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一章 伊達成実

史実 伊達成実

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 伊達成実だてしげざね


 戦国時代後期~江戸前期
千五百六八年~千六四六年七月十六日まで生存


 政宗とは従兄弟同士なわけですが家系図を見ると……

成実の父は、政宗の祖父の弟。
母は、政宗の祖父の娘。
成実は近親者同士の婚姻によってなされた子でした。

政宗とはひとつ違いの弟分。
5つの頃から政宗の側にあったとの話しもある。

 幼名:時宗丸ときむねまる
父の伊達実元だてさねもとも同じ幼名でした
小説内では幼名は尊敬するお坊さんからとったとしていますが、
本当は時宗じしゅうは浄土宗の宗派のひとつです。
小さな頃はその時宗の僧、了山りょうざん和尚のもとでお勉強をしています。

 仮名けみょう:藤五郎とうごろう
仮名というのは、本名と区別するための名前です。
江戸時代より前は、本名「いみな」で呼ぶのは親か主君だけと決まっていました。
だから小説内のように片倉小十郎が、馴れ馴れしく「成実」なんて呼び方はご法度でした。
「藤五郎殿」と呼ぶのが正解だったのか。

政宗は主君でしたから「成実」と呼んでもいい立場でした。

 受領名:兵部ひょうぶ
受領名も大きく分けると仮名に当たります。
武功の高い家臣に対して、戦国大名が与えた名前です。
受領名があるということは、政宗の国にとって
なくてはならないひとであったということだと思います。


お父さんは伊達実元。
信夫郡しのぶぐん大森城の城主でした。

 成実という武将は、熱い信念の持ち主で、少々無鉄砲なところもありました。冷静沈着な小十郎といいコンビだったのかもしれません。
とにかく戦は本当に強かったようです。

 兜の前立ては毛虫を模して作られました。
百足むかでという説はドラマから派生したお話です。どうして毛虫⁉それは毛虫が前にしか進まない姿に倣おうということです。


戦において、常に前へ。
その信念が成実の戦にもよく生きていたと思います。



 千五百八十五年
 人取橋ひととりばしの戦いでは伊達勢が押されているところを、先陣を切って敵に突っ込み、政宗を助けています。

 郡山合戦では少ない手勢で敵をやり過ごしながら、一度は政宗の元を離れていった大内定綱を、説き伏せて再び伊達に引っ張りました。

この時は籠城ろうじょうしていた大内の援軍。蘆名、佐竹の大群が城を守っていました。

 そこで成実の機転が働きます。援軍の押し寄せる道を遮断するべく、500の兵を連れて行きました。小十郎がその左右を固め、やがて駆けつけた田村の援軍と協力することができました。


また摺上原すりあげはらの戦いでは、突出した蘆名の側面から切り込んで劣勢を覆しています。


 豊臣秀吉が小田原攻めをするということで、援軍を要請されていた政宗は、出兵が遅れて、戦がはじまってしまいます。秀吉の機嫌を損ねたら大変なことです。

 政宗はどうすべきか家臣たちに聞きました。
すると成実は迷いもなく「これから謝罪をしても聞き入れてもらえません。ならば豊臣を攻めましょう」と言いました。

しかし片倉の「ここは遅れてもいいので出兵して謝罪の意を示すべきだ」との提案が採用され、成実は戦には出ず、城を守りました。


 成実の案は好戦的だった為、戦の最中には役立ちましたが、こういった会議の場ではあまり採用されなかったようです。功績も認められないこともあったようで、頭を冷やしたかったのか、すねてしまったのか、突然政宗の元を去って行方をくらませます。これを出奔と言います。


突然出奔された政宗は、戻ってくるよう言いましたが、成実は首を縦には振りませんでした。

政宗は自分を見限って、上杉につくつもりではないかと疑心暗鬼になり、成実が城に残した千五百人の中の、三〇人の家臣を死なせてしまいました。

 後のドラマや小説では妻子も一緒に殺されたということが語られていますが、成実の正室は成実出奔の前に亡くなっているため、ここで殺されたというのは創作です。

 また側室が殺されたという文献も残っていないので、事実確認はできないのです。

 そしてその事件のあと、政宗は、成実が上杉の誘いを再三断っていたことを知ります。政宗は、ひどく後悔したと言われています。

 成実が出奔してから二年後、片倉小十郎らが再び、成実に政宗の元へ戻るよう説得します。
豊臣秀吉が亡くなり、世の中はまた戦風が吹いていました。そして、この年、関ヶ原の戦いがはじまりました。


 政宗はこの時徳川家康につき、石田三成についていた上杉と戦っていました。その中の白石城攻略のとき、政宗は劣勢になってしまいます。

 あと一歩で敗戦かというとき、敵に突進していく一人の武将がいました。それが出奔していた成実でした。

 成実は白石城攻略で伊達勢に戻ってからも、以前と変わらぬ勇将で、義に熱く心の広い男であったということです。

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