8 / 33
5話目 ムーンダンジョン地下へ
しおりを挟む
「おお、外では叫んだだけだったけどジャンプすると滞空時間長いなぁ、ってうわわわ」
一キロ先の扉に向けて歩くのが……いや正確にはセバスとの会話が気まずかったのでジャンプして行ったら早く着くかな、と思って僕はジャンプしたのだけれど。
月の重力は地球に比べて六分の一、その知識を実感した。
ジャンプは体重が軽くなる分、より高く飛んでしまうし、落下も遅いから空中で姿勢を崩してしまった。
「ムーン様。大丈夫ですか」
「ああ、ありがと。軽く飛ぶ感じで向かうとするよ」
すぐにセバスが助けてくれた。
その動きの機敏さは僕の比じゃない。
「あれ、セバスの人形ってアダマンタイトっていう重い金属なんだよね」
「はい、ムーン様。体重でいうと200kgはあるでしょうか」
「じゃあここだと40……いや33kgぐらいか、ここの重力はアースの六分の一だと思うからね」
「おお、そうなのですか。私の知識はアースとダンジョンについての、ほんの少し。ですから知りませんでした。道理で体が軽すぎる訳です。力を制御しないと上手く動けないので困惑しておりました」
とーん、とーん、と軽く浮遊感を楽しみながら会話すると気まずかったセバスとの会話も乗ってくる。
セバスも飛んでいる。
「はは、なるほど。それでもその動きっていうのはすごいね。って、いま思ったんだけどkgっていったけれど単位が統一されているのっておかしくない? そもそも念話とはいえ会話が出来ていることが僕には不思議なんだけど」
「ああ、それは神の力でこの世界に言葉の壁がないだけですよ。通訳が為されているのです。それに合わせて異世界の尺度とこの世界の尺度が何故か一致しているだけでございます、一部の地域ではまた違った尺度を持つ種族も少なからずあるでしょうが」
「そうなんだ。聞きづらいけど気になるから聞いちゃうんだけどセバスの前世みたいなのってあるの? どこから生まれたのか気になるんだよね」
「いいえ、ございません。いえ正確には記憶にないだけなのかもしれませんが、そういったことは考えるだけ無駄でしょう」
「そっか、そうだね。ところでその人形どう?使いやすいかな」
「大変素晴らしいものです、人形スライムを超えた何かになったような気分です。ムーン様の偉大さを感じます」
「そう良かった。でもそうおだてなくてもいいよ、執事っていうのは飴と鞭をバランス良くもってないといけないし、セバスには相談役になってもらいたいしね。えっと、言い忘れてたけどこれからよろしくね」
「おお!誠そのとうりでございます。かしこまりました。こちらこそよろしくお願いいたします」
非常に満足そうにセバスは答えた。
(うん。セバスの性格がなんとなく分かったかな、きっと執事道に生きているんだろう。確かに執事をイメージしたけれどここまで執事っぽくなるとは思わなかった)
そうして少しは仲良く慣れたような気がした僕達はダンジョンの地下に続く透明な扉の前に到着した。
普通に見ると四角い穴があるようにしか見えない。
「セバスもこのダンジョンの壁って見えるの?」
「いいえ私にはみえませんが、ムーン様の眷属でありますからムーン様のダンジョンを感じることが出来ます」
「なるほど。ああ、いいよ。今回は僕があけたいから」
セバスが扉を開けてくれようとしたので止めた。
何せ自分が考えたダンジョンだ自分で見て回りたい。
こちらも出口と同じように透明なエアロックを模した扉を二回通ったあと、穴に声をかけた。
「おーい!上がってきてー」
少しすると水色のスライムに覆われた四角い箱が上ってきた。
「これは人形スライムですか」
セバスが驚いたように言う。
人形スライムはスライムが殻に籠った種族で一般的にはそれが人形だから人形スライムと呼ばれているんだけど殻の形は何でもいいらしい。
ということでエレベーター型の殻を作ってそれをスライムに操らせればいいと思ったんだ。
エレベーター型人形スライム「エレベ君」だ。
お値段50万なり。
四角い箱を二つ使っている。
外側にある四角い箱にあいた所々の穴はスライムが出てくるところである。
あそこからスライムが出てきて月の砂でできた穴の壁蹴って箱を動かす。
箱に機動力を持たせたかったけれど三倍くらいスライムの値段が変わってしまうから断念した。
多分人形じゃない殻を操る能力が高いスライムは高価なんだと思う。
そもそも眷属を使いたくなかったんだけどこっちの方が安かった。
でもセバスを作ったことに後悔はない。
この世界にステータスはない。
だから性能もわからないけれど。
50万もかけたからきっとちゃんとしているはず……大半が中の椅子やらに使ったけど。
「そうだよ、人形スライムだよ。セバスには嫌悪感とかあるかな」
エレべ君には知性はないはず。
機械のようなもので僕や眷属の言うことに従うようにイメージした。
「いえいえ、ユニークな眷属で素晴らしいと思います」
「そっか、そうだよね、良かった。まぁさっさと地下に行こうか。よろしくエレべ君」
眷属虐待ー! とかそんな馬鹿みたいな話になったらどうしようかと思ったよ。
エレベ君の中には各壁に3つづつの、合わせて9つの椅子が固定されていた。
シートベルト(仮)つきであり昔のエレベーターさながら扉がない。
明かりは座席の上と下の壁に周囲の魔力に反応してぼんやり光るという光石というものが埋め込んである。
座り込み、シートベルトを付けて僕は言う。
「エレべ君、おりていいよ」
すると扉がない部分を水色の半透明なスライムが覆い、エレべ君は多分壁を上手く蹴り、落下を始める。
半透明の向こう側には月の砂でできた壁が見えるから落ちているのが分かる。
「ここ、これはすごいなぁ」
急速なふわっとした感覚を受けながら急速に900メートル落ちていく。
しばらくするとスライムが減速をかけたのか揺れを感じながら抑えつけられるような感覚を受けた。
「すこしGが強かった。エレべ君今度は少し遅くなってもいいからもう少し優しくしてくれ」
了解です-という意識が伝わってきた。
席を立ち透明じゃないエアロックモドキを潜り抜けて地下フロアに足を踏み入れた。
高さ約800メートルの広大な空間が広がった。
うん、地下は特に何も作ってないんだ。
広げただけだ。
円柱も立っているし、地下貯水槽みたいな感じだ。
等間隔に配置した光石のおかげで神殿のような厳かな雰囲気になったように思いたい。
僕はこの雰囲気大好きだ。
フロア名は神殿フロアならぬ増築予定フロアかな……
一キロ先の扉に向けて歩くのが……いや正確にはセバスとの会話が気まずかったのでジャンプして行ったら早く着くかな、と思って僕はジャンプしたのだけれど。
月の重力は地球に比べて六分の一、その知識を実感した。
ジャンプは体重が軽くなる分、より高く飛んでしまうし、落下も遅いから空中で姿勢を崩してしまった。
「ムーン様。大丈夫ですか」
「ああ、ありがと。軽く飛ぶ感じで向かうとするよ」
すぐにセバスが助けてくれた。
その動きの機敏さは僕の比じゃない。
「あれ、セバスの人形ってアダマンタイトっていう重い金属なんだよね」
「はい、ムーン様。体重でいうと200kgはあるでしょうか」
「じゃあここだと40……いや33kgぐらいか、ここの重力はアースの六分の一だと思うからね」
「おお、そうなのですか。私の知識はアースとダンジョンについての、ほんの少し。ですから知りませんでした。道理で体が軽すぎる訳です。力を制御しないと上手く動けないので困惑しておりました」
とーん、とーん、と軽く浮遊感を楽しみながら会話すると気まずかったセバスとの会話も乗ってくる。
セバスも飛んでいる。
「はは、なるほど。それでもその動きっていうのはすごいね。って、いま思ったんだけどkgっていったけれど単位が統一されているのっておかしくない? そもそも念話とはいえ会話が出来ていることが僕には不思議なんだけど」
「ああ、それは神の力でこの世界に言葉の壁がないだけですよ。通訳が為されているのです。それに合わせて異世界の尺度とこの世界の尺度が何故か一致しているだけでございます、一部の地域ではまた違った尺度を持つ種族も少なからずあるでしょうが」
「そうなんだ。聞きづらいけど気になるから聞いちゃうんだけどセバスの前世みたいなのってあるの? どこから生まれたのか気になるんだよね」
「いいえ、ございません。いえ正確には記憶にないだけなのかもしれませんが、そういったことは考えるだけ無駄でしょう」
「そっか、そうだね。ところでその人形どう?使いやすいかな」
「大変素晴らしいものです、人形スライムを超えた何かになったような気分です。ムーン様の偉大さを感じます」
「そう良かった。でもそうおだてなくてもいいよ、執事っていうのは飴と鞭をバランス良くもってないといけないし、セバスには相談役になってもらいたいしね。えっと、言い忘れてたけどこれからよろしくね」
「おお!誠そのとうりでございます。かしこまりました。こちらこそよろしくお願いいたします」
非常に満足そうにセバスは答えた。
(うん。セバスの性格がなんとなく分かったかな、きっと執事道に生きているんだろう。確かに執事をイメージしたけれどここまで執事っぽくなるとは思わなかった)
そうして少しは仲良く慣れたような気がした僕達はダンジョンの地下に続く透明な扉の前に到着した。
普通に見ると四角い穴があるようにしか見えない。
「セバスもこのダンジョンの壁って見えるの?」
「いいえ私にはみえませんが、ムーン様の眷属でありますからムーン様のダンジョンを感じることが出来ます」
「なるほど。ああ、いいよ。今回は僕があけたいから」
セバスが扉を開けてくれようとしたので止めた。
何せ自分が考えたダンジョンだ自分で見て回りたい。
こちらも出口と同じように透明なエアロックを模した扉を二回通ったあと、穴に声をかけた。
「おーい!上がってきてー」
少しすると水色のスライムに覆われた四角い箱が上ってきた。
「これは人形スライムですか」
セバスが驚いたように言う。
人形スライムはスライムが殻に籠った種族で一般的にはそれが人形だから人形スライムと呼ばれているんだけど殻の形は何でもいいらしい。
ということでエレベーター型の殻を作ってそれをスライムに操らせればいいと思ったんだ。
エレベーター型人形スライム「エレベ君」だ。
お値段50万なり。
四角い箱を二つ使っている。
外側にある四角い箱にあいた所々の穴はスライムが出てくるところである。
あそこからスライムが出てきて月の砂でできた穴の壁蹴って箱を動かす。
箱に機動力を持たせたかったけれど三倍くらいスライムの値段が変わってしまうから断念した。
多分人形じゃない殻を操る能力が高いスライムは高価なんだと思う。
そもそも眷属を使いたくなかったんだけどこっちの方が安かった。
でもセバスを作ったことに後悔はない。
この世界にステータスはない。
だから性能もわからないけれど。
50万もかけたからきっとちゃんとしているはず……大半が中の椅子やらに使ったけど。
「そうだよ、人形スライムだよ。セバスには嫌悪感とかあるかな」
エレべ君には知性はないはず。
機械のようなもので僕や眷属の言うことに従うようにイメージした。
「いえいえ、ユニークな眷属で素晴らしいと思います」
「そっか、そうだよね、良かった。まぁさっさと地下に行こうか。よろしくエレべ君」
眷属虐待ー! とかそんな馬鹿みたいな話になったらどうしようかと思ったよ。
エレベ君の中には各壁に3つづつの、合わせて9つの椅子が固定されていた。
シートベルト(仮)つきであり昔のエレベーターさながら扉がない。
明かりは座席の上と下の壁に周囲の魔力に反応してぼんやり光るという光石というものが埋め込んである。
座り込み、シートベルトを付けて僕は言う。
「エレべ君、おりていいよ」
すると扉がない部分を水色の半透明なスライムが覆い、エレべ君は多分壁を上手く蹴り、落下を始める。
半透明の向こう側には月の砂でできた壁が見えるから落ちているのが分かる。
「ここ、これはすごいなぁ」
急速なふわっとした感覚を受けながら急速に900メートル落ちていく。
しばらくするとスライムが減速をかけたのか揺れを感じながら抑えつけられるような感覚を受けた。
「すこしGが強かった。エレべ君今度は少し遅くなってもいいからもう少し優しくしてくれ」
了解です-という意識が伝わってきた。
席を立ち透明じゃないエアロックモドキを潜り抜けて地下フロアに足を踏み入れた。
高さ約800メートルの広大な空間が広がった。
うん、地下は特に何も作ってないんだ。
広げただけだ。
円柱も立っているし、地下貯水槽みたいな感じだ。
等間隔に配置した光石のおかげで神殿のような厳かな雰囲気になったように思いたい。
僕はこの雰囲気大好きだ。
フロア名は神殿フロアならぬ増築予定フロアかな……
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。


まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。

オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

こんな展開知りません!
水姫
恋愛
これは予想外な展開です。
会場に入ってから突然自分が悪役令嬢だと気づいた。必死に回避する方法を模索する矢先。
「あれ?展開早すぎませんか?」
「えっ?濡れ衣...」
王子の思惑とは。
気分が悪くなったら引き返してください。凄くご都合主義です。
不定期更新になると思いますが、6千文字くらいを予定しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる