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アバタル
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ユウジのいるグシュリナ大陸、その某所においてムーンから帰ってきた1人のダンジョンマスターがいた。
「マスターバトルに新たな風、マスターバトルトーナメントを開催予定、てーまぱーくを目指す。ですか……はぁ、てーまぱーくとは一体何なのか。なんと気楽なこと。こんなにもはやくに天上の存在達が、ああも集まっているとは。そもそも新たな者達が皆あのようであれば、いえ、それでは私たちが危険でしたか。ムーンはエルフに襲われたはずではないのですか」
当のダンジョンマスターがどのような存在かわからず、しかも言ってみれば格上達が跋扈していたムーンで、舌ったらずのかよわい演技を誰かにバラされる事もなく、なんとか任務を終えて帰ってきたノバはムーンの情報をまとめながらそう呟いた。
ノバから言ってみればムーンは今や天上人達の社交場と化していた。
傍目からみれば、生まれたばかりにしてムーンの持つ影響力はとてつもないものとなっていた。
ノバの任務は主が世界を支配する時に備え、情報収集と可能であらば仲間を増やす事だ。
「ノバ様」
そこにノバの眷属である木人形型の兵士が声をかけた。
「なんですか?」
「またセイトカイが……あと」
そこまで聞いてノバは溜息を堪えすぐに答えた。
「それは良いです。そろそろ主への報告があります、待たせなさい」
「はっ!」
眷属が去っていくのを確認してノバは目を閉じて意識を集中し魔法を発動した。
「よく来たノバよ、報告せよ」
魔法空間でその声はよく伸びて聞こえる。
ノバの前には玉座に座る男がいた。
ノバには容姿の認識が出来ず。
ただの男として認識できなかった。
周囲の空間は玉座の間と言えばいいだろうか、赤いカーペットに等間隔に並ぶ柱と松明、古臭い質素な玉座の間だった。
「はい、ハイマスター。作戦はハイマスターの計画通りに順調に進んでおります」
ノバはひざまづきそう言った。
ここは魔法空間、ハイマスターを自称する主であるダンジョンマスターの能力。
遠く離れていても会話が可能であり、両者の同意があればまるで実際に会っているかのような仮想空間をこのように構成することも可能だ。
「だが懸念事項もある」
「はい、ハイマスター。30名程いるという彼らのうち、12名を味方につけましたが、他の者たちを味方につけることには失敗しています。さらには未だ捜索中です。そしてムーンにいる一名も未だに……」
「ムーンの件、私も予想外である。耳長に襲われたようだが死にもせず生き長らえたようであるし、あのような商売をするとはな。それも異世界の知識とやらが成せるものだろうが。エリアス、ユエル、ノブナガ……私も行けるものならば行きたいものだが……まぁよい。ノバよ、ムーンはどうであった」
「辺り一面灰色の砂漠のようであり空にはアースが輝いておりました。さらには他のダンジョンマスターが多数、マスターバトルに興じておりました」
「再現せよ」
「はっ!」
ノバが気に入られた理由がこれだった。
この仮想空間はイメージ次第でいくらでも変化するが下手な場合は荒が出る。
これがノバは上手かった。
光景だけではなく五感さえも提供できた。
王城、玉座の間からムーンダンジョンへへと変化する。
「美しい、アースはあのように見えるのだな……しかもこれが異世界の味か」
手元に出現した仮想のコーンスープスライムを噛みちぎりながらそう言う。
ハイマスターを自称するダンジョンマスターは未だ現実を見ていなかった。
「む」
「どうかなさいましたか」
『もしもーしハイマスター?』
ノバには声だけが聞こえていた。
「アカネからのようだな、報告せよ」
空に向かってノバの主は言った。
『着いたのはいいけどムーンの眷属っていう黒い奴がいてさ……』
「セバスとかいうこの黒い眷属だな」
ハイマスターがノバが再現した世界に立っていたセバスに目をやる。
ノバは静かにうなづいた。
『そうそう、あー、君セバスだよね』
「直接言う子が居ますか! はっ、申し訳ありません」
「良い、気にするな。それにアカネには伝わっておらん。帰ってからアカネには伝えるのだな」
少し苦笑するノバの主。
アカネはそれに気づかずハイマスターに報告する。
『うん、そうみたい』
「任務は忘れておらぬな。敵は増やすなよ」
『うん、わかった殺しはなしね。実はちょっと殺しちゃったけど守る為だから……』
「やはりか……仕方ない。あとでノバには謝っておくようにな。任せておいた仕事に影響が出る」
『わかった。ノバには謝る』
「私が任せた任務に支障はないな?」
『うん』
「ならば私に対する謝罪は必要ないな。また報告せよ」
『はーい!』
その後ノバはアカネからムーンの眷属を気絶させたと聞き頭を抱えたのだった。
ノバはムーンへと謝罪に行く事にした。
そしてあわよくばムーンを賛同者とする為に。
「マスターバトルに新たな風、マスターバトルトーナメントを開催予定、てーまぱーくを目指す。ですか……はぁ、てーまぱーくとは一体何なのか。なんと気楽なこと。こんなにもはやくに天上の存在達が、ああも集まっているとは。そもそも新たな者達が皆あのようであれば、いえ、それでは私たちが危険でしたか。ムーンはエルフに襲われたはずではないのですか」
当のダンジョンマスターがどのような存在かわからず、しかも言ってみれば格上達が跋扈していたムーンで、舌ったらずのかよわい演技を誰かにバラされる事もなく、なんとか任務を終えて帰ってきたノバはムーンの情報をまとめながらそう呟いた。
ノバから言ってみればムーンは今や天上人達の社交場と化していた。
傍目からみれば、生まれたばかりにしてムーンの持つ影響力はとてつもないものとなっていた。
ノバの任務は主が世界を支配する時に備え、情報収集と可能であらば仲間を増やす事だ。
「ノバ様」
そこにノバの眷属である木人形型の兵士が声をかけた。
「なんですか?」
「またセイトカイが……あと」
そこまで聞いてノバは溜息を堪えすぐに答えた。
「それは良いです。そろそろ主への報告があります、待たせなさい」
「はっ!」
眷属が去っていくのを確認してノバは目を閉じて意識を集中し魔法を発動した。
「よく来たノバよ、報告せよ」
魔法空間でその声はよく伸びて聞こえる。
ノバの前には玉座に座る男がいた。
ノバには容姿の認識が出来ず。
ただの男として認識できなかった。
周囲の空間は玉座の間と言えばいいだろうか、赤いカーペットに等間隔に並ぶ柱と松明、古臭い質素な玉座の間だった。
「はい、ハイマスター。作戦はハイマスターの計画通りに順調に進んでおります」
ノバはひざまづきそう言った。
ここは魔法空間、ハイマスターを自称する主であるダンジョンマスターの能力。
遠く離れていても会話が可能であり、両者の同意があればまるで実際に会っているかのような仮想空間をこのように構成することも可能だ。
「だが懸念事項もある」
「はい、ハイマスター。30名程いるという彼らのうち、12名を味方につけましたが、他の者たちを味方につけることには失敗しています。さらには未だ捜索中です。そしてムーンにいる一名も未だに……」
「ムーンの件、私も予想外である。耳長に襲われたようだが死にもせず生き長らえたようであるし、あのような商売をするとはな。それも異世界の知識とやらが成せるものだろうが。エリアス、ユエル、ノブナガ……私も行けるものならば行きたいものだが……まぁよい。ノバよ、ムーンはどうであった」
「辺り一面灰色の砂漠のようであり空にはアースが輝いておりました。さらには他のダンジョンマスターが多数、マスターバトルに興じておりました」
「再現せよ」
「はっ!」
ノバが気に入られた理由がこれだった。
この仮想空間はイメージ次第でいくらでも変化するが下手な場合は荒が出る。
これがノバは上手かった。
光景だけではなく五感さえも提供できた。
王城、玉座の間からムーンダンジョンへへと変化する。
「美しい、アースはあのように見えるのだな……しかもこれが異世界の味か」
手元に出現した仮想のコーンスープスライムを噛みちぎりながらそう言う。
ハイマスターを自称するダンジョンマスターは未だ現実を見ていなかった。
「む」
「どうかなさいましたか」
『もしもーしハイマスター?』
ノバには声だけが聞こえていた。
「アカネからのようだな、報告せよ」
空に向かってノバの主は言った。
『着いたのはいいけどムーンの眷属っていう黒い奴がいてさ……』
「セバスとかいうこの黒い眷属だな」
ハイマスターがノバが再現した世界に立っていたセバスに目をやる。
ノバは静かにうなづいた。
『そうそう、あー、君セバスだよね』
「直接言う子が居ますか! はっ、申し訳ありません」
「良い、気にするな。それにアカネには伝わっておらん。帰ってからアカネには伝えるのだな」
少し苦笑するノバの主。
アカネはそれに気づかずハイマスターに報告する。
『うん、そうみたい』
「任務は忘れておらぬな。敵は増やすなよ」
『うん、わかった殺しはなしね。実はちょっと殺しちゃったけど守る為だから……』
「やはりか……仕方ない。あとでノバには謝っておくようにな。任せておいた仕事に影響が出る」
『わかった。ノバには謝る』
「私が任せた任務に支障はないな?」
『うん』
「ならば私に対する謝罪は必要ないな。また報告せよ」
『はーい!』
その後ノバはアカネからムーンの眷属を気絶させたと聞き頭を抱えたのだった。
ノバはムーンへと謝罪に行く事にした。
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