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第一章
3、オーティスしっかりして
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「オーティス……久しぶり」
シルバーの髪に紫の瞳。セガール兄上も溜息が出るほど美しい容姿だが、オーティスはその兄上と隣に並んでも引けを取らない美貌の持ち主だ。
成長期でグンと伸びた俺の身長よりずっと高く、魔法師なのにムッキムキなのは特別に鍛えているからなのだろうか。
最後に会ったのはアカデミーの入学式の時だから、もう二年以上前になる。俺の晴れ姿を見に来てくれた兄上が、「連れてきちゃった」とウインクする横で「ご入学おめでとうございます」と言ってくれたのを何度思い出したことか。
この数年間、オーティスがめちゃくちゃ忙しい日々を送ってるって聞いてから、会いたい気持ちをずっと我慢してきた。
夢にまで見た本物の彼を前にして、俺の脳内は『オーティス!』コールが鳴り止まない。
(何から話そう。毎年誕生日にメッセージカードを送ってくれてありがとう? ううん、違うな。そうだ――)
ブルーの瞳がオーティスを映してキラキラ輝いた。
「あ、あのさ、大魔法師に昇格おめでとう。史上最年少だって聞いたよ。オーティスは昔から凄かったけど、実際にやってのけるなんてめちゃくちゃ格好良いな!」
大魔法師にだけ与えられる真っ白なローブ。金糸の刺繍がたっぷりと施され、その地位に見合った重厚感がある。黒色のローブが支給される王国魔法師団の中で、白のローブを身に纏う大魔法師は多くの者たちの憧れとなっている。
俺は式典や舞踏会といった公の場に出席することを禁止されているから、先日行われたオーティスの叙任式にも出席できなくてとても残念だった。手紙でお祝いの言葉を伝えたけど、やっぱり直接言いたかったんだ。
「有難きお言葉でございます。あの日頂いたお祝いの手紙も大切にしております。フィル様はこの三年で随分凛々しく逞しくなられましたね」
オーティスの上品な笑みと、彼と交わす久しぶりの会話に胸が躍る。
「うん、騎士科でだいぶ鍛えられたから。俺、王国騎士団の入団テストに合格したんだ。将来は兄上の専属騎士になってみせるよ」
「それはセガール様も心強いですね」
「羨ましいだろうオーティス。その夢必ず叶えるんだよ。立ち話もなんだ、二人ともそろそろ座ろう」
王太子であるセガール兄上とオーティスは同級生で、アカデミー初等科からの友人だ。俺が初めて彼に会ったのは王宮に連れてこられてすぐの頃。彼らが十二歳の時だった。
五歳の俺から見たら二人は大きなお兄ちゃんで、意地悪な他の兄弟たちと違ってとても可愛がってくれた。
オーティスは勉強や習い事で忙しいはずなのに毎週必ず俺の住む離宮に会いに来てくれたし、魔力のまったくない俺に魔法を見せてくれたりもした。物静かで口数は少ないけど、彼が話してくれるアカデミーでの出来事を聞くのが楽しみでオーティスが来るのを離宮の正面扉の前で毎日待っていたっけ……。
「――状況はどうですか?」
「う~ん、良くないね。昨晩、僕のベッドに入ろうとしてきた。今夜は潜り込んでくるかも」
セガール兄上はやれやれと肩を竦める。
オーティスによって一度退治されたその霊は再び同じ姿で兄上のもとに現れたことで、ただの霊ではなく生霊であると決定付けられた。その後暫くはこちらの様子を窺って適度な距離を保っていたのだが、この数日急に大胆な行動を取るようになったという。
「兄上、その生霊の見た目は?」
「髪の長い女。顔はぼやけていてはっきりとは分からないんだよね。で、オーティス。どうやって生霊を捕まえる?」
「生霊が寝所に現れたら直ちに魔法紐で捕らえます。生霊は主のもとに逃げ戻るでしょうから、魔法紐を辿って犯人を捕まえましょう」
俺の任務は兄上の身代わりとなってベッドで寝たふりをすること。魔法紐で捉える前に偽物だと気付かれてはいけない。生霊を騙しきるのだ。
「フィルに囮をさせるのは一度きりだからね。今夜、必ず生霊を捕まえてくれ。頼んだよオーティス」
「はい、フィル様には指一本触れさせません。必ず生霊を捕らえてみせます」
…………というのが昼間の出来事だったはず。そうだよね、オーティス? そう言ったよね!? なのに俺、指一本どころか生霊にこれでもかってくらい体、特に下半身を弄ばれてるんだけど!!
オーティスは切長の目を見開いたまま、喘ぐ俺を見続けているのはなぜなんだ。これ以上はさすがに我慢できないって。限界間近の俺はついに叫んだ。
「オー……ティス……俺、も、もぉ、無理っ!!」
ハッと我に返ったオーティスは、瞬時に魔力で魔法紐を生成して生霊を捕らえた。その先端を手綱のようにしっかりと握り締める。彼の読み通り生霊は主のもとに戻るつもりなのか部屋から飛び出した。
(なんだよ、すぐに捕まえられるじゃん!)
「フィル様、私は生霊を追跡します」
「俺も行く!」
下ろされた下着を元に戻してベッドから飛び降りた。はだけた長丈のガウンをさっと整え、上掛けを羽織ってすぐさまオーティスを追いかけた。
シルバーの髪に紫の瞳。セガール兄上も溜息が出るほど美しい容姿だが、オーティスはその兄上と隣に並んでも引けを取らない美貌の持ち主だ。
成長期でグンと伸びた俺の身長よりずっと高く、魔法師なのにムッキムキなのは特別に鍛えているからなのだろうか。
最後に会ったのはアカデミーの入学式の時だから、もう二年以上前になる。俺の晴れ姿を見に来てくれた兄上が、「連れてきちゃった」とウインクする横で「ご入学おめでとうございます」と言ってくれたのを何度思い出したことか。
この数年間、オーティスがめちゃくちゃ忙しい日々を送ってるって聞いてから、会いたい気持ちをずっと我慢してきた。
夢にまで見た本物の彼を前にして、俺の脳内は『オーティス!』コールが鳴り止まない。
(何から話そう。毎年誕生日にメッセージカードを送ってくれてありがとう? ううん、違うな。そうだ――)
ブルーの瞳がオーティスを映してキラキラ輝いた。
「あ、あのさ、大魔法師に昇格おめでとう。史上最年少だって聞いたよ。オーティスは昔から凄かったけど、実際にやってのけるなんてめちゃくちゃ格好良いな!」
大魔法師にだけ与えられる真っ白なローブ。金糸の刺繍がたっぷりと施され、その地位に見合った重厚感がある。黒色のローブが支給される王国魔法師団の中で、白のローブを身に纏う大魔法師は多くの者たちの憧れとなっている。
俺は式典や舞踏会といった公の場に出席することを禁止されているから、先日行われたオーティスの叙任式にも出席できなくてとても残念だった。手紙でお祝いの言葉を伝えたけど、やっぱり直接言いたかったんだ。
「有難きお言葉でございます。あの日頂いたお祝いの手紙も大切にしております。フィル様はこの三年で随分凛々しく逞しくなられましたね」
オーティスの上品な笑みと、彼と交わす久しぶりの会話に胸が躍る。
「うん、騎士科でだいぶ鍛えられたから。俺、王国騎士団の入団テストに合格したんだ。将来は兄上の専属騎士になってみせるよ」
「それはセガール様も心強いですね」
「羨ましいだろうオーティス。その夢必ず叶えるんだよ。立ち話もなんだ、二人ともそろそろ座ろう」
王太子であるセガール兄上とオーティスは同級生で、アカデミー初等科からの友人だ。俺が初めて彼に会ったのは王宮に連れてこられてすぐの頃。彼らが十二歳の時だった。
五歳の俺から見たら二人は大きなお兄ちゃんで、意地悪な他の兄弟たちと違ってとても可愛がってくれた。
オーティスは勉強や習い事で忙しいはずなのに毎週必ず俺の住む離宮に会いに来てくれたし、魔力のまったくない俺に魔法を見せてくれたりもした。物静かで口数は少ないけど、彼が話してくれるアカデミーでの出来事を聞くのが楽しみでオーティスが来るのを離宮の正面扉の前で毎日待っていたっけ……。
「――状況はどうですか?」
「う~ん、良くないね。昨晩、僕のベッドに入ろうとしてきた。今夜は潜り込んでくるかも」
セガール兄上はやれやれと肩を竦める。
オーティスによって一度退治されたその霊は再び同じ姿で兄上のもとに現れたことで、ただの霊ではなく生霊であると決定付けられた。その後暫くはこちらの様子を窺って適度な距離を保っていたのだが、この数日急に大胆な行動を取るようになったという。
「兄上、その生霊の見た目は?」
「髪の長い女。顔はぼやけていてはっきりとは分からないんだよね。で、オーティス。どうやって生霊を捕まえる?」
「生霊が寝所に現れたら直ちに魔法紐で捕らえます。生霊は主のもとに逃げ戻るでしょうから、魔法紐を辿って犯人を捕まえましょう」
俺の任務は兄上の身代わりとなってベッドで寝たふりをすること。魔法紐で捉える前に偽物だと気付かれてはいけない。生霊を騙しきるのだ。
「フィルに囮をさせるのは一度きりだからね。今夜、必ず生霊を捕まえてくれ。頼んだよオーティス」
「はい、フィル様には指一本触れさせません。必ず生霊を捕らえてみせます」
…………というのが昼間の出来事だったはず。そうだよね、オーティス? そう言ったよね!? なのに俺、指一本どころか生霊にこれでもかってくらい体、特に下半身を弄ばれてるんだけど!!
オーティスは切長の目を見開いたまま、喘ぐ俺を見続けているのはなぜなんだ。これ以上はさすがに我慢できないって。限界間近の俺はついに叫んだ。
「オー……ティス……俺、も、もぉ、無理っ!!」
ハッと我に返ったオーティスは、瞬時に魔力で魔法紐を生成して生霊を捕らえた。その先端を手綱のようにしっかりと握り締める。彼の読み通り生霊は主のもとに戻るつもりなのか部屋から飛び出した。
(なんだよ、すぐに捕まえられるじゃん!)
「フィル様、私は生霊を追跡します」
「俺も行く!」
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