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しおりを挟むなんやかんやあったけど、帰りはスムーズにサルエロ王国のお城まで戻ってこれた。
お爺様はサルエロ王国の御者さんと、あの阿呆な人を連れてどこかにスッと消えたけど。
きっとあの馬車を出してきた人に拷問……お仕置きをしに行ったんだと思う。是非、お仕置きでお願いしたい!
ちょっと意外なのが、ロダンさんもゴーを出していたことだ。冷え冷え注意報じゃなくて、猛吹雪位でお怒りのようなのです。
止める人がいない、お爺様のお仕置きとか……怖そうです。
ローレンさんは笑顔だったけど、どこか冷え冷えとする雰囲気でお城の中へ入っていったし。
ぼーっとしていたら、馬車が一台、また一台と到着する。
あれ? あんなに馬車多かったっけ?
ぞろぞろとアルペスピア王国の騎士さんや魔法師団の人達が出てくる。
何か知らない人がいるけど、きっと今は聞いちゃ駄目なやつ。
〈主様 ただいま戻りました〉
「お帰り、イピリア」
大きな姿のイピリアは、フワッと地面に着地すると、直ぐに小さな姿へと。
僕の肩に乗るイピリアと頬ずりし合う。
「あ~、落ち着く」
じんわりと感じる温もりに愛おしさを感じるよ。
イピリアと戯れていると、また何台もの馬車が帰ってきた。
きっとカルキノスとアクリスだな。案の定、アクリスの声が聞こえる。
〈この馬鹿共めっ さっさと行動せんかっ〉
何やら激おこでした……
アクリスはもう小さな姿だけど、見慣れない顔の人達の足をてしてしと叩いている。
〈カルキノスも寝るでないっ〉
「えっ、寝ちゃったの?」
「寝ちゃったのよぉ~。んまぁ、大丈夫でしょ」
「あ、ジェンティーレ先生!」
ぐでーっとしているカルキノスを抱っこしながら、僕の方へ歩いてくる。
すやすやと寝ているカルキノスを渡されると、両手に感じるもぷもぷ感。
むはっ! 顔がユルユルになっちゃうよ。
すぴすぴと聞こえる鼻息。熟睡しているのか微動だにしない。
お疲れ様と声をかけながら抱っこし直す。
〈我にもお疲れ様を言え カルキノスのやつ 我からごっそりと力を吸ったのだぞ〉
「うんうん。アクリスもお疲れ様」
〈ふふん 本当にお疲れ様なのだ カルキノスのせいで大きな姿も維持出来ん〉
「あらら? じゃあ、どこか落ち着ける場所に行こうか」
「そうしたいのだけれど……んふふっ、ちょーっとお話が先になりそうよ~? あぁ、貴方じゃなくて、ねぇ?」
「ん?」
不穏な言葉が聞こえたのだけども? あれ? でも、僕じゃ無いって……
ジェンティーレ先生の視線の先を追うように僕も見る。
王城の扉が開いていて、中からガノスさんが慌てて走ってきた。
「たっ、大変申し訳ございません、でしたぁぁぁぁぁあああ!!」
ジェンティーレ先生の目の前で、見事なスライディング土下座をした。
ズサーっと結構な音がしたけど大丈夫?
「こんな所で謝罪をされても困るだけなので、とっとと中へ行きますよ」
「ロ、ロダン様! はいいいいっ!」
とても良いタイミングでスッと現れたロダンさん。
一瞬だけガノスさんを見て、スタスタとお城の中に。……あの目、気のせいじゃなければ……ゴミを見るような目だった。
大体予想は付くけどね。どうせ、サルエロ王国の人達がやらかしまくったのだろう。
あっちでもこっちでも、見慣れない顔がいたのだから。
「……行きますか」
「そうね……」
ジェンティーレ先生でさえ、ロダンさんに引き気味だ。これは大事になりそうな予感……
気は重いが、聖獣達を休ませてあげたいので、てくてくとロダンさんの後を追う。
【ぶっころ……】
腕の中からは物騒な寝言が。もしもしカルキノスさん? もしや、起きてますかー?
すぴすぴと聞こえる鼻息に、少しだけホッとした。
城内に入って、元々僕達に割り当てられていた部屋で一息つくことになった。
お爺様とロダンさんはいないけどね!
寝てしまったカルキノスを膝の上に乗せ、インベントリから食べ物とおやつを出す。
座った瞬間に「はふっ」と息が抜けた。
隣にアクリスが来たので、ゆっくりと優しく撫でる。気に入ったのか、大人しく撫でられ中だ。
肩にいるイピリアには、クッキーを小さく砕いて食べさせる。
普段は食べないイピリアも、今日は食べてくれた。
「ふふんふーん♪ ふふんふーん♪」
聖獣達の癒やされ効果で、僕は上機嫌に。
じっとりとした視線を感じてそちらを向くと、ジェンティーレ先生が座った目で僕を見ていた。
「先生もどーぞ♪」
「……ふぅ、気にしたら負けねぇ」
両手は肩くらいで手の平を上に、首をふるふると横に振るジェンティーレ先生。
そのリアクションには、どんな意味があるの?
テーブルの上にあったティーセットの茶葉を嗅いで確認したが、そのままパタリと閉じたジェンティーレ先生。
「飲み物、要ります?」
「ええ、お願いするわ。これは没収ね、うふふ」
「は、はい……」
笑顔だけども、本当は笑ってない時に見る顔だこれ。
茶葉に問題があったのかな? 僕はこっそりと自分の家のティーセットを転移させて、魔法でお湯を出し紅茶を淹れる。
うっすらと良い香りがしてきた頃に、僕はティーセットを転移させるのは困る事だと言われたことを思い出す。……手遅れなので、後でインベントリにしまっとこ。
家のメイドさんの悲鳴が響いていませんように。なむ。
「熱いから、気をつけてね~」
「あ、はい」
紅茶が落ちたのか、気がついたらジェンティーレ先生から渡された紅茶。
いつもの飲み物なので、一口飲んだだけで落ち着くよ。
〈んがっ ごあん……〉
「うわっ」
カルキノス覚醒。さすがカルキノス! 食べ物に敏感なんだからぁ。
テーブルの上に上がりそうなので、プリンを手前に持ってくる。
〈ん〉
気に入ったのか、プリンをもっちゃもっちゃと頬張る。むにむにと動く頬に、ぽわっと癒やされつい一言。
「平和ですねぇ」
「んな訳ないじゃーい?」
「デスヨネ」
ジェンティーレ先生からツッコミを貰いました。
戻ってこないお爺様とロダンさんを思い出し、飲みやすくなった紅茶で一息。
平和なのは、今のこの時間だけのようですね。
それにしてもこの世界、ちゃんと変わったのかな? 僕の希望通りに。
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