ムーンダンジョンのマスターは支援できるか

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15話目 友好的コミュニケーション

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「これで話ができますね」

目の前のハイエルフ、マクシオンはそう言った。

僕は今展望台フロアに移動させられて魔法陣やら光って浮かぶ文字列やらこの光り輝く縄とやら全く未知の方法で体を拘束されていた。

僕の体は心臓だけの状態から回復して、白く光り輝く縄のようなもので体を拘束されている。
毛虫のように這うぐらいはできそうだな。

マクシオンは堂々と椅子に座っている。

「そうだね。僕としてもマクシオン、あなたと話が出来て嬉しいよ。このまま殺されるのかと思った」

地を這う毛虫状態でも気を強く持つほかない。

心臓だけの時の感覚と体が再生する感覚は言葉にできないゾッとする感覚だった。

でもまだ死んでない。
僕を殺す気は今のところないようだ。

「ではお尋ねします。ここはどこですかそれにあれは?」

そう言ってマクシオンはアースを指差す。

「アースだよ。ここはムーンだって言っただろう」

「そうですかそうですか。これらは幻影ではないと言いますか。あそこに浮かぶ球体がアースとでも言うのですか。あの太陽が動いている訳じゃないと?」

どうやらアレだね。
マクシオンは天動説の方らしい。
僕は地動説を必死に説明した。
学校の授業をもうちょっと真面目に受けてれば良かったかもしれない。

「おかしいですね、アースも動いてるとしたならば星の観察結果に矛盾が生じますよ」

「太陽の周りを回る星達の円の運動でどうにか説明できないかな?」

僕にはそういった計算なんかできないけれど天動説もしっかりした説だったと歴史の先生が言っていたから。
そう簡単には地動説を信じてくれないとは思うけれど僕は必死に説明した。

「まぁいいでしょう。異端の書物にもそう書かれていましたからね。悪魔の子がそう言うのも納得できます」

悪魔の子だとか言われ続けるから、僕は人間を殺してなんていない事、消えた人たちは他のダンジョンマスターである事も説明した。
魔力がどうのこうのと言われたけれど多分ここにこれるほどDPに余裕のある人たちはマクシオンでも勝てないんじゃないかなと言った。

魔法に関して訓練すれば封印にも抗えるんでしょと言うとマクシオンは納得したようだった。

ついでに僕はDPに関する事やダンジョンマスターに関してわかっている事を話した。
マクシオンはどこか間違った知識を持っているようだったから。
それに関して僕は知りたいところだ。

話しているうちにマクシオンからの敵意は無くなっていった。

「話を聞いておいてよかった。連合はやはり間違っている可能性があると言う事ですか……」
 
このまま殺されたくはないな。

「もうなんだったらここの外に出てみればいいじゃないか。外は真空でほんの数秒であなたは死ぬだろうから。それで少しは宇宙とか重力とかを実感できるんじゃないのかな。それに僕はあなたを歓迎するよ。このダンジョンでその連合の過ちというものを考えたらどう? いずれアースに帰る手段も考えるしさ。僕を殺してここから帰れるの?」

マクシオンの言う転送術式とやらは外にも出れるらしいから見えない壁に弾かれる事はないでしょ。
なんだったら入口に転送されてきてくれればこうならずに済んだのにと思うけれど。
ニューク君の近くに来なくてよかったと思うべきかな。

「魔玉、あなたの心臓を使えば帰れますが。帰ったところで結末は見えていますからね……あなたの話が本当ならばいいのですが」

「本当だよ。マクシオン、君の言う追い出されたと言うことが本当だとしたら僕の仲間になってくれると嬉しいのだけれど、連合についても知りたいし」

マクシオンは理性的だと思う。
こうして僕を殺さずに話を聞いて来るのだから。
てっきり罵り合いにでもなって殺されるのかと思ったけれどこうして話をすることができた。
彼は信頼できると思う。

「いいでしょう。では魔術契約をしましょうか、お互いが嘘をつかない限り、お互いに危害を加えられないという契約を結びましょうか。嘘をついてない側は相手、およびその眷属を傷つけられません。私の場合はハイエルフという事になるのでしょうがもう私は追い出されたも同然なので私だけですが。手荒な真似をしてしまった事は謝罪します。あなたが悪魔の子かどうかは保留ですね」

「わかった。それで頼むよ。後でいいから悪魔の子とは何か教えてください」

実質僕が嘘をつけなくなるだけだけれどこれで彼に殺されずに済むか。

「これで契約は結ばれました。といってもダンジョンマスターにこの術式が効くかもわかりませんがね」

契約といってもただ体の一部を触れあわせて契約に同意するだけだった。
マクシオンが触ってきただけだしね。
僕はまだ毛虫状態である。

「では確かめに行きますか」

マクシオンが魔法陣を書いてから外の扉に向かい始めた。

「二重扉だからちゃんと閉めてから行ってくださいよ!」

そう僕は言ったけれど中の扉を閉めずに外の扉をあけて中の空気事吹っ飛んだマクシオンは気絶して転送魔法陣に帰ってきた。

気絶したおかげで僕の拘束が解けたのでダンジョンマスターの力で扉を閉めて椅子に座りなおした。
内開きでも自然に閉まりはしなかったのはダンジョンだからなのか設計が悪いのか。
設計が悪いんだろうなぁ。
二重扉のどちらか一方だけ開けられるような魔法を付与しておこう。
空気だけ通さない壁?
そんな高い維持費払えない。

「ふぅ~ひと段落かな」

紅茶味のスライムを生み出して食べる。
美味しい。

お客様はまた来てくれるかな。
ニューク君がいるからまぁ来なくてもなんとかなりそうではあるけれど。
マーケットで早めに報告しておこうか。

『脱走したハイエルフが仲間になりました。ハイエルフの話は50万DPで!というのは冗談で…』

「流石に明るすぎるかな」

『というわけでして無事です。お客様の皆様には大変不快な思いをさせて申し訳ありませんでした。次回は無料にさせていただきます。これからどんどん新たな施設を増やそうと考えておりますのでお楽しみに』

「これでいいかな」

そうだ、目が覚めたらマクシオンには異世界味のスライムを味わってもらうかな。
異世界の話もしてあげよう。
信じてはくれないだろうけれど。
きっと興味があるに違いない。

さてさて、セバスはどうしているだろうか。
僕は一人アースを眺めた。
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