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第220話 集結する島
しおりを挟むまず、今いる魔物の中で厄介なのは次の三体。
サタンケルウス
LV.118
ATK.184
DEF.133
サタンケルウスは常軌を期した破壊衝動を持つ鹿の魔物で、巨角に蓄えられたエネルギーからの攻撃は斬撃の勢いを殺すほど。
撃技は付加されていないが、それでも俺が放った斬撃を受け切るほど。
ギリギリだったがそれでも俺の斬撃を防ぐのは今では数えられるくらい。
カキア
LV.121
ATK.192
DEF.156
次にカキアというあばら骨が剥き出しで、密集した筋肉部は鋼の強度を持つ魔物。常に黒い煙を纏っており、加えて速さも相当高い。
動くたびに黒い煙が付いてくるのはそれがカキアの身体の一部だからだ。
ヴィペールマミー
LV.115
ATK.129
DEF.179
最後にこいつ。
下半身がヘビの姿をしたマミー。速さはあまりないが強力な毒は同じ魔物でさえ致命傷を与えるほど。
現にヴィペールマミーの吐く毒を喰らってしまったヴラブォスの皮膚が焼け焦げている。
ヴラブォスは推定体重4t、鬼のような角を持ち、尾の太さは直径1.5メートルほど。岩のような皮膚だが、実際のところはそれ以上の強度を持つ。
同じようなレベル、大きさの魔物でさえヴィペールマミーには近寄ろうとしない。
「さて、俺の相手は……」
サタンケルウスを含む、5体の魔物。
まずはサタンケルウスから片付けたいところだが、他の魔物がどうもそれをさせてくれそうにない。
魔物の種類はバラバラ、様子を見ている限り協調性は無さそうだが……認識した敵が同じだとそれも少しは効果を発揮するようだ。
サタンケルウスの巨角から放たれる紅く回転すると球は、アスティオンに触れた瞬間高い摩擦音を出す。
それは真っ二つに斬れ、地面にそれぞれ落ちるとどろりとした爆発を数回繰り返す。
爆風は近くにいた魔物の足元をぐらつかせるほどの威力。
「速いな」
サタンケルウスの突進がアスティオンと接触。突進の威力は俺を2メートルばかり後退させた。
巨角とアスティオンの接触部からミシミシと軋む音がするが、サタンケルウスはお構いなしといった様子で俺を突き飛ばした。
サタンケルウスの巨角に傷跡が入っている。
サタンケルウスはすかさず巨角から紅く回転する球を作り出し、空中にいる俺向かって首を振って撃ち出した。
迅斬波、三。
迅斬波は三つの斬撃をつける。
サタンケルウスがバックステップするが、避けきれなかった巨角にヒット。
さらに、迅斬波の斬道にいた魔物二体が巻き添えを喰らう。
ただ、それを見ても何ら動じないサタンケルウスは凛として突き立っている。
なるほど、久しぶりに手ごたえのある魔物が来た。
サタンケルウスは巨角に傷がつけられた為か警戒したようで、様子を見ているようだ。
「ギュラララララ」
魔虫ドールカルポスは鎌のような6つの脚で移動、鋭い爪で切り付けてくる。加えて前脚の鎌爪は執拗に俺を刺そうとする。
「ギュラ、ララ……」
近寄り過ぎたドールカルポスに斬回風をお見舞い。さらには斬回風による全方位への攻撃は背後から俺を襲おうとしていたスクリロスレパードにも直撃。
そのまま前と後ろに対して攻斬波の烈焔は、圧縮された斬撃に撃技+6以上の解放で出せる剣技。
ドールカルポス、スクリロスレパード共に烈焔に焼かれ倒れる。
「残るは三体……」
と思っていたが、サタンケルウスがアンガーリザードとバルバールコングを巨角で突き刺してどろりとした爆発の餌食にした。
俺と戦う為、協調性を少しでも持ったのかと思っていたがまるで見当違いだった。
まあ無理もないか。
サタンケルウスは悪魔族。
悪魔族は多くの種族の中でも自分たちの種族の繁栄を重視する。
ヘリオスの住人たちの件があってから世界的には数は減少傾向にあるとされるが、それでも悪魔族は他の種族を襲い数を増やそうとしているらしい。
サタンケルウスの目からつうっと紅い涙が伝う。
「シン! あっちはおおかた片付いたわよ!」
「こっちもだ」
が、残るサタンケルウスからは見ても分かるほどに湧き出て来ているのは、勇者でいう撃技にあたる。体内に巡る悪魔の血を奮い立たせ攻撃力を上げ始めた。
悪魔族が厄介と言われているのは、これがある為。
先ほどアンガーリザードとバルバールコングを殺ったのは、悪魔族の血を活性化させる為。
ようは起爆剤的なもの。
「あの魔物、やばい感じね……!?」
メアが咄嗟に分厚い氷の壁を生成した。
氷の壁は中ほどまで貫かれ、溶けていく。
相当の熱量のようだ。
水蒸気が一気に発生する。
「これでどう!?」
メアの氷魔法が氷の壁を突き破ろうとしたサタンケルウスを足元から凍らせた。
「……駄目だ。メア、もう手を出すな」
氷の壁を築き、サタンケルウスを凍らせるなんて標的を変更される恐れがある。
メアが勝てないと言っているんじゃない。
悪魔族だけではなく全ての魔物にも言えることだが、相手の強さをレベルだけで判断してはならない。
メアはただ頷き、俺の背後に下がる。
それを確認した後、撃技+6の解放、攻迅斬波の連続によって漸くサタンケルウスは倒れた。
最後の最後まで避けもせずに攻迅斬波を巨角で受けたのは魔物ながら感服ものだ。
最も避けきれなかったのだろうが。
他の連中もじきに終わる頃か。
「……にしてもあいつ、何者なんだ?」
悪魔族は他にもいた。既に討伐されたようだがカキアはセクゥンド大陸に存在する大森林ディスピアにも生息している。
遭遇したが最後、負ければカキアの体内に閉じ込められゆっくり吸収されていくらしい。
見た目同様にグロテスクな魔物。
が、他の魔物よりも先に討伐されている。
ややあって見える魔物は全て討伐された。
謎の男は長剣を鞘に納め、俺たちの元に来る。
「援軍かと思いきや、また知らぬ勇者……。今日は騒がしい日だ」
白髪の長髪、目を閉じながら話す謎の男。
「テール、この男は誰なんだ?」
俺とメアが来る前に既にいたテールに聞く。
「俺もまださ」
どうやらテールも知らないらしい。ラピスに顔を移しても知らないといった様子だ。
「私が誰か? 魔物撲滅本部、そう言えば分かるだろう」
魔物撲滅本部と言えば、俺がヴィダの街に行った時にも会ったな。
何やらトリトン大陸の魔物を討伐しに来ているらしく、こいつを合わせると4人と会った。
「……まさかとは思うが、魔王の城に?」
「ーー私の他にも同志はこの島に来ている。私はラバラス。勇者の者達よ、同じく魔物を討伐する者として礼を言う」
そう言い残した後、ラバラスは森の方へと1人去って行った。
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