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王都

認識

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宿を出た二人は、露屋台や店を見てまわった。
街の中の女性がユリウスに視線をやり、マリを見てクスッと笑い、ユリウスの腕取り胸に押し付けたり、マリ中傷などを繰り返され、ウンザリとしていた。

「チッ!」

盛大に舌打ちすると不可視化を使っているネージュを見てからマリを見た。

「なるべくお前の前で使わないようにしてたが、認識阻害使う」

「どうぞー?何で使ってなかったの?」

「……認識できなくなって何かあると困る」

「指輪あるからどこにいるかはわかるよー?」

アーロンからもらった魔道具の指輪に既に血を垂らし、お互いの魔力を登録してある。そのため場所だけは意識すれば分かる。

「ああ、なるほど」

何かを理解したのか納得した顔になるとグイッとマリを路地裏の奥に押し込むように連れて行く。

「認識阻害は取り込んだことのある血の中にある魔力の持ち主はその人物の認識阻害は無効される」

「え?そうなの?」

不思議そうに首を傾げたマリにユリウスも首を少し傾げた。

「教会で説明されなかったか?」

「行ったことない」

目を見開いたユリウスはため息を付き項垂れるように首を振った。

「女神教えてもらった?」

「ううん、自分で見れるよー?」

「は?」

「え?」

マリの答えにユリウスの低い声でピクリと肩が跳ねたが、グシャっと頭を撫でされた。

「みんな見れないの?」

「洗礼で教えてもらうのが基本。鑑定スキルの持ち主がいたとしても勝手に教えるのは御法度。人に鑑定スキルを使っていけないという決まりはないが、神官や司祭などから教わらないのは女神への冒涜」

「マジ?」

青ざめたマリはユリウスを見る。ガリガリと頭を掻いたユリウスは呆れに近いため息をついた。

「……転生させられて森の中で生きてちゃそうなるか…」

マリの秘密を知っているので洗礼を受けていない理由に納得した様子だ。

「王都についたらアルヴィン殿下に相談して王都の教会で洗礼を受けよう。うまく口添えしてもらえれば、尋問されない、と思う」

恐ろしい言葉が出てきてギョッとしたマリはイヤイヤと首を振る。

「まあ、変な動きしたらオレが報告するし、お前も気づくだろう。あいつらが持っている同業者や情報機関なんて王族や上級階級が抱えている奴らに比べたら格下だからな」

そう言っても痛いの嫌ー!

マリの心を読んだのか、クスッと笑う。

「女神が目をかけている人に尋問してみろそれこそこと冒涜だ。それに、国の有益者に下手に手を出せば問題視される。教会は政治に関わらないのが原則」

ユリウスがいうには教会の中には貴族出身が多く、上層部はほとんど貴族が占めている。
政治などは王侯貴族が行うが、教会に入った貴族はその権限は剥奪されている。

教会に入った貴族は問題行動を起こし家から出家させられた者たちだ。

破門と同義の扱いだが破門にして問題を起こされると困る。貴族の身分のまま教会へ入り、規律の厳しいが、世話役をつけられ不自由なく暮らせるらしい。

「その人たちの暮らしのお金って信徒の人たちからの献金とかでしょー?」

「あとは聖水を売った時のお金か治療代とかだな」

とは言えそこで暮らしている人は貴族でなくてもそのお金で生活をする。どの過ぎた贅沢をしなければ問題にならない……目を瞑るという認識だ。

「変な動きしたら俺が潰す」

「素直に安心していいかわかんなーい」

貼り付けた笑みで答えたマリの手を取りいつの間にか手に持っていたナイフで薄く切り付けた。

「話はそれだが、一度体内に取り込んで仕舞えば認識はできる」

ペロリとジワリも浮き出るように出てきた血を舐めとると一瞬ユリウスの周りが水色に輝いた。

一人頷いたユリウスは今度は自分自身の指を切り付けマリに差し出した。

戸惑ってユリウスの目を見ると拒否ができるような雰囲気ではなかった。

おずおずとなめとると、体に染み渡るような感覚になった。
ユリウスの時とは違い黄色に輝くと染み渡る感覚も消えた。

「よし。これでお互い認識できるな」

「お腹減った」

「あーはいはい、じゃあ、食べに行くか」

路地から出た二人はお腹を満たすために大通りへ戻った。

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