現代ダンジョンマスター

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突入

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「こちらアルファ班侵入を開始する」

「こちらベータ班侵入を開始する」


さて、モスキートは現在、アルファ班と呼称される北側突入部隊と、ベータ班と呼称される南側突入部隊と、さらには土手の近くの公園にテントがはられて設営された指揮所からの映像や音声を俺に送ってくれている。

自衛隊の作戦はドローンで内部を確認後、ダンジョンに突入するというものだ。
5名ずつに分かれた部隊が北側と南側から橋を渡り、あからさまに入り口になっている中央地点に到達後、ダンジョンゲイトにドローンを突入させる。

入り口の門はダンジョンゲイトって呼び方をすることにした。

彼らは橋を渡っている最中も何が起きるかわからないため慎重にゆっくりとゲイトに向けて銃を構えながら進んでいた。

自衛隊員の装備していたバックパックから手のひらサイズの小型のドローンが展開され、ダンジョンに侵入してくる。
ゲイトから電波の移動を遮断してもいい気もするけど、まぁ今回はよしとしよう。
内部の確認ができなければ入ってこないだろうから。

「ドローンが消えた……いや、映像は来ているな。こちら突入班、そちらの方に映像は届いていますか?」

「こちらHQ、届いている。どうやら内部は薄暗い通路のようだな。天井は高い」

「こちらでも確認出来ます。続いて突入を開始します」

「了解。実行されたし。内部では何が起こるかわからない。作戦目的を忘れないように」

彼らは交渉、まぁこんな未知の事態に対する解決の糸口を求めて突入を決行している。
なんかダンジョンマスターについて知っているっぽい雰囲気もあるが今のところ俺はそれについて把握できていない。

さてさて、これがはじめての侵入者だな。
緊張を解そうと周囲の川には鳥が飛んでいて、少数の野次馬もこちらを見ていて呑気なものである。
鳥と人間にパラサイトを寄生させとこ。

「ふむ、これが軍人というやつの動きなのか。カバーってやつがしっかりしてるねぇ。死角がない」

内部に入って来た自衛隊員達は入り組んだ通路をお互いの射線をカバーしあって探索していた。

当然室内戦の訓練とかを受けているに違いないな。
現代兵器を持った訓練された兵士を相手に真っ向から戦ったらすぐに倒されてしまうだろうな。

しばらく10名で探索していた彼らだったが今は休憩し、アルファ班とベータ班の隊長の2人が話し合っていた。

「かなり広そうですねここは。ダンジョンっていうのもあながち間違ってないのでは」

「魔物はいないようですけどね?」

「それはいない方がいいですけど、ここ廃墟とかなんですかね? 自分は廃病院とかそいうものを感じますが」

「うーん、真っ暗じゃないってことは廃墟ではないと感じましたが、どうでしょうね。水溜まりなんかもあるし、人の手が入って無さそうなんですが……その割に埃っぽくないんですよね」

「あぁ、確かにそうですね」

軍隊にしては賢い、というか結構ガタイのいいお兄さんがこんな丁寧な会話……しかもこんなダンジョンの中でしっかりと冷静に話し合って考察をしていた。

これが教育を受けた自衛隊というものなのか。
あと埃に関しては全くその通りだな、なんか作っておくんだったかな……。
ダンジョンはそういうの吸収して成長するし、この空間の気温も多分20度ぐらいの適温で空気も綺麗なんだよね……。
違和感ありまくり~って思ったけどそもそも異空間なので違和感も何もあったものじゃないが。

「ひとまず無人の空間のようで危険はなさそうですから少し分かれますか」

「そうですね。何かあれば通信を。1時間したらまたここに集合ということで」


そんな感じで分かれたわけだが、彼らはすぐに合流することになる。

「通路が変化する上に通信も繋がらなくなるなんて」

「帰り道を探しましょう」

うんうん。
懸命な判断だ。

このダンジョン内部では電波は吸収させてもらう。
近くなら通信できるが……曲がり角を曲がればほとんど無線による通信は繋がらなくなるってこと。
入り口付近では話せるがその入り口が移動したら話せなくなる。
さらに距離ができたところの通路は変化する。

彼らは帰り道を失ったわけだ。
まぁ時間をかければ帰れるはずだから大丈夫だぞ。

「やぁ! はじめまして未知の文明の人間達よ。言葉は通じるかな」

俺は迷子になった彼らに姿を見せて話しかけたのだった。
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