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不良くんは一途に愛し続ける!
不良くんと誠実
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蒼汰が白雪の何処に惹かれたのか、告白を受けても真意は読めない。まるで風のようにのらりくらりと、掴もうとした手から滑り逃げていく。
それでも蒼汰の愛情は嘘ではない――彼と過ごした時間が物語っていた。言葉通り、彼は弱音ばかり吐いている白雪を裏切らなかった。傍に居続けた。
あの星が美しい夜。
家まで送り届けた彼は、出てきた白雪の親と対峙して、事情を説明した。自分が連れ出したのだと虚言まで使って、怒った母親から庇ったのである。
当然、母親は鬼の形相で蒼汰を責め立てた。「だからあなたのような子と関わらせたくなかったのよ!」彼女なりの、母としての正義を振りかざす姿に迷いはない。
普通なら母の心配を素直に受け取った上で、彼の誤解を解くべきなのだろう。しかし母の奥底にある偏見と思い込み、なにより白雪の意見は一切聞き入れないのを、知っている。
かっと全身が熱くなり、口は勝手に動き出す。根こそぎ冷静さを失った白雪が「私が呼んだ」と叫んでも止まらず。
それでも蒼汰は、黙って頭を下げ続けた。喧嘩っ早い彼が、反論しなかった。
どうして。
頭を下げる姿など初めて見た。彼はいつだって自信に満ちあふれていて、誰かの上に立つような人間だったはずだ。何故言われるがままなのか。
白雪が問うと、彼は何てことのないような平然と当然と語った。
「お前が嫌がるだろ」
「……え」
「お前は、あの母親が好きなんだろ。好きな人間が言い合っている姿なんて誰だって見たくねぇ。それに」
一呼吸置いて、蒼汰は遠くを見つめた。遠い昔をなぞるように、ゆったりと、まるで口からこぼれるように呟いた。
「親は、子を心配するのが普通だ。俺みたいな人間が近づけば、そりゃ心配する。確かにお前の母親は間違っている部分もある。だが、正しいこともある」
だから俺は反論できない。しない。したくない。
子を心配するのが、普通。
その言葉を、他の誰でもない蒼汰に言わせた事実に白雪は目が熱くなり、じわりと視界がにじんでいった。出来損ないの水彩画のような世界で、白雪はただただ彼の手を握りしめる。
そうするしか、そんなことしか白雪にはできなかった。
十分だ。
もう十分すぎるほどに、彼に誠実さを教えて貰った。
本当に白雪を裏切らず、守ろうとしているのだと痛いほどに伝わった。彼を信頼し、自分の中に芽生えた感情を受け入れるのに躊躇いはなくなった。
「……さむい」
空き教室に行く階段をのぼりきり、息を整える。
目を閉じて、昨日の光景を鮮明に思い出す。蒼汰の言葉を心の中で復唱して己を鼓舞した。決して忘れぬよう、大切にしまい込んで瞼をあげる。
そっと頭へ手を伸ばせば、しゃらんと音を立てる髪飾り。月から星が幾つも垂れて、きらめき揺れる美しい装飾品だった。
ピアスの代わりだと笑っていた顔を思い出して、じわりと暖かさが染み渡る。
学校も、先生も、親も。全部大嫌いなのは変わらない。歩む足の重さも依然と辛い。
それでも、雨の垣間から覗く柔らかな日差しのような、淡い優しさが傍にある。背中を押すでもなく、照らしてくれる。
それさえ。
「その髪飾り、可愛いね!」
――太陽が、黒く覆われていく。
それでも蒼汰の愛情は嘘ではない――彼と過ごした時間が物語っていた。言葉通り、彼は弱音ばかり吐いている白雪を裏切らなかった。傍に居続けた。
あの星が美しい夜。
家まで送り届けた彼は、出てきた白雪の親と対峙して、事情を説明した。自分が連れ出したのだと虚言まで使って、怒った母親から庇ったのである。
当然、母親は鬼の形相で蒼汰を責め立てた。「だからあなたのような子と関わらせたくなかったのよ!」彼女なりの、母としての正義を振りかざす姿に迷いはない。
普通なら母の心配を素直に受け取った上で、彼の誤解を解くべきなのだろう。しかし母の奥底にある偏見と思い込み、なにより白雪の意見は一切聞き入れないのを、知っている。
かっと全身が熱くなり、口は勝手に動き出す。根こそぎ冷静さを失った白雪が「私が呼んだ」と叫んでも止まらず。
それでも蒼汰は、黙って頭を下げ続けた。喧嘩っ早い彼が、反論しなかった。
どうして。
頭を下げる姿など初めて見た。彼はいつだって自信に満ちあふれていて、誰かの上に立つような人間だったはずだ。何故言われるがままなのか。
白雪が問うと、彼は何てことのないような平然と当然と語った。
「お前が嫌がるだろ」
「……え」
「お前は、あの母親が好きなんだろ。好きな人間が言い合っている姿なんて誰だって見たくねぇ。それに」
一呼吸置いて、蒼汰は遠くを見つめた。遠い昔をなぞるように、ゆったりと、まるで口からこぼれるように呟いた。
「親は、子を心配するのが普通だ。俺みたいな人間が近づけば、そりゃ心配する。確かにお前の母親は間違っている部分もある。だが、正しいこともある」
だから俺は反論できない。しない。したくない。
子を心配するのが、普通。
その言葉を、他の誰でもない蒼汰に言わせた事実に白雪は目が熱くなり、じわりと視界がにじんでいった。出来損ないの水彩画のような世界で、白雪はただただ彼の手を握りしめる。
そうするしか、そんなことしか白雪にはできなかった。
十分だ。
もう十分すぎるほどに、彼に誠実さを教えて貰った。
本当に白雪を裏切らず、守ろうとしているのだと痛いほどに伝わった。彼を信頼し、自分の中に芽生えた感情を受け入れるのに躊躇いはなくなった。
「……さむい」
空き教室に行く階段をのぼりきり、息を整える。
目を閉じて、昨日の光景を鮮明に思い出す。蒼汰の言葉を心の中で復唱して己を鼓舞した。決して忘れぬよう、大切にしまい込んで瞼をあげる。
そっと頭へ手を伸ばせば、しゃらんと音を立てる髪飾り。月から星が幾つも垂れて、きらめき揺れる美しい装飾品だった。
ピアスの代わりだと笑っていた顔を思い出して、じわりと暖かさが染み渡る。
学校も、先生も、親も。全部大嫌いなのは変わらない。歩む足の重さも依然と辛い。
それでも、雨の垣間から覗く柔らかな日差しのような、淡い優しさが傍にある。背中を押すでもなく、照らしてくれる。
それさえ。
「その髪飾り、可愛いね!」
――太陽が、黒く覆われていく。
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