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五章・ナンパ
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「あはは」
雑踏の中から、和冴の笑い声が聞こえて私は反射的に手をあげた……けれど、私の腕は力をなくしてすぐに下がり、駆けていた足は、地を踏むことをやめた。
そこで待っていたのは、女三人に囲まれて笑う和冴だった。きっと声でも、かけられたんだろう。
私はこんなに楽しみにしてたのに。どうして……?言葉にならない思いが胸を締め付ける。みじめだ。帰ってしまおう。和冴に気づかれる前に。
そうは思ってみても体が、凍りついたかのように動かない。手の先も驚くほど冷たかった。うまく呼吸が出来ない。
そうしているうちに
「あー、ひかちゃん」
和冴が私に気づいてしまった。
その声で一斉に、三人の女の視線が私に向けられる。じとっとした嫌なまなざしだった。きっと彼女たちはこう思ってる。
えー何、あの女。ダサッ。彼には釣り合わない。どうしてあんな女と?遊びでしょ。ちんちくりんじゃん。小学生かっての。
和冴はそんな視線のことなど、気づきもしない。こどもみたいに手を振っている。
イヤだ、イヤだ、イヤだ、イヤだ
黒い感情の渦が私を飲み込む。今日は女の子と仲良くしてる和冴なんて、見たくもなかった。せっかくおしゃれしたのに、私ひとりでバカみたい。
「あれ、俺の彼女」
和冴はそんなのんきなことを言いながら、じゃあね、と私の方へ駆け寄ってくる。私は我にかえって、身をひるがえし歩む。硬いサンダルの底が、カッカッと音をたてた。
「あはは」
雑踏の中から、和冴の笑い声が聞こえて私は反射的に手をあげた……けれど、私の腕は力をなくしてすぐに下がり、駆けていた足は、地を踏むことをやめた。
そこで待っていたのは、女三人に囲まれて笑う和冴だった。きっと声でも、かけられたんだろう。
私はこんなに楽しみにしてたのに。どうして……?言葉にならない思いが胸を締め付ける。みじめだ。帰ってしまおう。和冴に気づかれる前に。
そうは思ってみても体が、凍りついたかのように動かない。手の先も驚くほど冷たかった。うまく呼吸が出来ない。
そうしているうちに
「あー、ひかちゃん」
和冴が私に気づいてしまった。
その声で一斉に、三人の女の視線が私に向けられる。じとっとした嫌なまなざしだった。きっと彼女たちはこう思ってる。
えー何、あの女。ダサッ。彼には釣り合わない。どうしてあんな女と?遊びでしょ。ちんちくりんじゃん。小学生かっての。
和冴はそんな視線のことなど、気づきもしない。こどもみたいに手を振っている。
イヤだ、イヤだ、イヤだ、イヤだ
黒い感情の渦が私を飲み込む。今日は女の子と仲良くしてる和冴なんて、見たくもなかった。せっかくおしゃれしたのに、私ひとりでバカみたい。
「あれ、俺の彼女」
和冴はそんなのんきなことを言いながら、じゃあね、と私の方へ駆け寄ってくる。私は我にかえって、身をひるがえし歩む。硬いサンダルの底が、カッカッと音をたてた。
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