神に愛された子

鈴木 カタル

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4巻

4-1

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〝神に愛された子〟という謎の称号を持って、異世界のアルぺスピア王国に転生した僕――リーンオルゴット。
 国王の孫に生まれたからなのか、それともこの称号の力のせいなのか、何かと騒動に巻き込まれる日々を送っていた。
 九歳になった僕は、ルーナ領で一緒に暮らしている三体の聖獣と共に、首都にあるテールレア学園に通い始めた。
 学園では年の近い友人も出来て、平穏に過ごせるかと思っていたけれど、そうは問屋とんやおろさない。工学の先生にかけられた呪いを解いちゃったり、王様になりたい従兄いとこに命を狙われたり……どれも称号の力でどうにか出来たけどね。
 僕に与えられた力は、無尽蔵に魔力を使えたり、植物の声が聞こえたりと本当にすごい。ただ、その分僕自身も扱い切れていない。勝手に魔法が発動したりしてしまう事がある。
 最近驚いたのは、精霊を呼び出した事だ。
 授業中に、僕の魔力に惹かれて現れた、炎の精霊マナ。元気で人の話をあんまり聞かない彼(彼女?)は、なんと僕の友人ヴィーを気に入り、契約したんだ。
 普通の人よりも強大な力を手に入れたヴィーは、学園長から長期休暇の間に特別な教育を受けるよう命じられる。
 そして僕も、自分の力を制御するため、その授業に参加する事に決まった。
 見た目はイケメン、中身は乙女のジェンティーレ先生が、僕らに魔法の特訓をしてくれるらしいんだけど――


         †


 学園が長期休暇に入った次の日。僕とヴィー、それにマナは、ジェンティーレ先生が普段担当している魔法学の、実技の授業で使っている教室に集まった。勿論、聖獣達も一緒に居る。

「ヴィヴィアンはしばらく精霊マナとたわむれている事。マナは人族と契約していたらしいから、その昔話でも聞いておくといいわ。あたしは本でしか精霊を知らないから、あなたに教えられる事は少ない。精霊本人から、どうやって共に過ごすのかを教わる方が早いと思うの」

 ジェンティーレ先生は頬に手を添えながら、困った様子でヴィーに話している。ちなみにマナは、そんなジェンティーレ先生のすぐ側で、先生の顔をガン見している。

『こいつにはマナの姿も声も分からないんだなー?』

 彼は先生の目の前で小さな手を動かしつつ、自分の姿が見えていない事を確認している。
 そう、先生には……というより、普通の人間には精霊は見えない。本来であれば、精霊が見えるエルフの先生がヴィーを教えるはずだったんだけど、その先生が精霊の言葉を正しく理解出来ない事がこの間判明。一時的に、ジェンティーレ先生がヴィーの指導を受け持っているのだ。
 困っているジェンティーレ先生には悪いけど、精霊の存在が感じ取れなくて良かったな、と僕は思った。
 現に今、マナは先生の顔を指差して『顔が好みじゃないー』『マナと相性が悪いタイプー』などと、好き勝手に言いながらケラケラと笑っているのだ。
 ヴィーはそのマナの言葉が気になって、先生の話が耳に入っていなさそうだし。そわそわしながら、終始苦笑いを浮かべている。
 そんなヴィーを見て、ジェンティーレ先生は「不安そうだけど、それが一番あなたのためなのよ?」と優しい手つきで頭を撫でた。
 しかし……

『ヴィーに触るなー! ヴィーはマナのものなんだぞー!』
「……」

 ほんと、見えない・聞こえないというのはある意味では幸せなんだろうな。
 ちょっとヴィーが大変そうだとも思うけれど、僕じゃ力になれない。マナはヴィーと契約しているのだから、マナの手綱たづなはヴィーが握っている。頑張れ、ヴィー!

「そこのかわいこちゃんは、どうしてそんなに『仕方のない子ねっ』て表情をしているのよ……」
「あー……それよりも先生、僕はどうしたら良いんですか?」

 実はさっきから聖獣達に帰りたいと念話でかされているので、僕は話を先に進めた。僕にも手綱を握っている子達が居るんだった。熊の聖獣カルキノスなんて、もう寝ちゃいそうだ。
 先生はヴィーから離れてこちらに来ると、僕の後ろに居る聖獣達をチラッと確認した。

「そうねぇ、ほとんど悪意……負の感情に耐性が無かったのよねぇ」
「そう……なんですかね? じゃあどうしたら耐性が出来るんでしょう……?」

 先生が言っているのは、この前やった練習の事だ。
 人の悪意にあてられると僕が暴走しやすい、と見抜いた先生は、僕に悪意を浴びせる特訓を開始。ところが、練習が始まってすぐに僕は正気を失ってしまったのだった。
 僕と先生が考え込んでいると、とてとてと鳥の聖獣イピリアが僕の足元にやってきた。

〈悪意に耐性が無かったのではないですよ 急激に大量の負の感情を浴びせられて驚いたのだと思います 少しの悪意なら以前に何度も感じているはずですから ほら あの彼らから〉
「ああ! アダム達からの悪意ね。確かにあのくらいは感じても大丈夫だったよね」

 僕は足元に居たイピリアを抱っこしながら思い出した。従兄のラッセルや、彼の部下アダムから向けられた悪意の事を。確かにあのくらいなら我慢出来た。哀しいな、とは思ったけど。

〈私は前にも言いましたよね? あなたのやり方が悪いと 耐性の有無という話ではないのですよ〉
「グサッと剣で刺された感じだわ……」

 口調は軽いけど、いつになく真剣な表情の先生。その剣は言葉の刃ってやつです。
 聖獣は嘘が言えないから、正直なんです。僕も何回心をえぐられてきた事か。

〈私が間に入りますので 少しずつ負の感情を向けてください 主様の限界に到達しそうになったら 私が止めます〉
「それって大丈夫なの? ほら、君達はアレだから。無効化しちゃわないかしら?」

 アレって……聖獣だからって事かな。確かに、先生の心配はもっともだ。

〈アクリスが相手なら無条件でそうなりますね ですが 私なら大丈夫です〉
「え、そうなの?」

 初耳だった。僕は後ろを振り返り、ライオンの聖獣アクリスを見る。
 丸まっているアクリスは、興味が無さそうな表情で視線だけ僕に向けた。口を開くのも面倒なのか、念話でイピリアの話した通りだと伝えてきた。
 あれなのかな? 聖獣の役目が影響している?
 アクリスは生物の頂点だから、悪意を向けてくる生物は、無条件で降伏させてしまうって事?
 そういえば、アダムが僕に襲い掛かってきた時、アクリスが彼の力を奪って動けなくしていた。てっきり何かしらの力を発動させたんだと思っていたけど、アクリスに悪意を向けると自動的にああなってしまうみたいだな。
 もちろん、アクリスの意思で奪う事も出来るらしいのは、ラッセルにやってみせた事で分かっている。
 相手の力を奪う事にかけては、カルキノスの方が凄いとも言っていたっけ。カルキノスの場合は大地を司っているので、地面から干渉出来る分強いのかな。
 アクリスに念話でそう聞いてみたら、その通りだと返事が来た。
 なるほどね。大気を司っているイピリアには、それは関係無い訳だ。

「そっかそっかー。じゃあイピリア、僕のために嫌な事をさせちゃうけど、そこは大丈夫?」
〈主様のためになる事なら 私は構いませんよ ほっほっほ〉
「ありがとう、イピリア!」

 抱っこしたままイピリアの背中に頬擦りをする。ふわっとした柔らかさと温もりを感じた。

「あのー? そこのお二人さん、私も居るんだけどぉ! 二人の世界に入らないでぇぇえ」
「えへへ」

 僕とイピリアに両手を向けながら首を左右に振っている先生。いやいや! としているように見えるオーバーリアクションに、僕は苦笑いした。
 先生の後ろでヴィーがマナと楽しそうに話している姿も見え、それがより先生の孤独感を際立たせている。

「じゃあ、張り切ってやってみよう!」
「張り切って、って……負の感情を向けられる側の言葉とは思えないわね!」
〈おー! です〉
「あなたも! そんな掛け声を言うキャラじゃないでしょ⁉ 怖いわ!」
「あはははは!」
「もう! 笑っていられるのも今だけよ! ささっと限界を見つけるわよ!」

 イピリアにまでツッコむ先生が面白くて、場違いな笑い声を上げてしまった。
 ツッコまれたイピリアは心外です! とつんっとしているけれど、可愛いだけだよ。
 その後すぐに調査をして、僕の負の感情への耐性は、普通の人程度はある事が判明した。イピリアの言う通り、あの時暴走したのは、急激に大量の悪意を向けられて驚いたからだった。
 ジェンティーレ先生はその結果にショックを受け、「私のせいだと判明したようなものじゃない! ジールフィア様にまた怒られちゃうわ」とぼやいていた。
 さて、僕の限界値が分かった後は、マナがどこまで精霊魔法を制御出来るのかを見始めたんだけど、その魔法のまとが何故か僕になってしまった。まぁ、マナが指名したからなんだけどね……
 標的になって逃げ回る僕に、容赦の無いマナの炎が襲い掛かってくる。

『それー! リーンをやっつけろー』
「ぎゃあああああ!」


 僕へ蛇のように迫るマナの炎。その制御は完璧で、動き回る僕を見失う事なく追いかけてくる。
 僕は隠蔽いんぺいの魔法を使って姿を消しながら動いているのに、まるで僕の姿が見えているかのようだ。その炎は僕が張った結界に当たり、結界と一緒に消える。

「あっぶ、ないよ?」
『炎と同じ魔力量で結界を張れるリーンに危ないって言われてもなー』

 思わず声を上げた僕に、マナはやれやれといった様子で首を振る。

「同じ魔力量じゃないと、僕が燃えちゃうでしょ?」
「いけー! 頑張ってリーンを倒すのよ、マナ!」

 嬉々としてマナを煽るヴィー。こんなに楽しそうにしている二人に、もうやめようよとは言えそうにない。そして聖獣達は逃げ回る僕を応援しているかと思えば、そんな事も無く……

〈もう少し強めでも大丈夫ですよ〉
〈我もやりたいぞ!〉
〈主 楽しそうだねー〉

 カルキノスは見当違いな事を言っている。僕の味方は居ないのか。

「皆、煽るなんて、ひどいよー」
『よーし! もう一回やるぞー』

 マナはやめるどころか、皆のアドバイスに従って、回数を重ねるごとに魔法を強くさせていくし。ジェンティーレ先生はにこにこと微笑んで見ているだけだし。
 先生? 僕に八つ当たりしていませんか? お爺様に怒られてしまうのは、僕のせいじゃないんですよ!
 心の中で愚痴を言っていると、すぐに次の攻撃が始まった。

「うっわ! また後ろから追いかけてくるのー?」
『いっけー!』

 追尾機能付きの炎に追われながら、僕は強めに張った結界を炎に当てる。すると、結界はパリーンと甲高かんだかい音を出して割れつつも、炎を打ち消した。

『リーンからの攻撃は反則だぞー?』
「攻撃じゃ、ないもん。身を、守ったんだもん」

 もう走るのに疲れてしまったので、僕が息を切らしながら早々に終わらせると、マナが文句を言ってきた。
 聖獣達からもブーイングを感じたのでジト目で見ると、三匹とも見事に視線を逸らす。
 家に帰ったら三匹ともモフモフの刑だ。僕の疲れが取れるまで、存分にモフろうと思います!
 ジェンティーレ先生はこの魔法訓練を見て、マナ単体の力には問題無いと結論付けた。あとは契約者であるヴィーと協力した時に、きちんと制御出来るかどうかが課題だと。そういう訳で、二人はさらに絆を深める事を宿題に出された。
 僕の方は、感情の浮き沈みについてメモを残しておくようにと言われた。
 終始仲の良いヴィーとマナの姿を見て、二人はこれからどんどん強くなるだろうと思った。そして、僕が的になって二人の特訓に付き合わされそうだな、とも。


         †


 ジェンティーレ先生との特訓が終わって早々に、お爺様から呼び出しを受けた。お爺様の召喚獣ボッチ――鳥の姿をしている――が来て、それを知らせてくれたんだ。
 僕は、大きくなったイピリアに乗って王城へと向かう。アクリスとカルキノスも一緒だ。
 イピリアが作る風の障壁のお陰で、僕らは向かい風を浴びる事無く、空の上を快適に過ごしながら城へ到着した。バルコニーに降り立つと、そのままお爺様の部屋に向かう。
 部屋の前に、宰相のロダンさんが立っているのが見え、僕は駆け寄った。

「ロダンさーん!」

 僕の肩には小さな姿に戻ったイピリア、そして両腕の中にはアクリスとカルキノス。
 いつものように皆を連れた僕を見て、ロダンさんはにっこりと微笑んだ。

「お早いですね。先程使いの鳥が戻ったばかりですよ」
「休みでひ……時間があったんです」

 暇だったと言いそうになったけど、訂正しておいた。暇だと教えてしまったら、何かとお爺様に遊ばれてしまうかもしれないから。
 そんな僕の意図を察したのか、ロダンさんが「良い判断です」と呟く。バレバレなのが恥ずかしいので、僕はその呟きには触れなかった。

「ジールフィア様は中におられます」
「はーい!」

 何の話なのかは分からないが、僕はロダンさんが開けてくれた扉から中に入る。入ってすぐにお爺様を探したけど、しかしその姿は見当たらなかった。
 これは、かくれんぼかな。そう気付いた僕は、アクリスを腕から下ろした。

〈何だ 我も参加して良いのか?〉
「僕が先ね」
〈僕はもう分かっちゃった〉
〈私も分かりましたよ〉

 えー! カルキノスとイピリアったら早いね? 聖獣にこの部屋はどう見えているのだろうか。
 部屋の中をじっと観察すると、一ヵ所だけ魔力を感じる場所があった。
 お爺様はそこなのかな?

「お爺様ー?」
〈我も分かったわ〉

 アクリスも分かったかー。じゃあ僕も探しに行こうか!
 魔力を感じた場所に近寄って手をかざす。そこは、お爺様の使っているテーブルの横だ。
 空間が僕の魔力に反応して歪み、真の姿があらわになる。

「あれ?」

 お爺様が居ると思ったのに、誰の姿も無い。
 魔力の気配が消えたから、ここに何らかの魔法がかけられていたのは確かなんだけど……何だったんだろうか? それよりも、お爺様はどこ!

〈笑ったわ そこではない〉
〈お爺さんも考えたね でもハズレなの〉
〈魔力をそこに残しておいたのでしょうね ダミーですよ〉

 何かさ、君達、良いように翻弄されてしまった僕を笑ってない? 三匹とも、僕を見る表情がそんな感じだよ?
 お爺様も、たかがかくれんぼにダミーまで用意するなんて、どれだけ本気なのさ!
 魔法を使わずに気配を隠されてしまったら、地道に探すしかないじゃないか。
 あっそうだ。なら、この部屋全体に魔力を流してみよう。
 僕は室内を見渡してから、この部屋全体を魔力で包むようにイメージした。
 そして、片足で床をタンッと鳴らす。足から流れ出た魔力が、一気に部屋の中を覆う。
 その瞬間、お爺様の姿を発見したんだ。

「お爺様、見つけた!」
「なんっちゅう方法を使うんじゃ……」

 部屋を覆った魔力はすぐに消す。
 どうやらお爺様は、僕がこの部屋に入って来る前から、扉の裏に隠れていたようだ。まさかそんな場所に居るとは。

「お爺様がかくれんぼに、こんなにも真剣になるとは思わなかったですよ?」
「遊びは真剣な方が面白いじゃろ」

 僕の方へと歩いてきたお爺様は、頭を撫でてくれた。

「予想外な発見をされたが、よう分かったの~。ワシを呼んだ時には、思わず返事をしそうになったわい」
「へへへ」

 笑う僕達に、聖獣達が話しかける。

〈あれは反則だろうが〉
〈部屋に入った瞬間に分かった僕が一番なの〉
〈私も分かったのですよお爺様〉

 お爺様は褒めてと言わんばかりの聖獣達に笑いかける。

「さすがじゃてな。罠にかからんかった聖獣様は、リーンよりも凄かろう」
〈主の見つける方法は 反則なのだぁぁぁ〉

 アクリスが床に身を横たえ、ゴロゴロと転がりながら不満を言う。そんなアクリスを見ながら、僕はこう思うのだ。
 見つける方法に決まりは無いもんね!
 カルキノスとイピリアを撫でてから、お爺様はアクリスを抱っこした。

「リーンならではの方法じゃったのぅ」
〈あれでいいなら 我もすぐに分かるわ〉

 どうやらアクリスは、真面目に探して損をしたと思っているらしい。そうは言っても、早い方だったと思うんだけどなぁ。
 抱っこされたアクリスは、そのまま椅子に座ったお爺様の膝の上に乗った。
 アクリスが大人しく他人の膝に乗るなんて珍しいね。

「また次の手を考えんといかんのぅ……」
「お爺様? まさか僕をかくれんぼのために呼んだんですか?」

 僕が呼び出しの件に触れると、お爺様はようやく用事を思い出した。

「そうじゃった! 聖獣様がノリノリなんで忘れとったわ。リーンに、ゼノンから招待状が来とってな」
「ゼノン様⁉」

 ゼノン様の名前に思いっきり反応してしまった。あのクレイモル王国の国王様のゼノン様だよね。
 僕の会いたかった、ビースト族のゼノン様だ!
 突然の嬉しい話に、僕はお爺様の言葉を食い入るように聞く。

「……そんなに目を輝かせんでもええじゃろが。ゼノンはワシの孫をたぶらかす、嫌な奴じゃのぅ」

 そう言うお爺様のお顔だって、微笑んでいますよ。ゼノン様はお爺様の友達ですもんね。
 僕はまたあのモフモフな国王様に会えるのかと思うと、それだけで心が弾んでしまう。

「ゼノンがリーンの長期休みの事を知ってな。それならばクレイモル王国に遊びに来んかと招待状を寄越よこしてきたんじゃ。どう……」
「行きます! 絶対に行きます!」

 お爺様の質問を遮って答えてしまった。
 モフモフパラダイスからの招待状なんて、断るはずがないでしょう!
 ビースト族って確か、手先が器用なんだったよね。何か新しい発見も出来るといいなぁ。

「皆、楽しみだねぇ!」
〈いいですね〉

 聖獣の皆に話しかける。ところが、イピリア以外は無反応だった。
 あれー? あのクレイモル王国だよ? ビースト族だよ? あんまり関心が無いのかな……

〈美味しいものは あるの?〉
〈パズルが終わってないのに会いに行くのか〉

 カルキノスは食べ物にしか興味が無いのか。
 アクリスは、ゼノン様のがらのパズルの事を思い出しちゃったよ!

「勝手にパズルにした事は、ゼノン様には内緒ね? 美味しいものは向こうで探してみよう!」

 僕が二匹に言い聞かせていると、お爺様が話しかけてくる。

「招待状にはワシの名前もあってな。国王出迎えにあたっての催事さいじの準備があるから、ワシは三日後に来るようにと書かれておる。じゃが、リーンについては、好きな時に来ていいとの事じゃ。ワシは牛車でのんびり向かうが、リーンは聖獣様でひとっ飛び出来るじゃろ? いつ出発するのが望みじゃ?」
「すぐにでも!」

 今にも行きそうになっている僕を見てお爺様はちょっと呆れたお顔に。

「ふむ……向こうに行くなら変装せにゃならんのじゃが、ワシがええもんをやろうと思うておる」
「うん?」
「最近作った、姿を偽る魔道具があるんじゃて。ふぉっふぉっふぉ」

 お爺様は笑いながら、机の引き出しを開けて何かを探し始めた。
 っていうか……今、変装って言ったよね?
 もしかして僕は、変装しないとゼノン様に会いに行けないんじゃ……

「どこにやったかのぅ」
「お爺様? あのー変装って……」
「これじゃない……こっちか?」
「……」

 どうやら僕が変装するのは決定事項らしいです。


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