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生きてまた次の約束を
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「ジャスティン、どうだった? 私の言った通り、ユニはいい子だっただろう?」
先ほどのユニーナとの会話を思い出して、口角を上げていたジャスティンの側に、いいだけ笑って、涙目になったスワルスが、目じりを指で擦りながら話しかけてきた。
「ええ、とても素敵な時間でした。ですが、彼女とは、もう少し早く会いたかったですね・・・。」
「随分楽しそうだったけれど、どんな会話をしていたんだ?」
「ふっ、彼女はこの傷を見て、大切なものを守った証だと・・・、誇らしいと言ってくれました。ご令嬢なら誰もが嫌悪する辺境地にも興味を持ってくれましたし、騎士訓練の話や魔獣の話なんかも怖がらずに真剣に聞いてくれました。」
「ああ、彼女ならそうだろうね。君たちが命がけで戦っている姿に強い憧れを持っている、んー・・・憧れとは、少し違うかな? ねぇ、ミズリー? ユニの場合、なんて言ったら正解だろうね。」
そう、話を振られたミズリーは、何かを思い出したかのように、にっこり笑って話始めた。
「ふふふ、ユニは以前こう言っていましたわ。
『アーレン閣下を先頭に、たくさんの騎士様が命をかけて戦っているのです。それは、私の自慢であり、この国の誇りでもあるのです!』
って、うふふ、可笑しいでしょう? 一人で興奮しながら、腰に手を当てて、ふふっ、まだあどけない少女の頃ですわ。まるで自分が騎士団長にでもなったような物言いでしたわよ。」
そう言ったミズリーは、家族の前で、鼻息荒く捲し立てていた幼き日のユニ―ナを思い出して、両手を口に当てて、クスクスと笑った。
「えーとそれは、ご家族やご親戚などの影響で、そのような・・・?」
「違うよ、ジャスティン。ユニはね、長年アーレン閣下の熱狂的支持者ならしいよ。」
「はっ!?アーレン閣下? え!?よりにもよって、なぜです? 年齢的にも・・・、え?アーレン閣下? 本当に?」
それを聞いたジャスティンは、信じられないと言うように、目を大きく見開いている。その顔があまりにも面白かったせいか、スワルスも、その隣のミズリーも笑いを堪えることが出来なかった。
「はははっ、そうだよな!私も驚いたよ。だから君の傷があと100個増えたところで、ユニは驚きもしないし、怯えもしないだろうね。彼女に言わせれば、全て名誉の負傷だ。」
「そうでしたか・・・。はは・・・、ああ、やはり、もう少し早くお会いしたかったな・・・。もしくは、婚約者の彼が従兄上の言っていたように、もう少し彼女を蔑ろにしていてくれたなら・・・。本当に、残念です。ですが、この先、もし私にチャンスがあるような時は直ぐに連絡くださいね。」
「ははは、それはどうだろうな。・・・まあ、彼次第だろうね。」
「でも、そうか・・・、だからあんな約束を・・・。」
「アーレン閣下に心酔してるってことはね、閣下と共に体を張って戦う君達騎士のことも、常に考えているってことなんだよ。 ジャスティン、いいかい?男として女性との約束は必ず守るんだよ!? そして、これは私からの命令でもあるんだからね。」
「従兄上・・・。」
「そして、約束のダンスが終わった時は、またユニーナと次のダンスの約束をしてくださいね。・・・これは、ユニーナの姉からのお願いです。」
「ははっ、これは大変だ。私は、随分と大変な約束をしてしまったってことですね・・・。私はその約束を守る為に、もっともっと強くならなくてはいけませんね。そうですか・・・その時のダンスが今から楽しみです。」
そう言ったジャスティン様が、薄っすらと涙を浮かべ、私達の立ち去った扉の方を見つめていた時、私はアレイド様に手を引かれ、休憩室の一室に押し込められるように入室したのでした。
先ほどのユニーナとの会話を思い出して、口角を上げていたジャスティンの側に、いいだけ笑って、涙目になったスワルスが、目じりを指で擦りながら話しかけてきた。
「ええ、とても素敵な時間でした。ですが、彼女とは、もう少し早く会いたかったですね・・・。」
「随分楽しそうだったけれど、どんな会話をしていたんだ?」
「ふっ、彼女はこの傷を見て、大切なものを守った証だと・・・、誇らしいと言ってくれました。ご令嬢なら誰もが嫌悪する辺境地にも興味を持ってくれましたし、騎士訓練の話や魔獣の話なんかも怖がらずに真剣に聞いてくれました。」
「ああ、彼女ならそうだろうね。君たちが命がけで戦っている姿に強い憧れを持っている、んー・・・憧れとは、少し違うかな? ねぇ、ミズリー? ユニの場合、なんて言ったら正解だろうね。」
そう、話を振られたミズリーは、何かを思い出したかのように、にっこり笑って話始めた。
「ふふふ、ユニは以前こう言っていましたわ。
『アーレン閣下を先頭に、たくさんの騎士様が命をかけて戦っているのです。それは、私の自慢であり、この国の誇りでもあるのです!』
って、うふふ、可笑しいでしょう? 一人で興奮しながら、腰に手を当てて、ふふっ、まだあどけない少女の頃ですわ。まるで自分が騎士団長にでもなったような物言いでしたわよ。」
そう言ったミズリーは、家族の前で、鼻息荒く捲し立てていた幼き日のユニ―ナを思い出して、両手を口に当てて、クスクスと笑った。
「えーとそれは、ご家族やご親戚などの影響で、そのような・・・?」
「違うよ、ジャスティン。ユニはね、長年アーレン閣下の熱狂的支持者ならしいよ。」
「はっ!?アーレン閣下? え!?よりにもよって、なぜです? 年齢的にも・・・、え?アーレン閣下? 本当に?」
それを聞いたジャスティンは、信じられないと言うように、目を大きく見開いている。その顔があまりにも面白かったせいか、スワルスも、その隣のミズリーも笑いを堪えることが出来なかった。
「はははっ、そうだよな!私も驚いたよ。だから君の傷があと100個増えたところで、ユニは驚きもしないし、怯えもしないだろうね。彼女に言わせれば、全て名誉の負傷だ。」
「そうでしたか・・・。はは・・・、ああ、やはり、もう少し早くお会いしたかったな・・・。もしくは、婚約者の彼が従兄上の言っていたように、もう少し彼女を蔑ろにしていてくれたなら・・・。本当に、残念です。ですが、この先、もし私にチャンスがあるような時は直ぐに連絡くださいね。」
「ははは、それはどうだろうな。・・・まあ、彼次第だろうね。」
「でも、そうか・・・、だからあんな約束を・・・。」
「アーレン閣下に心酔してるってことはね、閣下と共に体を張って戦う君達騎士のことも、常に考えているってことなんだよ。 ジャスティン、いいかい?男として女性との約束は必ず守るんだよ!? そして、これは私からの命令でもあるんだからね。」
「従兄上・・・。」
「そして、約束のダンスが終わった時は、またユニーナと次のダンスの約束をしてくださいね。・・・これは、ユニーナの姉からのお願いです。」
「ははっ、これは大変だ。私は、随分と大変な約束をしてしまったってことですね・・・。私はその約束を守る為に、もっともっと強くならなくてはいけませんね。そうですか・・・その時のダンスが今から楽しみです。」
そう言ったジャスティン様が、薄っすらと涙を浮かべ、私達の立ち去った扉の方を見つめていた時、私はアレイド様に手を引かれ、休憩室の一室に押し込められるように入室したのでした。
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