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しおりを挟む〈本当に疲れました 私 暫くは主様からは離れません〉
「うんうん! お疲れ様イピリア」
ふわっふわな羽毛をこれでもかともふる。ひたすらもふる。
学園から帰ると一日寝ていたイピリアが復活していた。帰った途端に〈疲れた〉と、一言発して眠ってしまったのだ。
どうやらロダンさん達と一緒に各国へと周り、ひたすら説明してきたらしい。テステニア王国が厄介だったらしい、あの国は教会側に力があるからね。
聖獣イピリアの住処を無理矢理暴いた重罪人もまだいるしね。イピリア本人が来たもんだから、ここぞとばかりに色々と話し合ってきたんだって。
重罪人とはエルフの事だ。森に住むエルフの方ね。
今は精霊魔法が使えなくなっているらしいけど。天罰? っていうのかな。イピリアの住処を魔法で暴いた人達は精霊魔法が使えなくなった。やることやって消えたイピリア。抜かりない。本人直ぐに復活したけども。
あれからずっと精霊魔法を使えなくしていたのなら、良い罰になったんじゃないかな。
すっかりテステニア王国に愛着が無くなってしまったイピリア。嫌な思いとは残る物だ。
テステニア王国に説明に行って、森エルフに捕まるイピリア。可哀想に。
〈エルフ達のいる森も広がっていましたよ〉
「まぁ、そうだろうね……あそこが一番必要だから」
〈私はもうどうでもいいと思いますけど 主様に考えがあるのならお任せします〉
「罪には罰を。罰には救済が必要だもん。まぁ、本人の努力次第だけど。どうなるかは僕にも分からないからなぁ、やってみてって感じかなぁ」
〈まだ安定しませんね 世界の気候は〉
「もうちょっと先かな」
もふもふしながらも部屋の片隅にある鉢植えを眺める。
白い幹に緑の葉が重なり、綺麗な色合いだ。鉢植えの周りにある空気が輝いているように見える。
うん……もうちょっとだな。
〈イピリアよ 我とパズルをしよう〉
〈嫌です〉
〈何故だ〉
〈主様を独り占めしたいからです〉
〈主の背にカルキノスがいる時点で 独り占めにはならんだろうが〉
〈両手は私のですからいいのです〉
「むふ」
イピリアかーわーいーいー。
イピリアを労う……僕の心も潤う。ウィンウィンな関係だね!
〈我は 主の顔が 好まない〉
〈私のフワフワな手触りでそうなるのは仕方が無いのですよ ほっほっほ〉
「むふむふ」
僕達って良い関係だもんねー?
イピリアの撫でられるのが気持ちいいとうっとりとした表情も好きだ。
背中のカルキノスの温もりも堪らんです。
やっぱり、三匹揃うとしっくりくるなぁ。
〈そういえば サルエロ王国のローレンが テステニア王国へ来ていましたよ〉
「へぇ~? 何でだろう?」
〈外交関係でしょうかね 私達とは入れ違いだったので 詳しくは分からないです〉
「ふむふむ。話を聞きたい気もするけど、今王城もゴタゴタしていそうだからなぁ……お爺様に会うのも憚れる」
兄様も会ったらあったで大変そうだし。うん、暫く王城には近寄りたくない。
ちょっとオーウェン君の話とか聞きたいけど、落ち着くまでは話をする時間もないだろう。主に兄様には。お爺様からアレコレいわれていそうだし。
「こう言う時は、父様に聞きに行こうか」
イピリアを愛でるのを止め、アクリスを探す。
〈我はパズルをしているから行かぬ〉
「あ、そう? カルキノスはー?」
めっちゃ渋い顔でパズルをやっているアクリス。
多分、はまる場所が分からないのだろう。ノールックで言われたし!
〈僕は厨房に行く「カルキノスも行こうねー!」 なんで〉
キリッとした表情だったカルキノスを慌てて確保する。
抱っこすると項垂れているのか手足がプラーンと。
厨房に行く時だけ急に凜々しくなるの何故だい? 何かの使命を感じてるの?
「夕食が入らなくなるまで食べるから駄目です!」
〈チッ〉
「しーたーうーちー」
〈チッチ〉
「強制連行執行!」
イピリアは勿論、僕の肩の上だ。
ブラックカルキノスを抱きかかえ、父様がいるであろう執務室へレッツゴー!
「アクリスー? そのピースはそこじゃないと思うよー」
〈なぬ?!〉
ぷぷぷ。
部屋を出る瞬間に言ったからか、念話での叫び声が聞こえた。
何回やっても終わらないアクリスのパズル。一番やっている気がするのに。
廊下を歩いているとメイドのアリアさんを見つけたので、父様は今執務室にいるかと聞いたら「いらっしゃいましたよ」と教えて貰った。
父様も今は色々と大変そうだから、お手伝いがあるかもしれないと思っておこう。
僕に出来ることは少ないと思うけど……
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