ムーンダンジョンのマスターは支援できるか

7576

文字の大きさ
上 下
32 / 33

第22話 3人で話し合う

しおりを挟む
会議を終えた僕はダンジョン内の見回りをして、ユウジとイクオと話し合う事にした。

「これはムーン様! 軌道計算完了してます。チェックも抜かりありません! これが完了すればついにアースに手が届きます」

「トレント、それはまだだよ。アース、ムーン間の友人輸送艦は出来てないし、転移門を配置したってDPの都合で使えるのは緊急時だけだからね。でも着実に進んでるよ。この調子だね。まだ用事は終わってないから、終わってから話そう。僕は司令室に行くね」

僕は死人だ。
何もできずアースを見守るつもりだけれど力を磨くのをやめる気はない。
引きこもるために、このムーンを選んだんだ。
誰にも邪魔できないように体制を整えるつもりだ。

それに宇宙戦艦とか宇宙空母とかドローン船とか惑星間航行船とか次元潜航艇とか作りたいもん。
この世界は魔法があるんだ。
生命がある星だって多そうだよ。
世界はこのアースただ一つだけじゃないはずさ。
考えるだけでワクワクしてくるね。

後者の理由が8割、僕が宇宙に出ようとしてる原因だ。

「は、はい! 流石我らダンジョンマスターを拾っていただいたお方です!研究班は発射準備完了しております。ムーン様の発射命令をいまかいまかと待っております!」

「はいはい、わかったわかった。まだ転移門の実験がしっかりと終わってないからそれからで頼むよ」

ムーン軌道上からアース軌道上へ潜るとと移動できる門の試作機を作っている。
人がギリギリ通れるぐらいの小型だけど成功すれば小型の衛星を簡単に送れるようになる。
門と衛星のランデブーは大変な事に変わりはないけど……。

ちなみにベクトルと速度差の補正やら宇宙空間に耐えられるような眷属を生み出すのは僕1人の力では不可能だった。

マクシオンと彼らダンジョンマスターのおかげである。
今話しかけてきた彼の名はトレント。
研究に殆どのDPを注ぎ込む変人と言うのがこのムーンに来るまでの彼の評判だった。
今は僕の宇宙開発計画の強力な味方になってくれている。

まぁまだ成功するかはわからないけどね。

何度でも挑戦する気でいる。
会議でも使った通信衛星の投入も失敗の連続だったし。

僕のダンジョンはこの一年で大きく進歩した。
語り尽くすにはとても時間が足りない。
追々説明できたらいいのだけれど。

まぁ大きな変化を上げていくとまずはこうして他のダンジョンマスターを配下にした事だろうか。
アースには宇宙に興味があってその探究にDPのほとんどを費やしていた小さなダンジョンマスター達がいた。

変わり者達だね。
よく生き残ってたと思う。

そこに僕と言う格好の存在がいたわけで……接触してきた彼らは危険なアースから離れてここに来たがった。

まぁここにも危険の一つであるハイエルフはくるけどね……。

だから僕はそれを受け入れた。
安全は魔法契約で縛れば大丈夫だと思ってね。

彼らがいなければ通信衛星はこんな簡単にアースに展開できなかった。

マクシオンの転移とDPのゴリ押しで無理やり軌道に乗せる手はあっただろう。
そもそも魔法の浮力を使えば軌道に乗せる必要もなく浮かせ続ければいいだけだ。
けどそれこそ魔力の無駄が多すぎたんだよね。

宇宙空間は思った以上に厳しい環境でそこで耐える人形スライムがさらに浮き続けるなんて原子炉君を使っても中々完成しそうにはないよ。
戦艦クラスの大型なら可能かもしれないけど、まだまだそんな大きなものを作れるノウハウの蓄積なんてものがない。

作ってもすぐに見落としてた何かで巨大な戦艦が亡くなったら目も当てられないよ。

次に司令室、僕が今向かっているところだ。
地下最深部に設けた、原子炉君の近く、ピラミッドの近くである。

ここにいるのは全長50メートルはある巨大なスライム、そしてそのスライムが操る多数のモニターがある司令室だ。
もし有事になったらオペレーター君達を使って指揮を取れるように生み出している。
まぁそんな有事が起きる予定は今のところない。
ここは異世界だし、マクシオンが転移してきたようにいきなり別世界とかから怪物がなだれ込んできたりするかもしれないし……ないな。

一言でざっくり言うとただのロマン部屋かな、ゲンドウポーズで座ったりするための部屋。

ちゃんと言うと、司令室とわかる通り僕のダンジョンやダンジョンの外の眷属と通信を行う部屋だ。

あぁ、ダンジョンから外と通信する用のアンテナが展望フロアの上に立ってるよ。

ホテルでお楽しみ中の最中の映像だったり、魔法のショーを見てる観客だったり、マスターバトルの試合だったり、また転移で攻めてきたハイエルフがマクシオンの罠に引っかかって真空に投げ出されて死んでる映像だったり、アース上空からの撮影映像だったり、色々見れる。
まぁマスターである僕は司令室無くても観れるけど……。

あぁ……今、ハイエルフが死んだね。
ハイエルフの死体がダンジョンの外で月面を跳ねてるよ。

後で回収しとこう。

ハイエルフが転移してくるのは一月に一回ほどだ。
マクシオン曰くここまで送られてくるのは罪人だけらしいけど、それにしては頻度多い。
それにたまに刀で武装した人も来るから罪人だけの気もしない。
残念ながらハイエルフとの会話は毎回成り立たない。

ちなみに刀は日本を思い出すから別のところで飾ってある。

まぁハイエルフには情報収集という概念はないらしい。
毎回宇宙的、いやムーン的な初見殺しの罠でサヨナラだ。
真空を味わえるのはアースの外にあるここぐらいだからね。
でも警戒は怠らないよ。

話を戻してこの司令室だ。
ダンジョン内の映像やら眷属が送ってきた映像は意識すれば僕はいつでも見れるんだけど外注したほうが少し楽だ。

そして眺めているのが楽しい。
だからこそのこの司令君である。

あとはそうだな、僕のダンジョンの従業員は全員に小型の腕輪型人形スライムの通信君を身につけさせている。

ハイエルフがやってきた時とかお客様とのトラブルとかが起きたら他のお客様に隠れて通信して対処できるようになっている。
ここからそう言う指示も飛ばせる。
ダンジョンマスターにそういうのあまり必要ないけどね。
ダンジョンではダンジョンマスターは念じれば大抵の事はなんでもできるから。

司令室ははっきり言ってロマン部屋だね。
展望室といい、僕はロマンしか追い求めてないけど四人だから仕方ないね。

こんな感じでこの一年であったことを少しだけ振り返りながら僕は司令室に到着した。

「確かに、俺たちダンジョンマスターはムーンのこのダンジョンを見てわかる通り、なんでも出来るって言ってもいいだろう。でもだからって俺たちがこの星を支配できるなんて思い上がりにも程がある、俺はそう思うぞ。俺たちはまだ一年しかこの世界にいないし、ただの学生だったんだぜ。ずっと黙ってた2人はどうなんだよ」 

イクオが僕が入って部屋に入ってすぐにそう言ってきた。

司令室にイクオとユウジをアースから呼んでおいたのだ。
一年もあればこのぐらいの余裕はある。
もちろん今は司令室のモニターの映像は殆ど表示されてない、さっきの会議の様子だけは録画されたものが表示されていたが。

あんな会議じゃ、僕は不安になるものだよ。
会議の結果はケンジが最初に言った力による支配に落ち着いた。
他の提案が出なかったとも言う。
そして第二回は実現可能なプランを持ち寄る事になった。

「あの自称神様はコントロールして欲しいと言っていたのに、力で支配だなんてね。ずいぶん直球だよね」

僕はすんなりと言葉が口から出た。

画面に表示されているケンジを横目で見ながら2人に僕はそう言った。

「そうそう、異世界人も良い奴らなんだから彼らを支配するなんてな。それにそんなことしたら怖がられて俺の異世界ハーレムの夢も遠のく」

「イクオはまだそれ目指してるんだ……」

「俺の周りの異世界人は喋るペンギンやらホッキョクグマだぞ! それはそれで可愛いけどよ、どっかの誰かみたいに美少女ウサミミの可愛い獣人娘にチヤホヤされたいんだぜ……」

笑いながらイクオはユウジを見た。

「ところで話を戻すがやっぱりムーンもイクオもそう思っていたのか。そう思うならあの場で何か言うべきだったと俺は思うぞ」

ウサミミの種族を救い、他にも数種の種族を救い未だ戦い続けていてさらには現役国王にもなっている疲れた顔したユウジは僕とイクオにそう言った。

「露骨に話を変えやがった……」

「どっちが話題を変えたんだが、俺は話を戻しただけだ」

そんな返事にイクオは何かを察したのか突っかかるのをやめていた。

「おう、まぁそうだな。会議の話の方が大事ではあるよな。ムーン、なんでこの時言わなかった。俺はまぁ……わかるだろ」

司令室の映像はケンジが力で支配しようと言っていたところだった。

僕は2人から詰め寄られる。

なんでも何も、何か言っても無駄そうだったからだ。
僕にはみんなを説得できる自信がなかった。

「僕もケンジと同じだよ。それでユージは? ユージも思ってたんでしょ」

「お、そうだよな。ユージもどうして言わなかったんだ。俺たち2人は黙るタイプだけどよ、ユージはこういう時何か言うやつだろ。あの神様にも言うぐらいなんだから」

そうそう、イクオの言う通りだ。
あの自称神様にも突っかかるほどの男が何か言うと僕も思ってたよ。

「わかった。俺か、俺の考えは……まだうまく言えないんだが、俺はこの会議に来て、このムーンのダンジョンに来て、ここに来る前は、異世界を一つの世界として見てたんだが、それが世界は一つじゃないんだなって思ったし、思わされた。だから黙ってた……」

「どういうこと?」

僕達はユウジの考えを聞く。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

自由気ままな生活に憧れまったりライフを満喫します

りまり
ファンタジー
がんじがらめの貴族の生活はおさらばして心機一転まったりライフを満喫します。 もちろん生活のためには働きますよ。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

処理中です...