百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜

幻月日

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第203話 悲劇の王国

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初代魔王が君臨した時代、ソフィア王国の地下で起きた魔物の暴走。ソフィア王国は転送陣を使用し他国へと叛逆した魔物たちを転送させた。

ルフーマ王国。
セクゥンド大陸、南西部に位置していたとされる国。腕の立つ兵士たちが居たそうで、他国との友好関係も良かったそうだ。
その中でソフィア王国には資金提供をしていたらしく、ルフーマ王国は当時セクゥンド大陸一の財力を持っていたと言われている。

そんなルフーマ王国にソフィア王国は暴走する魔物たちを転送した……

そうして起きてしまった悲劇ーー。
ルフーマ王国に転送されて来た暴走する魔物たちは次第にさらに暴走化したという。
ルフーマ王国の兵士たちは暴走する魔物たちを食い止めようと必死になって交戦したそうだが、当時、魔物という驚異が浸透し切ってなかった時代、いくら腕の立つ兵士たちが居たからといっても所詮それは対人間に対してのみの兵力。
暴走する魔物を止めることはほとんど出来なかったそうで、特に危険だったとされたのが、魔獣ベヒーモス。ソフィア王国から転送されて来てもなお巨大化を続けるベヒーモスはたちまちルフーマ王国を崩壊させた。
それが“国落としの魔獣”と呼ばれることになった所以。

当時は今よりもさらに国と国との衝突が激しく、人間と人間が戦う時代だった。その為、魔物に対する兵力はまだまだ弱く、強制的に強化された魔物を抑えることは無謀だった。
そうしてルフーマ王国は世界から姿を消したという。
消したとそう表現したのは、ソフィア王国がこの悲劇を無かったことにする為によるものだそうだ。
何かソフィア王国にはあるなと思っていたが、まさかこんなことが過去に起きていたなんて……

以降、初代魔王と魔物の侵攻は止めることが出来ず、各国の体制は防衛の一途を辿る一方だった。
初代魔王の君臨、魔物の氾濫によって人類が減少したという事実は、それが人類が協力することになる起爆剤となった。
その後、次第に高レベルの魔物に対抗出来る兵力が整い始め、加えて勇者たちも現れるようになり、徐々にだったが人類は世界を取り戻し始めていった。





俺とホルトはプリズンタウンに戻って来ていた。
ただ、相変わらず岩壁を通ってあるプリズンタウンは不思議でならない。それはプリズンタウンの遥か上空に見える太陽だったり、遠くに見える山々の存在、魔物の一体たりともいない草原がそうさせる。

「ホルト、ご苦労だったな。ーーそれにしても、あのベヒーモスを1人で倒してしまうとは恐れいる。相当な手練れの勇者と心得る」

「そんなことはいい。俺はお前が言ったようにベヒーモスを討伐したんだ。ボトロアを探させてもらうぞ」

ダグラスが俺にベヒーモスと戦わせた理由。それはベヒーモスという個体の数を減少させる為だった。一応、俺の実力を見定める意味もあったそうだが、まさか本当に倒すとは思ってもみなかったらしい。

過去、ソフィア王国の研究者たちによって人工的に強化されたベヒーモスは討伐されたようだが、ベヒーモスという魔物は長い年月をかけて成長していく。
その中で、兵士たちにも勇者たちにも討伐されずに生き続けて来たベヒーモスは魔竜にも匹敵する力を持ってしまうのだそう。
俺が1人で戦わされたのはソフィア王国からの指示だという。
ダグラスはそれ以上のことは言わなかった。

「……街の南、其処に行くといい」

「ダグラス!」

「ホルトは見たのだろう? 彼の強さを。ならば、私が出来ることをするのは至極当然のこと」

どうやら、ボトロアの居場所を知っていたらしい。

「私が案内します。着いて来て下さい」

ダグラスたちと一緒にいた1人、髪の長い女は先を歩いて行く。
そうして、俺たちはその女の後を付いて行った。


ややあって、着いたプリズンタウンの南。着いた瞬間、その人物がボトロアだと分かった。
グレイロットで出会った情報屋トーマスからの情報と一致。剛腕な筋肉質の老人は一目で彼がボトロアだと分かる。
首元あたりに痛々しい傷痕が見え、大草原の方を向いて寛いでいるようだ。

「ボトロアさん、貴方に会いに来たという方々を連れて来ました」

と、女性は言うのだがボトロアの反応はまだない。
すると、ボトロアは立ち上がり、俺たちの方を向いた。

「あなたがボトロアさん」

ラピスは声小さくそう言う。
ボトロアの背は高く、2メートルは超えていると思われる。
ボトロアは俺たちをざっと見た後、一瞬で俺たちの背後に移動した。

「なんじゃ~、これだけしか持っとらんのか?」

「ちょ、ちょっとボトロアさん! この方々は貴方に会う為にこの街まで来たのですよ! それに、あまり度が過ぎた行動をしてると私たちもそれなりの対処をせざるを得ません」

女性は取り乱したようにそう言った。

「冗談じゃ。ほれ、若いの。こんな老いぼれに取られるようじゃ先行き厳しいぞ?」

ボトロアはテールに小袋を返す。
テールは唖然として、出す言葉もないようだ。

「あんたがボトロアか。俺はシン。あんたの力を借りる為に此処まで来た」

そう言うと、ボトロアは凄く嫌そうな顔をする。

「見返りはあるんじゃろうな?」

どうやら、力は貸してくれるらしい。

「もちろんだ」

ボトロアのことはトーマスからよく聞いていた。
金貨100枚、ボトロアは力を貸してくれる代わりにそれを望むらしい。

俺は用意していた金貨100枚を手渡した。

「ーー確かに」

ボトロアは数え終わるとそう言う。

「一応聞いておくが、本当に魔王の城まで連れてってくれるんだな?」

俺がトーマスから聞いた情報。
それは魔王の城がある大陸の名、そして魔王の城へ行く為の方法。魔王の城へ行く為にはプリズンタウンにいるボトロアの力が必要だということ。

「愚問じゃ。儂を誰じゃと思うておる? と言っても、お主らのような若造は知らんか」

「造船技師……」

ラピスがそう呟いた。
そう、ボトロアは造船技師らしい。魔物が溢れ返って需要が減少してしまった職業の一つ。俺は知らなかったが、トーマスが言うには超がつくほどの有名な造船技師。

「ほう、儂の事を知っておるのか? こんな嬢さんに知られていたとは嬉しいねえ」

「ボトロアさん、それでは私はこれで」

「ロサも大変じゃな。ダグラスたちには宜しく言っといてくれ」

ロサは微笑して頷き、進んで来た道へと戻って行った。

「よっしゃ、久々の力仕事じゃ! お主ら、時間を一月ほど貰うぞ!」

「頼む」

一月か。まあ、船を作るんだ。それくらいかかるのだろう。
その後、俺たちはプリズンタウンに滞在する為、再びダグラスたちの元へと向かった。

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