不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ

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第一章

12、執着男の努力・焦り・奇行・そして愛! ※オーティス視点

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 そして幼いフィル様と親しくなって暫く経った頃。
 試験のために一月ほど会いに来れないとお伝えした日のことである。

「そうなんだ……うん、分かった。試験頑張ってね。終わったら必ず会いに来てね!」

 聞き分け良く返事をしたフィル様は、今にも泣きそうな顔で笑っていた。その顔が忘れられないまま一月。試験を無事に終えて久しぶりに会いに行くと、彼は私を見た途端、顔をくしゃくしゃにして激しく泣きだしてしまったのだ。

 びっくりした。

 オロオロと狼狽えつつ、なるべく落ち着いた口調を心掛けながら「ど、どうなさったのですか?」と声をかけてみる。
 どうやらアンドレアス王子や他の者に「試験なんて嘘に決まってるだろう? お前が嫌いだから会いに来ないんだよ」と言われたようだった。

「……良かっ……また会いにきてくれた。僕はみんなに嫌われてるから……オーティスも僕を嫌いになったんだって……。会いたかったの……もう一度オーティスに会いたかったの……」


「……そんなに……私に会いたかったですか?」

 小さな体を震わせながらこくっと頷く仕草に胸の辺りが騒がしくなる。
 この時感じた達成感や高揚感は次第に彼の全てを私一人で埋めたいという欲望に形を変え、それを実現するためにどうしたらいいのか私は必死に考えた。そしてある答えにたどり着く。

 この国では同性婚が正式に認められている。どういう組み合わせになろうとも結婚するにあたって性別は自由。

『家族になれば全ての願いが叶うのでは?』

 そうだ、願望を実現するためにはこれしかない。結婚すればいいのかと腑に落ちた。

 そうして少年だった私はフィル様を自分だけのものにするために『私が必ずここから連れ出します。約束します』とプロポーズしたのである。


 ◇◇◇

 それからの私は少しでも箔を付けようと学業に打ち込んだ。主席でアカデミーを卒業。その後は大魔法師になるために必死で働き、フィル様と会う機会が徐々に減っていっても私たちの未来のために必要なことだと割り切った。

 いつも頭の中に思い浮かぶのは、あの頃の小さなフィル様。守ってあげたくなる可愛らしい弟のフィル様。そう思っていたのに、アカデミーの入学式で久しぶりに彼を見た時、私はとんでもない衝撃を受けた。

 なぜなら、元々天使のようだったあの方は少し見ないうちに更に美しく絶句するほどの美男子へと成長を遂げていたからだ。

 表舞台へ出てこないフィル様は貴族たちから「醜い顔をしているらしい」などと散々な噂を立てられていたが、その噂も一瞬にして払拭された。
 右を見ても左を見ても、愛らしさを残しながら美しく精悍な顔付きのフィル様に男も女も見惚れている。あれほど悪口を垂れ流してきた貴族たちがだ。

 セガール様のような余裕さはないものの、少し尖った様子から繊細で壊れてしまいそうな脆さも垣間見え、隠しきれないほどの熱い視線が彼に向けられている。

 そして、それは私とて例外ではなかった。昔から知っているのに初めて会ったかのような不思議な気持ち。ふわふわしながらも鼓動は早く、貴方から一秒も目が離せない。

 突然不安になった。
 あのプロポーズは今でも有効だろうか。

 次男坊の私が一国の王子に結婚を申し込むために大魔法師を目指してきた。けれど、いつになったらその大魔法師とやらになれるのだろう。

 焦燥感に駆られた私は王都にフィル様と住むための屋敷を建てるという奇行に走り家族を不安にさせた。

 仕事は以前にも増してどんな危険な場所へも赴き、人がやりたがらない仕事も引き受けた。血眼になって腕を磨き、ある時たまたま霊の類を退治したことが認められ、ついに念願の大魔法師の称号を手にいれたのだ。

 やっと貴方を迎えにいくための準備が整った。そんな矢先に舞い込んだ生霊事件。

 これまでフィル様をとても愛しく思ってきたが、正直性の対象として見たことは一度もなかった。
 なのに……生霊に体を弄ばれて上気した貴方の顔、引き結んだ口から漏れる掠れた喘ぎ声。あの映像が私の中の全てをひっくり返した。

 人生で初めて欲情したのだ。

 生霊を退治することすら忘れて必死に乱れる貴方の姿を目に焼き付けた。昨夜貴方を使って自分を慰めたなど絶対に知られてはいけない。


「……オーティ……ス……」

「もっと名前を呼んでください……貴方は誰にも渡しませんから」
 寝息を立てる愛しい人の髪にそっと口付けた。
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