六芒星の奇跡

あおい たまき

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二章・人生のかけら

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 砂に埋もれて忘れられたもの
何処からか波に流されてきたもの
たくさんのものがここには落ちている。


 いわば、何処かの誰かの、人生のかけらだ。

 女性の写真が波にふやけて、色が変わってしまっていたり、浮き輪がそのまま、ひっくり返っていたりする。
 砂に埋もれかけたビーチサンダル。色の変わったペットボトル。捨てられて割れたガラスは、波の力で丸みを帯びて、白くくすんでいた。


 それらに私は
「バイバイ」
と、言いながら袋に詰めていく。


 
「あ……空き缶」
 私は遠くで砂に埋もれた空き缶を見つけ、そっと歩みよると、それを手にした。

 こんなゴミにすらきっと、人の人生のかけらは潜んでいる。


 私は、それを空想することが好きだった。


 飲み口を見ると、口紅はついていない。このジュースを口にした人は、そう、きっと男の子。

 友だちと河川敷で石投げをしていて、夢中になるうちジュースが半分入ったままの缶が、川へ落ちてしまった。川から海へ流され、中にあったオレンジ色のジュースは、川水と海水と混ざり合い、そしてこの海岸に流れ着いた。


 私はふふふ、とわずかに笑って
「バイバイ」また袋へ空き缶を入れた。

 それにしても朝のひとときを、砂浜の掃除をして歩くだけで、ゴミ袋数個の収穫がある。

 それも、毎日だ。人間というものは地球規模で考えれば毒なのだろう。自由気ままに、体を這いずる寄生虫だ。

 もはや人そのものが、ゴミのようなものなのかもしれない

そう一端の納得をして私はせっせ、せっせとゴミを拾っていった。
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