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12話目 ムーン上空へ
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「たーまーやー」
僕は上空の赤い閃光を見ながらそう呟いた。
合掌。
「これで18回目の失敗かー」
「お客様には大変好評のようですが」
「そう、ならよかったね」
まぁそれはそうだ。
次第に目的が月の上空に眷属を打ち上げることよりも美しい花火を作る事になったんだから。
安い人形の体が推進の際の爆発と振動やら宇宙空間の厳しさに耐えられるわけがなかった。
宇宙アメーバとかいそうなんだけど、宇宙に耐えられるスライムは生み出せなかった。
それが人形スライムの限界なのかな。
「ロケット式だと眷属の体が持たないなー、高くなるけどやっぱりガチガチの魔法式かな。僕に天体物理学なんてわからなくて落ちながら回り続けるのにどのくらいの速度がいるかなんてさっぱりだし、浮遊する宇宙服もどきでニューク君をエンジンがわりにすれば安上がりに行けそう……っと」
その前にニューク君をもう何体か作らないといけないか。
ニューク君を増やしておけばいくらでも実験ができるようになるしな。
もっとDPが欲しい。
内心焦っている。
イクオから話を聞いたからね。
それに月にいる間に核戦争でも始まってそれを眺める羽目にはなりたくない。
うーん悲観的。
「どうかされましたか」
「いや、花火君は色々な種類を今後作っていくからそう客には伝えておいて」
「わかりました」
ロケット式は花火君と命名だね。
南無南無。
そうだ。
祭壇にお墓を作っておこう。
これから先、死なずに生きて行くためには自分の眷属はたくさん死んでいくだろうし、たくさんほかの人も殺すことになる可能性もあるわけだし。
「うん。悲しい。それでセバス、その銃の調子はどう?」
焦ると悲観的になるね。
切り替えるに限る。
セバスに、渡したリボルバーの調子を訪ねる。
「これですか、とてもいいものですねこれは……そうだ、少しみてくださいますか」
よくぞ聞いてくださいましたという雰囲気でセバスはそう言いながら薬室から弾を全て取りだした。
「う、うん?」
なぜかこの時セバスに銃の事を聞いてはいけなかった気がした。
「どうですかこれは!」
クルクルとリボルバーを回すセバス。
右手に回したと思えば左手にクルクルっと飛ばし、指先で回転させる。
「す、すごいねぇ。本来の使い方とはだいぶ違うけど」
楽しそうで何よりだけども、銃は人格を変えるのかなと思わなくもなかった。
それだけテンションが高かった。
「そ、そうですね。ですがこれなら……少し離れてみててください」
「わ、わかったよ」
そう言われて少し距離を取る。
するとセバスはどこからか手にした弾薬を空中に投げた。
「ほっ!」
リボルバーも空中に投げた。
空中でリボルバーの薬室が開き、ちょうど弾薬が入りそのままリボルバーがセバスの手に戻る。
薬室を閉じてそのままくるくると回転させる。
そして発砲。
パァンと大きな音を出してダンジョンの透明な壁に当たって弾頭は粉々になった。
ほんの少しだけ僕の持っているDPが減少する。
「ふっ!いかがですか!だいぶ使いこなせるようになったと思うのですが」
なんか違うけど凄い!
重心とかどうなってるんだ。
「凄いね! えっと、とりあえず的を作るよ」
「はい!」
その後的を作って撃ってもらったけど百発百中だった。
曲芸だけではなかったんだね。
まるで機械、アンドロイドのように正確な射撃だった。
セバスは人形だからこういうのに向いていたんだろうな。
「精密な動きができるからこれから君はロボット君だ」
とでも言おうと一瞬思った。
高いだけはあったなぁ。
ちなみに僕も的を狙って撃ったけど半分も当たらなかったよ。
曲芸の方も色々どうなってるのか教えてもらおうとしたけど人間には無理そうだったね。
としばらく銃で楽しんで、イクオから追加の弾薬も購入していると、ついにユウジから連絡がきた。
「うわ、まじか」
「はい?どうかされましか」
そう聞きながらセバスはリボルバークルクルさせていた。
完全に銃にハマってるね。
でもそれも気にならないね。
「突然だけど、セバス、君にはアースに行ってもらう」
「は、はい?」
セバスがクルクル回していたリボルバーを落とした。
ユウジからの連絡を見た僕はセバスを一時的に手放す事を決めた。
マーケット経由でセバスをレンタルするのだ。
ユウジからのメッセージにはこう書かれていた。
『ダンジョンが攻められている。助けてほしい』
「僕の友達を助けてきて、ただ最悪の場合は死なずに帰ってくること、ユウジの指示に従えばいいから。それじゃあ行ってきて」
セバスがリボルバーを拾ってそれを撫でながら答える。
「かしこ……」
転移の光に包まれてセバスはアースに行った。
ごめん焦って送ってしまったよ。
追加で弾薬とリボルバーをイクオから買って送っておこう。
「はぁー、ユウジもセバスも死なないでくれよ」
そう呟いて椅子に座った瞬間。
『きゃーーー!!』
僕のダンジョンで叫び声が上がったのがわかった。
僕は上空の赤い閃光を見ながらそう呟いた。
合掌。
「これで18回目の失敗かー」
「お客様には大変好評のようですが」
「そう、ならよかったね」
まぁそれはそうだ。
次第に目的が月の上空に眷属を打ち上げることよりも美しい花火を作る事になったんだから。
安い人形の体が推進の際の爆発と振動やら宇宙空間の厳しさに耐えられるわけがなかった。
宇宙アメーバとかいそうなんだけど、宇宙に耐えられるスライムは生み出せなかった。
それが人形スライムの限界なのかな。
「ロケット式だと眷属の体が持たないなー、高くなるけどやっぱりガチガチの魔法式かな。僕に天体物理学なんてわからなくて落ちながら回り続けるのにどのくらいの速度がいるかなんてさっぱりだし、浮遊する宇宙服もどきでニューク君をエンジンがわりにすれば安上がりに行けそう……っと」
その前にニューク君をもう何体か作らないといけないか。
ニューク君を増やしておけばいくらでも実験ができるようになるしな。
もっとDPが欲しい。
内心焦っている。
イクオから話を聞いたからね。
それに月にいる間に核戦争でも始まってそれを眺める羽目にはなりたくない。
うーん悲観的。
「どうかされましたか」
「いや、花火君は色々な種類を今後作っていくからそう客には伝えておいて」
「わかりました」
ロケット式は花火君と命名だね。
南無南無。
そうだ。
祭壇にお墓を作っておこう。
これから先、死なずに生きて行くためには自分の眷属はたくさん死んでいくだろうし、たくさんほかの人も殺すことになる可能性もあるわけだし。
「うん。悲しい。それでセバス、その銃の調子はどう?」
焦ると悲観的になるね。
切り替えるに限る。
セバスに、渡したリボルバーの調子を訪ねる。
「これですか、とてもいいものですねこれは……そうだ、少しみてくださいますか」
よくぞ聞いてくださいましたという雰囲気でセバスはそう言いながら薬室から弾を全て取りだした。
「う、うん?」
なぜかこの時セバスに銃の事を聞いてはいけなかった気がした。
「どうですかこれは!」
クルクルとリボルバーを回すセバス。
右手に回したと思えば左手にクルクルっと飛ばし、指先で回転させる。
「す、すごいねぇ。本来の使い方とはだいぶ違うけど」
楽しそうで何よりだけども、銃は人格を変えるのかなと思わなくもなかった。
それだけテンションが高かった。
「そ、そうですね。ですがこれなら……少し離れてみててください」
「わ、わかったよ」
そう言われて少し距離を取る。
するとセバスはどこからか手にした弾薬を空中に投げた。
「ほっ!」
リボルバーも空中に投げた。
空中でリボルバーの薬室が開き、ちょうど弾薬が入りそのままリボルバーがセバスの手に戻る。
薬室を閉じてそのままくるくると回転させる。
そして発砲。
パァンと大きな音を出してダンジョンの透明な壁に当たって弾頭は粉々になった。
ほんの少しだけ僕の持っているDPが減少する。
「ふっ!いかがですか!だいぶ使いこなせるようになったと思うのですが」
なんか違うけど凄い!
重心とかどうなってるんだ。
「凄いね! えっと、とりあえず的を作るよ」
「はい!」
その後的を作って撃ってもらったけど百発百中だった。
曲芸だけではなかったんだね。
まるで機械、アンドロイドのように正確な射撃だった。
セバスは人形だからこういうのに向いていたんだろうな。
「精密な動きができるからこれから君はロボット君だ」
とでも言おうと一瞬思った。
高いだけはあったなぁ。
ちなみに僕も的を狙って撃ったけど半分も当たらなかったよ。
曲芸の方も色々どうなってるのか教えてもらおうとしたけど人間には無理そうだったね。
としばらく銃で楽しんで、イクオから追加の弾薬も購入していると、ついにユウジから連絡がきた。
「うわ、まじか」
「はい?どうかされましか」
そう聞きながらセバスはリボルバークルクルさせていた。
完全に銃にハマってるね。
でもそれも気にならないね。
「突然だけど、セバス、君にはアースに行ってもらう」
「は、はい?」
セバスがクルクル回していたリボルバーを落とした。
ユウジからの連絡を見た僕はセバスを一時的に手放す事を決めた。
マーケット経由でセバスをレンタルするのだ。
ユウジからのメッセージにはこう書かれていた。
『ダンジョンが攻められている。助けてほしい』
「僕の友達を助けてきて、ただ最悪の場合は死なずに帰ってくること、ユウジの指示に従えばいいから。それじゃあ行ってきて」
セバスがリボルバーを拾ってそれを撫でながら答える。
「かしこ……」
転移の光に包まれてセバスはアースに行った。
ごめん焦って送ってしまったよ。
追加で弾薬とリボルバーをイクオから買って送っておこう。
「はぁー、ユウジもセバスも死なないでくれよ」
そう呟いて椅子に座った瞬間。
『きゃーーー!!』
僕のダンジョンで叫び声が上がったのがわかった。
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