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第一王子妃になる理由?
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「あの・・・レナートと話す時間をつくりましょうか?」
それは、エステルダの優しさだったのかもしれない。しかし、生まれた時から何の苦労もしてこなかったエステルダには、現実がそんなに甘くないということまで、考えは及ばないのであった。
その言葉を聞いたアリッサは、顔を赤く染め、先ほどまでの恥じらう様子がまるで幻だったかのように、すっと表情を消して俯いた。
目を逸らし、黙って首を振るアリッサを前に、驚いたエステルダは何も言えなくなってしまった。酷く悪い事を言ってしまったことには気が付いたけれど、それがどうしてなのか、今のエステルダには理解することができなかった。
エステルダは、それからもアリッサのことが気になって仕方がなかった。自分からアランド殿下を奪い取ろうとする最悪の女アリッサが、あまりに想像とかけ離れた令嬢だったというのも気になる理由の一つだったが、あの日、アリッサが懸命に説得しようとしていたことも心に引っ掛かっていた。
(アランド殿下にこだわる理由・・・。)
アランド殿下からアリッサを遠ざけ、ロゼット公爵家の力を持ってアランド殿下と婚約。そして結婚。
(その先は・・・?
もちろん、王妃ですわ。
・・・で?それから?
子供を産むわ。新しい王子よ。
・・・え? 殿下に愛人?
側室?
それが、どうしたの?
私の幸せってなにって・・・?
そんなの・・・。)
エステルダは、そこまで考えると痛む頭を両手で抱えた。今まで何も疑うことなどなかった。自分は、貴族の家に生まれたのだ。しかも、王家に嫁ぐ立場も持っている。ならば、進むべき道はたった一つ。それは、エステルダでなくとも皆が進む道だ。何も考える必要などなかった。産まれたときから決まった道なのだから。しかし、自分が思い描くエステルダ王妃は、
・・・笑ってはいない・・・。
(何故アリッサ様の真っ赤な顔が頭から離れないのかしら・・・。)
あんなに顔を赤くして、そんなにレナートが好きなのだろうか。一体、レナートのどこにそんなに好意を持ったのだろう。せっかくレナートとの接点を作ってあげようとしたのに、本人からは、あっさり断られてしまった。アリッサの気持ちを、もしレナートが知ったなら、二人はどうなるのだろうか。あの日からエステルダの頭の中は、常にアリッサのことでいっぱいだった。それは、まるで恋する乙女のように、アリッサばかりを目で追いかけ、アリッサのことばかり考えているのだ。本人は全く気付いていないが、この数日、アリッサの追跡に時間を取られ、アランド殿下への恋心などは、すっかり忘れているのだった。
「姉上・・・。アリッサ嬢の話はもういいです。本当に、どうしたんですか?」
呆れた顔のレナートがソファーに深く腰掛けると、長い足を組んで疲れたように溜息を吐いた。
「レナート!?今、アリッサ様のことを、アリッサ嬢と呼びませんでしたか? 親しくなったのですか?それは?いつですの?」
勢いよく立ち上がって、速足でレナートに迫ってくるエステルダに驚いたレナートは、血走った姉の目を見るなり、恐れをなしてソファーの端まで逃げた。
「別に親しくありません。姉上、近いです!少し離れてください。」
「ではなぜ、ナーザス嬢と呼ばず、アリッサ嬢と!?」
「深い意味などありません。連日、姉上からアリッサ、アリッサと聞かされていたので、つい口から出てしまっただけです。実際彼女とは話をしたこともありませんよ。」
それを聞いたエステルダは、いかにもつまらなさそうに口を尖らせて、レナートの隣にどさりと腰を下ろした。
「そんなに彼女が気になるのでしたら、今度、お茶とお菓子でも用意して、我が家にご招待でもしたらどうですか?」
「えっ!?それって、いいのかしら。」
エステルダは、口元に両手を当てると、ほんのり頬を染めた。
「いいもなにも、姉上はアリッサ嬢と友人になりたいんですよね?」
その言葉に信じられない程の衝撃を受けたエステルダは、目を大きく見開きレナートの顔を凝視したまま固まってしまった。
「え? 姉上、気付いてなかったんですか?」
「そうでしたの!?」
「え?」
「・・・え?」
その日、二人の会話に答えは出なかった。
それは、エステルダの優しさだったのかもしれない。しかし、生まれた時から何の苦労もしてこなかったエステルダには、現実がそんなに甘くないということまで、考えは及ばないのであった。
その言葉を聞いたアリッサは、顔を赤く染め、先ほどまでの恥じらう様子がまるで幻だったかのように、すっと表情を消して俯いた。
目を逸らし、黙って首を振るアリッサを前に、驚いたエステルダは何も言えなくなってしまった。酷く悪い事を言ってしまったことには気が付いたけれど、それがどうしてなのか、今のエステルダには理解することができなかった。
エステルダは、それからもアリッサのことが気になって仕方がなかった。自分からアランド殿下を奪い取ろうとする最悪の女アリッサが、あまりに想像とかけ離れた令嬢だったというのも気になる理由の一つだったが、あの日、アリッサが懸命に説得しようとしていたことも心に引っ掛かっていた。
(アランド殿下にこだわる理由・・・。)
アランド殿下からアリッサを遠ざけ、ロゼット公爵家の力を持ってアランド殿下と婚約。そして結婚。
(その先は・・・?
もちろん、王妃ですわ。
・・・で?それから?
子供を産むわ。新しい王子よ。
・・・え? 殿下に愛人?
側室?
それが、どうしたの?
私の幸せってなにって・・・?
そんなの・・・。)
エステルダは、そこまで考えると痛む頭を両手で抱えた。今まで何も疑うことなどなかった。自分は、貴族の家に生まれたのだ。しかも、王家に嫁ぐ立場も持っている。ならば、進むべき道はたった一つ。それは、エステルダでなくとも皆が進む道だ。何も考える必要などなかった。産まれたときから決まった道なのだから。しかし、自分が思い描くエステルダ王妃は、
・・・笑ってはいない・・・。
(何故アリッサ様の真っ赤な顔が頭から離れないのかしら・・・。)
あんなに顔を赤くして、そんなにレナートが好きなのだろうか。一体、レナートのどこにそんなに好意を持ったのだろう。せっかくレナートとの接点を作ってあげようとしたのに、本人からは、あっさり断られてしまった。アリッサの気持ちを、もしレナートが知ったなら、二人はどうなるのだろうか。あの日からエステルダの頭の中は、常にアリッサのことでいっぱいだった。それは、まるで恋する乙女のように、アリッサばかりを目で追いかけ、アリッサのことばかり考えているのだ。本人は全く気付いていないが、この数日、アリッサの追跡に時間を取られ、アランド殿下への恋心などは、すっかり忘れているのだった。
「姉上・・・。アリッサ嬢の話はもういいです。本当に、どうしたんですか?」
呆れた顔のレナートがソファーに深く腰掛けると、長い足を組んで疲れたように溜息を吐いた。
「レナート!?今、アリッサ様のことを、アリッサ嬢と呼びませんでしたか? 親しくなったのですか?それは?いつですの?」
勢いよく立ち上がって、速足でレナートに迫ってくるエステルダに驚いたレナートは、血走った姉の目を見るなり、恐れをなしてソファーの端まで逃げた。
「別に親しくありません。姉上、近いです!少し離れてください。」
「ではなぜ、ナーザス嬢と呼ばず、アリッサ嬢と!?」
「深い意味などありません。連日、姉上からアリッサ、アリッサと聞かされていたので、つい口から出てしまっただけです。実際彼女とは話をしたこともありませんよ。」
それを聞いたエステルダは、いかにもつまらなさそうに口を尖らせて、レナートの隣にどさりと腰を下ろした。
「そんなに彼女が気になるのでしたら、今度、お茶とお菓子でも用意して、我が家にご招待でもしたらどうですか?」
「えっ!?それって、いいのかしら。」
エステルダは、口元に両手を当てると、ほんのり頬を染めた。
「いいもなにも、姉上はアリッサ嬢と友人になりたいんですよね?」
その言葉に信じられない程の衝撃を受けたエステルダは、目を大きく見開きレナートの顔を凝視したまま固まってしまった。
「え? 姉上、気付いてなかったんですか?」
「そうでしたの!?」
「え?」
「・・・え?」
その日、二人の会話に答えは出なかった。
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