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第213話 魔王の城

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船から見える森からはぞろぞろと相当な数の魔物が湧いて出て来た。
しかもそのどれもが90代のレベル、100代の魔物も数体確認出来る。

「どうする!? シン!」

「いや、ここは戦わない。ボル、頼む!」

ボルティスドラゴンの背に着地。
皆も乗っていく。
ボルティスドラゴンが飛び上がり、魔物たちとの距離がぐんぐんと離れる。
さっきまで俺たちがいた船に魔物たちが雪崩れ込んで、瞬く間に船は崩壊した。

「任せてよ!」

魔物が3体ほど俺たちの方へ飛んで来た。
メアが氷柱を空中に創り出し、魔物目掛けて落とす。

「くっ!」

だが氷柱で一撃、というわけにはいかず、怯んだ魔物に対してテールの矢が炸裂する。
二体のヴァルヴァーのうち一体は脳天を矢で貫かれ地面へと落ちていく。
ヴァルヴァーは牛ほどもある鳥の魔物。鬼ガラスとも呼ばれ、空腹時には魔物を殺して死骸を貪り食う。その度に魔物の微量ながら経験値までも取り入れるのだから、集団に出くわせば厄介だ。

テールは再び矢を放つが、ヴァルヴァーの体には当たるものの致命傷にはならない。

「クイトュスか」

ヴァルヴァーと同じく鳥の魔物。体格はヴァルヴァーよりやや小さいが、攻撃力が高い魔物。レベルも102と高い。
クイトュスは体を傾け、みるみる回転速度を上げてテールが放つ矢も弾かれてしまう。

が、魔物特効特性の纏った斬撃はクイトュスの回転速度を殺した上、大きく致命傷を与えたようだ。
ふらふらとする中、地面へと落ちていった。

「ボル、あの島まで行ってくれ!」

俺はボルティスドラゴンに浮かぶ島の方へ行く指示を出した。
上から見ても、下の森に魔王の城らしきものは見えなかった。となると、上の島にあると考えるのが妥当。

「きゃあああ!!? 何こいつ!?」

メアが叫び、ボルティスドラゴンの背から下を覗き見る。
そこには下の森の巨木の10倍はあるスワロウデスプラントが口を開けて襲いかかって来ていた。
スワロウデスプラントはその場所に根づいたらそこに居続ける魔植物だが、根が届く範囲は移動することが出来る。

巨大な口はボルティスドラゴンごと俺たちを飲み込もうとしているようだ。

「ギュララララララララララ!! ーー!!?」

「さっすがボルちゃん!」

大口を開けていたのが仇になったようだ。
ボルティスドラゴンの暴風波が大口を貫くように炸裂し、スワロウデスプラントが爆発するように弾け飛んだ。

ただ、まだ俺たちに向かって来る魔物もいたが、上の島に近づくにつれて来なくなっていった。
上の島からは滝のように水が流れて来ている箇所も見られ、水飛沫が白くなって煙のようになっている。

魔王の城目指して長く旅をして来たが、あの島にはどんな魔物がいるのか……
ブルッフラの酒場で俺とメアにゲームを持ちかけて来たマラルとジャック。同じく彼らと共に旅をして魔王の城に行き着いたスレッドは魔人の手によって殺された。
カサルの地で宝剣を持っていたバルド。彼は過去に魔王の城に入るまでに至ったそうだが、仲間は敵側に寝返り、本人は1人では無理だと離脱した。

そんな魔王の城があの島に……

「魔王の城……」

一目でそれが魔王の城だと分かる。魔王の城の周りには、無数の竜系の魔物が飛んでおり、さらには馬鹿でかい魔竜が門付近にいる。
入り口があそこしかないなら正面突破して、あの魔竜と戦うことになる。
が、バルドとその仲間が魔王の城に入っていることを考えると、必ずしもあの魔竜を倒していく必要はなさそうではある。

ひとまずボルティスドラゴンに地上に降りるように指示を出した。

「どうした!?」

あまりにも急な動きに皆、ボルティスドラゴンの背から振り落とされてしまった。

「何処行くのよ! ボルちゃーん!!」

メアの叫びにも反応せず、ボルティスドラゴンは俺たちを落として飛び去っていく。
その方向は魔王の城。

「シーーーン!!」

セシルたちが俺からどんどん離れて行ってしまう。
それが去って行くボルティスドラゴンの起こした風なのか分からないが、風は俺たちを離れさせてしまった。





遥かに高い頭上には海が見える。海が上に見えるなんて不思議な感覚だが実際そういう現実が目の前にある。
俺たちの船はあそこから落ちて来たのか。

「派手に飛ばされたな」

樹がクッション代わりとなって対したダメージはなかった。
ただ、目下には俺を待ち構えるように魔獣が1体。


アルマレオパルド
LV.109
ATK.155
DEF.135


全身の体毛が武器のように鋭く、銃弾をも弾き斬るほどの強度を持つ。

「ヴォウ!!」

樹に衝撃が走った。
10メートルくらいはあるだろう大樹があっけなく倒れた。

俺はすかさず隣の樹に飛び移った。

「あいつら無事か?」

いや、ここでメアたちの心配はよそう。皆、覚悟を持ってこの場所に来たんだ。
ただ、魔法水晶体によってメアの位置は確認しておいた。
俺の位置からおよそ400メートル北西にメアの持つ魔法水晶体が反応している。
他の皆の位置は分からないが、セシルには七星村の村長から譲り受けた碧幻石を持たせてある。
嘘か真か一度失った命を身代わりにすることが出来るという。

「ヴォオウ!!」

また樹に強い衝撃が起こった。
しつこいな。

アルマレオパルド、レベル109。魔王の城周辺にいる魔物のレベル。
体長、およそ5メートル強だが逆立つ鋭い体毛でそれより大きく見える。
こんな奴に体力を消耗していられない。
迅斬波はアルマレオパルドを捉えた。

「丈夫な奴だな」

迅斬波はアルマレオパルドにヒットし刃のような体毛を斬り裂いたが、迅斬波に合わせるように回転し威力を軽減したようだ。
レベル109、さすがに知能指数が高い。

「ヴォオウ!!」

アルマレオパルドの反撃。
乱れるように飛んで来る巨爪はそのたびに地面を深く抉る。
避けた先にあった岩さえもあっけなく砕く巨爪。
巨木が簡単に倒れるわけだ。

「悪いが、お前と遊んでる暇はない!」

撃技+4の解放からの破砕の斬撃。
巨体はそれでも刃のような体毛を生かし防ぎきろうと回転したが、破砕の斬撃は回転を殺しアルマレオパルドに連続して直撃した。
アルマレオパルドは声をあげることなく、その巨体を倒した。

また敵が出て来そうだな。
メアたちにはこの場所に来る前、予期しないことへの対処策、行動を伝えてある。
それは勝てない敵には無理に立ち向かわないことだったり、逃げれない状態であれば防御に徹することなど。その間に誰かの援護を来ることを少しでも長引かせる為。
もちろん、今の状態のように離れ離れになってしまった時の対処策も伝えている。
そして1人では決して魔王の城に入ってならないことも。

まずは誰かと合流が先決だ。
メアの持つ魔法水晶体は移動しているが、さほど遠い距離ではない。

まずはメアと合流。
俺は速技を解放し仲間の元へ急いだ。
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