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しおりを挟む直ぐにロダンさんがガノスさんを立たせる。
そして、すぐにこれまでの報告と今の状況を話をして、そのままガノスさんも一緒に地下へ同行することになった。
ロダンさんの話を聞いている時のガノスさんは、倒れてしまうそうな程真っ青なお顔でした。こそっと聞き耳を立てていたら、賠償がどうとか聞こえたので、国としての話が色々とあるのだろう……聞いても分からないのでもう聞くのは止めた。
何度目かの緩やかな下り坂を歩いていると、ざわざわとした纏わりつくような不快感が強くなってきた。
体感で地下五階くらいにいるような気がしている。でも、右左に進んだり下り坂が緩やかだったから、実際にどのくらい地下にいるのかは分からない。
だけど、何となく元凶に近い場所へ来ているのは身体に感じた。
視界が開け、ちょっとした広場がある。そこには大きな扉が見えた。
広場に到着したと同時に、ユズノハ様が話す。
「ここが、第一の門だ」
その門と言われた扉には二頭の龍が描かれていて、手をかけるような所はなく、閉じられている門扉の中心に手形があるだけだ。
「第一の門ってことは……」
第二、第三となる他の門があるって事か。
大きな門を見上げる。ドラゴンはいないのに、龍って何だか違和感しか感じないんだけどー。
竜ではなく、胴体の長いにょろにょろ系の龍だ。
「第一の門を進み、第二の門で地下墓地に入るのだ。何か気になる事でも?」
「……いえ、特には」
ユズノハ様に何かおかしな事でも? って感じで睨まれた。
特に違和感はないんだけど、龍以外は。
龍か……こういう絵だと思えば、違和感なくただの絵だと思えるんだろうなぁ。
あれが龍だと知っている僕には違和感しかないんだが。龍、出ちゃったか……何故か恥ずかしさで精神的に苦痛を感じる。
この恥ずかしさ、誰にも理解されないんだろうな……
「と、取り合えず中を確認しないと……ね?」
何とか平常心を取り繕うと、ユズノハ様にその門……第一の門を開けてもらうことに。
ここはささっと通り過ぎたい。
せっせと急かすと、それまで僕を不思議そうに見ていた皆も開門の方に気が向いた。
ジェンティーレ先生だけが、何やらニヤニヤと嫌な笑みでしたけど!
「この門? を開けるのに、ユズノハ様の血が必要って事よね?」
そのジェンティーレ先生からの確認の言葉に、僕はコクコクと頷く。
一同の視線を集めて、ユズノハ様は渋々といった感じで自分の手にナイフを当てる。
そんな小さなナイフ、どこに持っていたの?
声に出ていたのか、僕の疑問はローレンさんがこそっと教えてくれた。
「あれは……現国王のみが使用出来る特性の物。代々受け継がれる、この門を開ける為に作られた物ですね」
「へぇー」
サルエロ王国は未知な所が多いとは聞いたけど、そんな技術もあるのかぁ。
血に拘っているように感じる所もあるし、もう少し滞在して色々と調べてみるのも面白いかも。
ユズノハ様がナイフで掌を切る。結構深く切ったように見えてドキッと心臓が跳ねた。
じわりと溢れた血を、手形に合わせる。すると、一気に血が描かれていた龍をなぞるように走っていく。
「ほう……」
お爺様がぽそっと呟く。その視線は走る血に釘付けだ。
二頭の龍の姿が血で浮き彫りになると、閉じていた門扉がギギギギと鈍い音を立てて開き始めた。
内心、すっげー! っとちょっとだけ興奮してしまったのは、この技術の凄さにであって、決して龍にじゃない。そこは強く否定するんだから! まだ、負けてない。
興奮のせいからか、良く分からない勝負をしてしまった。
血門とか、ちょっとゲームっぽさを感じる。純粋にこのギミックにドキドキした事にしとこ。
ユズノハ様を気にしてか、ガノスさんがオロオロしてる。が、皆気にせず中へと進む。
始まりの門とやらを通り抜けると扉は閉まり、中は何もなくただ真っ白な空間となった。
何も匂いもしないし物も一つもない、本当に何もない。
ただ、異様に綺麗だ。異様なのは、こう団体で歩いているのに埃が舞うこともない。
つい、今し方ここを掃除しましたって言われたら納得するよ。
それに、僕が感じていた不快感もパッと消えた。
ユズノハ様やローレンさんの事を見ても何も反応がないので、やはりこれがいつも通りなのだろう。
僕の魔法で魂が運ばれ沢山の人が亡くなり、少し前にここを開けたとしても、埃一つないのは変だと思わないのだから。
空間が止まったように感じるのは、ここのせいなのか?
僕の様にジェンティーレ先生やお爺様、魔法師の人達はここの異様さに気が付いているみたいだけど。騎士の人は表情が出ないから分からないや。
あの門もそうだけど、何か魔法的な技術が施されているのかな? それとも、この国を覆っている結界のせいなのか……うーん、今考えても分からないから放置しよう。
「第二の門ってどこにあるんだろ?」
ちょっと怖いくらいに真っ白な空間だから、方角の感覚もなくなってしまいそうだ。
どこまでが壁なのか判断できそうにないくらい白い。
分かる人に聞こうと思ってユズノハ様を見ると、先程切った掌がほわほわと柔らかな光に包まれていた。
何だろう? っと皆興味津々だけど、僕はそれが治癒魔法、しかも僕が使うような治癒であることに気が付いた。掌は傷跡もなく、元に戻ったから。
「「おぉ」」
周りから驚きの声が出る。でも、僕はとても冷静だった。
専用のナイフ、真っ白な空間か……
僕はありそうな設定がパッと浮かんだ。でもまさか……と思いつつローレンさんを見た。
スッと僕の傍に近寄ると教えてくれた。
「ここの空間に入れば、あの傷はなくなります。あれで切った傷だけですが」
やっぱりそうなんだねーとは言えないので、ふむふむと聞く。心の中じゃ、ありふれた設定じゃんか! っとツッコミを忘れない。
ここの部屋は、セーフティーゾーンだ。しかも回復付きの。如何にもゲーム慣れした人が考えそうな設定だなぁと思う。
ってことは、一定の時間が経たないと……
僕のこの考えは、怪我の治ったユズノハ様が話した。
「第二の門は、一定の時間が経たないと現れない」
「なんと……面倒くさいのぅ」
お爺様の言葉に激しく同意する。
ここを作ったのが誰なのか分からないけど、いや、初代国王な気もするけど、ゲーム好きなのは当たってそう。
ちょっと遠い目になっちゃいそうだよ。
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