百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜

幻月日

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第198話 推薦

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ポイズンサーペントは毒の攻撃こそ面倒な魔物だが、冷静に対処すればどうってことはない。身体が13メートル強というのは厄介ではあるが、多くの魔物の弱点でもある頭を狙えば無駄な斬撃を撃たずに済む。

ややあって、現れたポイズンサーペントを全て掃討し終えた。

「凄いじゃない貴方達! 勇者ね!」

「ああ。そういうお前らは?」

「なーに、俺たちはしがない旅の」

「魔物撲滅本部、リリ=カレッド!」

「……同じく、レオン=パストール」

レオンは溜息を吐いて、そう名乗った。

こいつら、クランと同じ……
勇者でありながら国に使える者たち。それが魔物撲滅本部の勇者たち。それぞれが屈強な強さを持っているそうで、国の指示の元に動くとされる。

「魔物撲滅本部……聞いたことがある」

テールがそう言う。

「簡単に言うとね、魔物撲滅本部は国の一機関よ。貴方達は勝手自由に動くだろうけど、私たちは国の指示があって初めて動く」

「そういうことだ。よーするにだ、俺たちは今……これ、言っていいんだっけ?」

と言って、レオンはリリの方に確認するように向く。
リリが頷く。

「私達に与えられた任務。それは使徒と呼ばれる魔人を倒すこと。私達だけじゃない。使徒の魔人を倒す為に各地の仲間も動いている」

「あ~、俺、お前とじゃなくオーリエ姉と一緒になりたかった!」

「贅沢言わない! それだったら私もクランとが良かったわよ!」

どうやら、魔物撲滅本部にも色々あるらしい。

「ところで、さっきの赤い光の玉はお前のその武器か?」

リリの持っている武器は銃のような外見をしているが、銃ではなさそうだ。
引き金部分は銃と似ているのだが、発砲口の方が尖っている。

「ええ。これはエレメント銃。私が選んだ色は“水”。つまり、“水”をチャージすることで私の撃技エネルギーを吸収して撃ち出すことが出来るわ。こんな風にね!」

そう言って、リリはレオンに向けて撃つ。
それをさっと避けるレオンの動きは慣れているようだ。

「リリ! 俺だからいいものの、そうホイホイ人に向かって撃つなよ!」

「そうね、御免なさい」

「ふぁっ!? って聞いてる!? よっ! はっ!」

リリは御免なさいと言いながら問答無用でレオンに水銃を容赦なく撃つ。その度にレオンはささっと避ける。

「ところで貴方、良い腕だったね。クランと良い勝負しそうね」

「だろうな。ーーいや、何でもない」

別に隠す必要はなかったと思うのだが、一応そう言った。

「そんなに強いならどう?」

どう?
俺はリリのその言葉の意味を考える。

「魔物撲滅本部、私から推薦するわ」

まさかの言葉が来た。

「いや、遠慮しておく」

国の下に付くなんてまっぴらごめんだ。
この女、俺を推薦するなんて……推薦……
俺の脳裏に1人の男が思い浮かんだ。

「そう、残念ね。貴方ほどの強さだったら、魔物撲滅本部で大活躍間違いなしなのに。そこの勇者と違って」

最後、ぼそっと付け加えるようにそう言ったが、幸いにも当の本人には聞こえていないようだ。

「だったら、俺から推薦したい奴が1人いる。そいつは勇者で、しかも宝剣を持ってる」

「宝剣!? それは良い人材ね! 是非、紹介してほしいわ!」

食い付いた。

その後、俺はバルドの話をして、次いでに俺たちの旅の目的もさらっと伝えた。
その時、冗談だとレオンにかなり笑われたが、俺が持っている長剣が神剣だということと、会話の最中に現れたレベル104の怪蟲ドラゴンワームを二撃で沈めたのを見て、納得したようだった。





「ーー本気で魔王の城を目指してるなんて……それもあのアリス王女から」

俺が魔王の城を目指すことになった要因を話していた。

「まーた、おっかない姫様に頼まれたもんだな。しかも魔王の城とはえげつない」

「そういうお前らも使徒の魔人を倒す為に動いているんだろ?」

「魔王の城に比べたら全然可愛いもんだ。高レベルの魔物に魔竜……極め付けは魔王! 俺も長く魔物撲滅本部にいるが、魔王の城の秘宝を盗み出す任務なんてSSS級の難易度だぞ!? いや、SSSじゃ足りねえな」

リリとレオンに魔王の城の秘宝を盗む出す任務をアリス王女から頼まれたことを話したが、スキルのことは話していない。

「レオンに同感。アリス王女ったらどういうつもりで彼にそんな任務を……。私、やっぱりあの方の考えは分からないわ」

「そういうもんだろ。トップの思考は下々の遙か上を行くって話だよ。魔物撲滅本部にいる勇者にしても同じ。所詮俺たちゃ国の狗。えーっと、名をなんて言った?」

「シンだ」

「シン、そうかシン。俺から言えることは一つ! 遥々此処まで来たっていうんだ、引けとは言わない。ーーただな、お前がいくら強いとは言っても魔王を強さの概念で測るな。それに魔王だけじゃない、城には魔竜もいるって話だ」

そうレオンは言うが、もちろん、それを分かった上で俺たちは魔王の城を目指している。

「何が言いたい?」

「つまりだ、お前も、お前らもそういう魔竜や高レベルの魔物を相手にしていく覚悟があるかって聞いてんだ!」

「どうしたのよ? 柄にもなく熱くなって」

「熱くもなる! ーー俺はガキの頃、魔王を倒すとほざいて街を出て行った勇者共を何人も見て来た。最初は皆笑顔だ。街の連中も無事帰って来てなんてどういう神経して言ってんだってガキながら思ってたよ。だが現実はどうだ? 誰一人、街に帰って来やしない。後で知ったことだが皆とっくに死んでいたよ」

「……それ、レオンのお兄」

リリの言葉の先を止めるように、レオンは彼女の前に手を伸ばして首を振る。

「お前の言いたいことはよく分かった。だがな、これは俺が決めたこと。こいつらもそれを了承した上で俺について来てくれている」

「い、いや、俺は」

テールがそう言ったのを見て、レオンが首を傾げながら俺を見る。

「テールは条件付きで俺の旅について来た。それでも、俺について来ると決めたのはテール自身が決めたこと。そうだろ?」

「間違っちゃいないよ。俺はこの人達に付いて行くと決めた」

「セシルは条件付きなんかじゃないよ! シンの力になるって決めたの!」

そうセシルは言うが、実際のところは仲間の元に帰るまで。

「私もです! もちろん、この子もです」

ラピスは隣で歩くアルンに触れて言う。

リリはそんな様子を見て、レオンの反応を探るように見る。

「覚悟ありってか。そういうことなら俺にはもう何も言う資格はない。俺たちは俺たちの仕事をするとしよう! リリ!」

「また何処かで!」

そう言ったのを最後に魔物撲滅本部の勇者、リリとレオンは俺たちの前から去って行った。
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