青き瞳に映るのは桃色の閃光

岬 空弥

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最終話 頑張るあなたへ最強のお守りを

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 今夜は、久々に両家が集まった夕食会であった。
夜会で判明したエステルダの妊娠は、夫のヴィスタだけではなく、両家の親、そしてアリッサとレナートをも喜ばせた。

ヴィスタが優しく見守る中、エステルダは、自分のお腹を愛おしそうに撫でている。一見、どこから見ても幸せいっぱいの夫婦であったが、あちこちから注がれる視線に、夫婦は微笑みながらも決して気を許してはいなかった。

まず、妊娠の知らせを受けたエステルダの母親が狂喜乱舞して飛び上がった。 「子供のお世話は、わたくしに任せなさい!!」 と、身を乗り出し、エステルダのお腹に手を当てながら「どうかロックナート様に瓜二つのお子を・・・。」 と、ぶつぶつ祈りを捧げ始め、エステルダの怒りをかった。
彼女は、娘に怒られても全く気にしていないようで、その後も勝手に子供の名前を考えては手紙で伝えてくる。

母親の中では、既に銀髪でロックナート似の男の子は決定事項のようであった。
つい先ほども、ヴィスタを相手に、「ナートジュニアなんてどうかしら。」 と、詰め寄り、「レナートさんの息子のようで嫌です。」 と、あっさり断られていた。

「三歳になったら、南の砦で私が騎士に育てよう。ははは、ロックナート様と私の二人で育てれば、世界で天下を取れるほどの男になってしまうな。ははっ、最強だな!」

いやー、困ったなぁ。と、勝手な妄想でニヤニヤしているエステルダの父親は、随分とお酒が進んでいるようで、もはや潰れる寸前だ。

姉の妊娠を知ったレナートの第一声は、「やった!我が家の跡継ぎだ!!」 と、これまた理解に苦しむ発言をした。
どうやら弟は、さっさとロゼット公爵家を息子に継がせ、自分はアリッサと共に騎士の仕事に専念したいらしい。

レナートが元々、騎士になりたかったことは知っていたが、なぜ自分の子供がロゼットを継がなくてはいけないのかと文句を言えば、

「え? どちらの子供でも、ちゃんと両家の血が流れているんですから別に良いではありませんか。何を細かいことにこだわっているのですか。」

と、笑い飛ばされた。怒ったエステルダが厳しく注意したが、全く意に介さないレナートを見る度に、エステルダの血圧は上がるのだった。

「レナート、自分の領地は、ちゃんと自分の子供に継がせなさい!!この子はわたくしとヴィスタ様の子供です!!ナーザスの子です!!」

「何をケチくさいことを言っているのですか、姉上。それでは困るんです。私とアリッサの子供は可愛らしい女の子と決めているんです。アリッサにそっくりな女の子ですよ!? 
あ・ね・う・え! その際、私は死ぬほど可愛がる予定です。嫁にも絶対出しません。」

「レナート・・・、酔っているのですか? 本当に・・・何を馬鹿な事を言っているのだか。現実はそんなにうまくは行きません。残念でしょうが、生まれてくるのは貴方にそっくりな大柄な女の子に決まっています! あーあー、楽しみですわね!」

「なっ、なんで姉上にそんなことがわかるのですか!!」

その時、嬉しそうな顔をしてアリッサが会話に入って来た。

「あら、いいですね! 私はレナート様にそっくりな子供がほしいです。女の子でも、きっと可愛らしいですよ。金髪碧眼、美少女ですね!」

「アリッサ、駄目です!!そんなの子供が可哀想です。せめて女の子はアリッサの方に似てもらわないと。」

「そうですわ!!レナート顔の女の子なんてただのゴリラですわよ!?
金髪碧眼 ゴ・リ・ラ! ぷっ・・・くく、」

「姉上!!ただのゴリラなんて私の娘に失礼ではありませんか!!なにを笑っているのです!!訂正してください。」

その時、笑い声を抑えたヴィスタの小さな声が聞こえた。

「ふっ、なんで・・・子供も、まだできてないのに。くくっ」

「まあ、私達の子供のことは、今は置いときまして、エステルダ様のお子さんには、是非、我がアリッサ騎士団で私の跡継ぎとして―――」

「駄目ですっ!!何故わたくしたちの子供がアリッサ様の騎士団に入るのですか!!」

「え・・・だって、私とレナート様の可愛い子供達を騎士になんてしたくありませんもの。戦などで怪我でもしたらどうするのです!?自分の子供達には、しっかりと自立させて、王宮で侍女とか、文官とか・・・、研究者や医学の道っていうのもいいですわよねー・・・。」

などと、アリッサは、うっとりと物思いにふけっている。

「ゴリラは、素直に外で戦っていればよいのです!!」

「なっ!!」

「姉上!!」

「とにかく!わたくしの子供は、銀髪でもありませんし、南の砦にもやりません!!ロゼットの跡継ぎにもしませんし、アリッサ騎士団になど絶対入団させません!!この子は、わたくしとヴィスタ様の愛の結晶です!!わたくし達の子育ての邪魔は一切許しませんので、そのつもりで!!」

「うふふ、ところでヴィスタとエステルダさんは、どんな子供に育ってほしいと思っているの?」

それまでにこにこしながら、皆の話を聞いていたヴィスタの母親の声に、エステルダとヴィスタは、しばし考え込んだ。

「僕は・・・。」

沈黙を破ったヴィスタは、エステルダとレナートを交互に見つめると、にっこり微笑んだ。

「僕は、男の子でも女の子でも、どちらでもかまいません。ただ、自分の気持ちに正直で、相手を思いやれる優しさと自分の意思を貫く強さを持ってくれると嬉しいです。」

そして、ヴィスタの顔を見ながら幸せそうに頷くエステルダも、

「そうですわね・・・わたくしも、健康に生まれてくれるのなら男の子でも女の子でもどちらでもいいですわ。子供の将来なんて、生まれて来る彼らが自分で考えて自分で決めるものですもの。・・・でもね!? わたくし、一つだけ決めていることがありますの。」

「未来に向かって頑張る子供達にはね、最強のお守りとして、サファイアの付いた深い緑色のリボンを贈りたいと思っていますわ!」


そう言ったエステルダは、にっこり笑ってウインクをした。





END





※ この後、アリッサ視点、エステルダ視点でのエピソードをお届けして終わりにしたいと思います。
両方とも婚約後のお話になります。
  


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