ムーンダンジョンのマスターは支援できるか

7576

文字の大きさ
上 下
27 / 33

18話目 戦闘終了後

しおりを挟む
俺のダンジョンは無事2つの国から守られた。
防衛戦で難民の4分の1ほどがさらに亡くなってしまったが数倍にも及ぶ兵士を相手に善戦出来た方だろう……DPがその分増えた。

彼らの犠牲を無駄にはしない。

「あの数からこのダンジョンをよく守れたね。すごいと思うよ。それにこんな見た目だけでも立派なダンジョンを生まれたばかりの子が生み出すなんてね」

俺たちが苦労して戦っていた軍隊を一瞬で倒した相手がそう言う。
彼女はムーンの眷属であるセバスを倒したあとすぐに彼を担ぎながら俺の目の前に来た。

「地下への入り口が見つからずに済んだのが大きいでしょうね。彼らは雑魚なのでしょう?」

あっという間にこの地下に、俺の目の前にきたあなたとは違ってとは言わないが。

「まぁ、だだの兵士だからね。アカネならいくら集まっても倒せるかな。彼らにとっても使い捨てられるものだろうし、見てたでしょ?」

見ていたさ、それも気づかれてるのか。
眷属の天使族の能力を使ってこの地下にいながら外を見る事が出来た。
武者鎧に天使に2つの種類の眷属を生み出せる事は俺の大きなアドバンテージなのだろう。

だがあの強そうなムーンのセバスが手も足も出ていなかったなんてな。
眷属に期待しすぎてはいけないのかもしれない。

「俺の友人の眷属を殺さずにいてくれてありがとうございます。アカネさんと呼べばいいでしょうか」

セバスは俺の眷属である天使に治療を受けている。
魔力を纏った攻撃を受けると気絶する事があるらしい。

「アカネでいいと思うよ。それにそんな硬くならないでいいよ。君の名前は?」

「ユージだ」

自己紹介も終わったところで本題を切り出してきた。

「そう、ユージだね。さっそくだけどわたし達の仲間になってほしい。私達はアバタルといってこの世界を支配したいの。だから異世界の知識はとっても重要」

いきなり世界征服ときた。
それに他のクラスメイト達も加わっているらしい。
確かにあの力ある存在は世界をコントロール、支配せよと言っていたが。

「他のみんなも? それに支配?」

「うん、20人くらいかな。セイトカイだなんて言ってるね。今は契約でマーケットに書き込めないようにしてあるから連絡はつかないと思うけど。理由は契約しないと話せないよ。嫌なら敵にならないでいてくれればいいけど」

「契約?」

「魔法でお互いの行動を縛るの、マーケットみたいなものだと思ってくれればいいかな。返事を聞かせてほしいな」

マーケットのようなものか。

「敵になる事はないだろう。生徒会と話をして内容次第であれば仲間になってもいい。だが契約をする気は無い」

すぐに決められるわけがない。
生徒会なんて名乗って何をする気なのか。
クラスメイトの顔を思い浮かべて俺は少しこの先の大変さに頭が少し痛くなった。

「なら、それでいいかな。あんまり刺激しちゃダメだって言われてるし。また会えるといいんだけど、ムーンの方はアカネ達からも言っておくから心配しないでね。バイバイ」

あっという間にアカネは去っていった。

「あっという間だったな。他の2人になんと伝えるか……生徒会か」

「はいですぅ。怖かったですぅ」

今まで黙ってるというか眷属の武者鎧の陰に隠れていたルピスがそう言う。

「まぁ、これで一応は君たちを守れたのかな」

「ありがとうございますです! ユウジ様!!」

「あとはムーンが何と言うかだな」


一方ムーンでは。

「いやー、転送陣ってすごいね」

地面に描かれた魔法陣に向かって僕はそう言った。
これのおかげでエレベ君を新たに生み出す必要はなさそうだった。

「それほどでも、またいつ私のようなものが来るかわかりませんからその対策も兼ねて」

ハイエルフに備えての妨害も兼ねているらしい。
彼らが来れるのは転送陣の上のみになったらしい。
マクシオンは彼らの転移の妨害もやってくれるようだ。

それが本当なら対策が取りやすくなる。

「助かるよ」

「異世界の知識に比べればこのぐらいはしますよ」

うんうん、頼もしい仲間だね。
知識を交換した僕達は殺しあったとは思えないほど仲が良くなっていた。
エルフの宗教やこの世界における強さの階級について少し詳しくなって気になることが増えたけどそれについてはまた今度だ。
それにエルフ側の知識は大分脚色されているようだったしね。

「それは?」

そう問われたので僕は返事をする。

「お祈りかな。神様なんているかどうかもわからない存在だったけど一応魔法もない元の世界でもそういうのはあったから、死んだ眷属達にね」

「今思うと申し訳ないです。私も祈ります」

手を合わせてくれた。
眷属はだったら殺すなと思っているだろうか。

「ありがとう、マクシオン」



「さて、壊されたものはより良く作り直すだけだね」

僕は新たに眷属を生み出していく。
兵士改ウェイト君である。
接客プラス警備もできるようにしてある。
泥人形ではなく関節人形だ。
強さは人間の兵士級だね。

マクシオンが言うにはこの世界の強さは下から国民級、兵士級、英雄級、軍団級、伝説級、国家級、世界級、神話級となっているらしい。

まぁそんな事を聞いてもこの世界はまだまだよくわからないことだらけだ。
困った時にネットで検索なんて出来ないし、魔法やらダンジョンやらファンタジー世界があのアースで勝手に動いているのだ。
核シェルターに引きこもっていたいよ。


なんて考えながらバーフロアにちょっとした個室をつくる。
談話室かな?
ここで仲良くなったダンジョンマスター同士が話す時にあると便利だと思ったんだ。
周囲に会話を聞かれたくない場合もあるだろうしね。

そしてマーケットに、このダンジョンで話した内容を聞いた場合も僕は他者に絶対に漏らさないと誓う事を書いておく。
マクシオンとの戦いでダンジョン内であれば色々知覚できる事に気付いてしまったからね。

実は漏らさないだけで僕はここに来るダンジョンマスターから色々盗み聞ける事を楽しみにしているよ。
マクシオンの件で情報不足をひしひしと感じたからね。

なんて事をしていると、セバスが帰ってくる前にアバタルのノバが展望フロアにやってきた。

なんとノバはアバタルとかいう世界征服を目論む団体の諜報員みたいな感じだったらしい。
彼女の言う世界征服の為の仲間探しやらクラメイトが何人か集まっているという生徒会の話にも驚いたけど。
話の本題は謝罪だった。

公然と世界征服を企むと宣言した上で謝罪とは一体。
敵が多そうなグループである。
なんだか自滅しそうだなと思ったしエリアスが言ってくれたダンジョンマスターが貶めあっているという話も本当なんだろうね。
今度お礼か何かをあの僕を神様だと思ってるらしい美少女狂信者には言っておこう。

ノバの話を聞いて、セバスが死んでたかもしれないと思うと一瞬ダークな気持ちになったけれど、そう簡単に僕は怒らない。

「本当に申し訳ないと思うなら僕達に戦い方を、あと情報を教えてほしい。ダメだというならそれでも構わないけれど、こちらに被害がないうちは敵対する気は無いとも改めて言っておく」

でも、怒ったふりをするのは有効だと思う。
こう言う時は強気で行かないとね。

「わかりました。ムーン様の温情に感謝いたします」

本当に通るとは思わなかった。
ノバとはもう少しじっくり話す必要があるね。
生徒会について、世界の支配とは、そもそもダンジョンマスターやハイマスターとは一体。
気になることが多い。
注意が必要そうだがこれまたエルフとは違った話が聞けるだろう。

「それなら許せそうだ。ではもう少し話をしよう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

自由気ままな生活に憧れまったりライフを満喫します

りまり
ファンタジー
がんじがらめの貴族の生活はおさらばして心機一転まったりライフを満喫します。 もちろん生活のためには働きますよ。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

こんな展開知りません!

水姫
恋愛
これは予想外な展開です。 会場に入ってから突然自分が悪役令嬢だと気づいた。必死に回避する方法を模索する矢先。 「あれ?展開早すぎませんか?」 「えっ?濡れ衣...」 王子の思惑とは。 気分が悪くなったら引き返してください。凄くご都合主義です。 不定期更新になると思いますが、6千文字くらいを予定しています。

処理中です...