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ジョナスは見てしまった

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 ヤソックとディルクの攻撃魔法の説明を受けながら第二騎士団に戻ってきたジョナスを待ち受けていたものは、魔獣討伐に向かった夫が怪我をして医務室に運ばれたという悪い知らせだった。
幸い怪我の方は仲間の回復魔法によって治療済みとのことであったが、怪我をした際に頭を強く打ったようで意識が戻らないというものだった。

「ジョナス!」

真っ青になったジョナスは、落ち着いてと叫ぶヤソックの制止を無視して慌てて駆け出した。

(怪我は治療されているから大丈夫。だから絶対死なない。意識がないのは頭を打ったから・・・もし頭に異常があるならそれも魔法で治るはず。だから、だから絶対大丈夫)

走りながら心の中で何度も大丈夫と唱える。 しかし、その言葉の後には、ならどうして意識が戻らないの!?と続いてしまう。

(やだ、こわい、やだやだ・・・こわい、こわいよ・・・ロステル)

自分の恐ろしい考えを振り切るようにジョナスは走った。



しかし・・・、勢いよく医務室のドアを開け放ったジョナスが目にしたものは―――



ベッドの上で知らない女性を抱き寄せている夫の姿であった。


「・・・ロス、テル」

乱れた呼吸、震えるジョナスの声に反応したのは、寝ているロステルに抱きしめられている女性の方であった。横目でジョナスを見た彼女は一瞬驚いたように目を見開いたが直ぐに口元に笑みを浮かべると、その唇をロステルに近づけて行く。


「やめて!!」


ジョナスの大きな声に一番身体をビクつかせたのは、女性の頭を抱えて唇を合わせる寸前であったロステルだった。
目を見開き、こちらを凝視しているロステルが信じられないとでもいうような驚愕の表情でジョナスを見ている。

なにがどうしてこうなっているのかジョナスには分からなかった。
戦闘中に夫は怪我をして意識を失った。そして、それをあの女性騎士が助けたのだろうか・・・。妻である自分を見て勝ち誇ったように笑うあの女性は、ロステルにキスを贈られるほど感謝される人なのだろうか。

それとも・・・それが当たり前の関係なのか・・・。

彼女が・・・夫と噂になっている女性。

理解できない頭の中で、一つだけはっきりと分かったことがある。
それは、

自分にはこの状況が耐えられないということだ。

震える肩に手を置かれていたことにも気づかなかったジョナスは、抱き合う二人に文句一つ言えずにその場から逃げ出した。

後ろから自分を呼ぶ声が聞こえる。しかし考えることを放棄したジョナスには、半狂乱になって妻の名を叫ぶ夫の気持ちなんて理解することはできなかった。
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