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しおりを挟む取り敢えず映像は見終わり、実際にその場所へ各々行って見ることに。
時間もかかるので、一先ずこの日はお開きになった。
そして朝早くから手渡された「許可証」を手に、皆行動を開始し始めた。
自由にサルエロ王国内を歩き回れるようにと、ガノスさんが許可証をくれた。
今回だけの特別な「全ての場所へ出入り可能」の、ユズノハ様直筆の一筆入りの証。
ユズノハ様はめっちゃ文句言いながらも、お爺様の不気味な……いや、優しい微笑みに背中を押されたのか手だけはいそいそと動かして書いてくれた証ね。
ガノスさんなんて、ずっと視線が下がったままだったけど。あれ、お爺様の顔を見ないようにしていたよね。渡す時も俯いてたし、絶対そうだと思う……
サルエロ王国側には結界の停止に動いて貰って、僕達は下見に向かう。
今は外に出る為に、歩きながら話をしている所だ。
向こうも「早急に動くように」とお爺様が圧をかけたから大丈夫だと思うけど、サルエロ王国の重役達(ユズノハ様含む)は全然信用できないや。聖獣を捕獲しようとしたしね! 未遂だけど。
ローレンさんは僕達と行動を共にして貰う。また殴られるような事が起こっても、側にいなければ守る事も出来ないし。
「さて。各々あの映像を見たから分かるじゃろうが、魔法師とティーレは聖獣カルキノスの補佐。ロダンは全体の把握に努めよ。ワシはリーンの補佐をする」
お爺様の指示で全員に通信の魔道具が渡される。
「聖獣イピリアと聖獣アクリスには、各々の勤めをお願いしようかの。補佐は騎士達じゃ」
〈私が思うに 私達聖獣と主様だけで問題なさそうですが〉
イピリアの言うことはもっともだと僕も思う。人と聖獣じゃ一緒に行動するの厳しいんじゃないかなー? 僕のように繋がっている訳でもないしね。
あ、僕の補佐は欲しいですけど! 一人じゃ寂しい。言わないけど。
「ここが我が王国ならばのぅ、それで構わないんじゃが。ここには馬鹿が多そうじゃろう? その為の、人じゃてな」
歩きながら目を細めて窓の遠くの方を見るの、怖いからやめて欲しいなぁ。
お爺様には何が見えているんだろうか……
はぁ~と溜め息を吐きつつ、ロダンさんがイピリア達に補足説明してくれた。
「要は、何かあった時の保険ですよ。聖獣様方には何もないでしょうが、我々のような人がいた方が良い時もありますからね」
〈そうですか 人のことは分かりませんのでお任せします〉
〈我も分からん 好きにすると良い〉
〈僕は助かるよ 集中したいからね〉
妨害行為はあるのだろうか? 僕は無いと思いたいなぁ。
大変な事をこっちはしているのに、そういう時程分かってもらえなかったりするんだよねー。
このまま放置してても大丈夫なら来なかったんだけどね。
世界の危機とか、全く理解されてなさそう……トホホ。
「無いと思いたいですね……」
「僕もそう思う」
僕の心を読んだようなローレンさんの呟きに、思わず即答した。
僕達の後ろにいる魔法師にも聞こえたようで頷いている。
「この人選で不備があれば、即時に対応せよ? ロダン」
「ジールフィア様はリーンオルゴット様から離れなさそうですけどね」
「ワシはリーンが良いんじゃもん!」
「御自分の年齢をお忘れですか? 貴方のもん! とか吐き気しかしないですよ」
「ロダンが冷たい!」
「おや……温かい時があったのでしょうか?」
あぁ、始まった。お爺様とロダンさんの子供のようなやり取りが。
二人の仲良さそうな姿を、ちょっと後ろから眺める僕とローレンさん。
ローレンさんは「本当に仲が良い」と呟き、まるで眩しい物を見るように目を細めている。
「僕の通っている学園に、ローレンさんも来られたら良いのにね」
「ふふっ、それも楽しそうです。何時か……」
そこから先の言葉は無かった。
僕も聞き出そうとはしなかった。ローレンさんと同じように、お爺様達の後ろ姿を眺め続けた。
【おじじうるさい……寝られないよ】
寝ないで カルキノス
【ねむい】
駄目駄目駄目 これから予行練習なんだからっ
おじじって……カルキノスは眠いし機嫌悪いしで、言葉が悪くなっているね。
【ありじ うるさ……】
ああー! 呂律も回っていないし、コレ今寝たな?!
着くまでだからね? 着いたら起きるんだよ~?
返事はないけれども。
僕は抱っこしているカルキノスが起きないようにと、揺らさないように気を付ける。
暫く歩き続けると、やっと外への門に到着した。
ロダンさんが証を見せると、門を開けてくれたのでそのまま通り過ぎる。
吹き抜ける風が爽やかなアルペスピア王国とは違い不快感を伴う。
土地に問題があるので致し方ないが。
あの元凶がいなくなったおかげか、ざわざわとした肌に刺さるような感覚は無い。
幾分、来た時よりはマシになったなぁ。
ここからは各自担当に分かれ、お城で借りた馬車で行く。
アクリスとイピリアは早々と大きくなり、空へ音も無く飛んでいった。アクリスは翔っているけれど。
騎士達は二人一組になり、ロダンさんの指示で動いている。
カルキノスは寝ているので、ジェンティーレ先生に渡してきた。着いたらお腹をくすぐって起こすように伝えたけど、起きなかったら念話で起こそう……
同行する魔法師達は嬉しそうだったけども。
僕の馬車にはお爺様とローレンさんがいる。御者はサルエロ王国の人だけどね。
「では、各自気をつけて行ってきてくださいね!」
「「はい!」」
ロダンさんの言葉が出発の合図になったのか、馬車はゆっくりと動き出す。
あーあ、早く帰りたいなぁ。
全くスローライフ出来ない事に、僕は大きな溜め息がでちゃう。
あの駄目神に、鼻毛が三倍早く伸びる呪いを送っておこう。
ふっ……ちょっと心がスッキリした。
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