海さん、それに千早さんだっています。それで幸せなんですよ。」
絵理はそっか、と小さく頷いた。まだ納得していないようだったが、絵理はそれ以上そのことに触れることはなかった。
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舞は腕時計に目をやり、いけない!と立ち上がった。
この後、拓海と待ち合わせて拓海の家で妹さんと会うことになっている。
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