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一章
第24話 意図せぬ死
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翌日の朝礼で、生徒全員が行動に集められ、舞たちは校長から新谷友樹の死を知らされた。
死因は、急性喘息発作による呼吸困難によるものだったという。
聞くところによると友樹は重度の喘息持ちで、常にステロイドの吸入薬を持ち歩いていたのだそう。
校長の話が舞にはどこか遠くで聞こえているような、そんな感覚を覚えていた。
隣にいる瑞穂が大丈夫?と声をかけてくれたが、舞は相槌を打つのがせいいっぱいだった。
立っていれることが不思議なくらい、体に力が入っていなかった。
校長の話が終わると、瑞穂がふらふらになっている舞を支えるようにして教室まで連れて行ってくれた。
もう一秒でも立っていることさえできず、崩れるように椅子に座り込む。
瑞穂がしばらく心配そうに背中をさすってくれたが、体の震えは一向に止まらず、舞は両手で肩を抱いた。
友樹のお葬式には、友樹の家族、2年生の生徒全員、教師が参列した。
生徒達が涙を浮かべながら次々と焼香を上げていく中、舞にも順番が回ってきた。
舞は顔を上げ、目の前の遺影を見つめる。
そこには屈託ない笑顔でピースサインをする友樹が、舞を見つめていた。
舞はゆっくりと目を閉じ、震える手をゆっくりと合わせる。
そして焼香が終わり振りかえった瞬間、目の前の家族席に座っていた愛美と目が合った。
愛美は目いっぱいに涙を浮かべながら、膝の上で拳を作り強く握りしめていた。
その瞳は赤く充血し、ぷっくりと腫れている。
愛美はつい先ほどまで取り乱し、兄の棺の前でひたすら泣き喚いていた。
周りの者が近づけないほどに。
葬儀が始まるため、周りの人たちがやっとの思いで愛美を落ち着かせ、席につかせたのだった。
舞がしたことを知っているはずはないのだが、愛美の瞳が何もかもを見透かしているような感覚に陥り、舞は愛美から視線を反らした。
席に戻り、ふと隣に座る瑞穂を見つめる。
黒いワンピースを着て姿勢を正している瑞穂は、さらに凛として大人びて見えた。
その唇は、固く引き結ばれている。
舞の視線を感じた瑞穂がこちらを見つめ、微笑んできた。
どこまでも、哀し気な笑みを。
いくらあんな仕打ちを受けていたとはいえ、同級生の死は瑞穂にとってもショックな出来事だったに違いない。
その表情からは、心から友樹の死を悲しんでいるように舞には思えた。
学年代表の生徒がお別れの言葉を読み上げるのを、舞は音楽のBGMでも聞いているかのようにぼんやりと聞いていた。
友樹が死んだ。
瑞穂を苦しめ続けていた友樹が。
証拠写真を愛美に送り付けたのは、自分だ。
ただ、愛美と友樹の関係を壊したかっただけだった。
瑞穂の仇を取ってあげたかっただけなのだ。
なのに、どうしてあんなことに…
その時ふと、舞の頭の中にある光景が浮かんできた。
瑞穂が、催涙スプレーを手渡してきた日のことを。
一瞬その意味を想像し心臓が跳ね上がったが、まさか、とその考えをすぐに打ち消していた。
死因は、急性喘息発作による呼吸困難によるものだったという。
聞くところによると友樹は重度の喘息持ちで、常にステロイドの吸入薬を持ち歩いていたのだそう。
校長の話が舞にはどこか遠くで聞こえているような、そんな感覚を覚えていた。
隣にいる瑞穂が大丈夫?と声をかけてくれたが、舞は相槌を打つのがせいいっぱいだった。
立っていれることが不思議なくらい、体に力が入っていなかった。
校長の話が終わると、瑞穂がふらふらになっている舞を支えるようにして教室まで連れて行ってくれた。
もう一秒でも立っていることさえできず、崩れるように椅子に座り込む。
瑞穂がしばらく心配そうに背中をさすってくれたが、体の震えは一向に止まらず、舞は両手で肩を抱いた。
友樹のお葬式には、友樹の家族、2年生の生徒全員、教師が参列した。
生徒達が涙を浮かべながら次々と焼香を上げていく中、舞にも順番が回ってきた。
舞は顔を上げ、目の前の遺影を見つめる。
そこには屈託ない笑顔でピースサインをする友樹が、舞を見つめていた。
舞はゆっくりと目を閉じ、震える手をゆっくりと合わせる。
そして焼香が終わり振りかえった瞬間、目の前の家族席に座っていた愛美と目が合った。
愛美は目いっぱいに涙を浮かべながら、膝の上で拳を作り強く握りしめていた。
その瞳は赤く充血し、ぷっくりと腫れている。
愛美はつい先ほどまで取り乱し、兄の棺の前でひたすら泣き喚いていた。
周りの者が近づけないほどに。
葬儀が始まるため、周りの人たちがやっとの思いで愛美を落ち着かせ、席につかせたのだった。
舞がしたことを知っているはずはないのだが、愛美の瞳が何もかもを見透かしているような感覚に陥り、舞は愛美から視線を反らした。
席に戻り、ふと隣に座る瑞穂を見つめる。
黒いワンピースを着て姿勢を正している瑞穂は、さらに凛として大人びて見えた。
その唇は、固く引き結ばれている。
舞の視線を感じた瑞穂がこちらを見つめ、微笑んできた。
どこまでも、哀し気な笑みを。
いくらあんな仕打ちを受けていたとはいえ、同級生の死は瑞穂にとってもショックな出来事だったに違いない。
その表情からは、心から友樹の死を悲しんでいるように舞には思えた。
学年代表の生徒がお別れの言葉を読み上げるのを、舞は音楽のBGMでも聞いているかのようにぼんやりと聞いていた。
友樹が死んだ。
瑞穂を苦しめ続けていた友樹が。
証拠写真を愛美に送り付けたのは、自分だ。
ただ、愛美と友樹の関係を壊したかっただけだった。
瑞穂の仇を取ってあげたかっただけなのだ。
なのに、どうしてあんなことに…
その時ふと、舞の頭の中にある光景が浮かんできた。
瑞穂が、催涙スプレーを手渡してきた日のことを。
一瞬その意味を想像し心臓が跳ね上がったが、まさか、とその考えをすぐに打ち消していた。
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