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第三章
死の薔薇
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5人はその青い薔薇を、『死の薔薇』と呼ぶことにした。
「あまり人間が立ち入らない植物の多い場所に、まだその死の薔薇が咲いている可能性があるというわけか……。もし今後、誰かが死の薔薇を見つけ出して、それがきっかけで動物たちの大量死が引き起こされるとしたら……。ねえ、もしかして私たちが抱いてる違和感の原因は、これじゃないだろうか?」
優莉が一層険しそうな表情でそう言った。
「動物たちの大量死……。それが俺たちの能力を歪ませているわけか……。誠志郎、その大量死する動物たちのなかには、人間も含まれてるんだろうか?」
「僕の見た過去の風景には、人間らしき生物の遺体は見当たりませんでしたが、猿のような生物の遺体は確認できました。なので恐らく我々人間も、ほかの動物たちと同様、死の薔薇の影響を受けるものと思われます」
「死の薔薇は、どのような方法で動物を死に追いやるんだろう? もしウイルスや細菌によるものなら、私の専門だから、力になれると思う。ぜひ頼ってほしいな」
「そっか! レーコさんは感染症研究の第一人者だもんね! ということは……、つまり……、他の誰かが見つけるより先に、私たちが死の薔薇を見つけて、レーコさんの研究所へと運ぶ。これだ! きっとこれが、私たちの使命なんだ!」
ようやく話がまとまってきた。俺たちなら、きっとできる。
「ねえ咲翔、君の能力で調べてみてよ。そう遠くない未来に、死の薔薇を誰かが発見しちゃうのかどうなのか。それがわかれば、対策が打てる!」
優莉にそう頼まれた。
「うん。わかった。けど、俺一人の力じゃ見えないと思うから、みんなの力を貸してほしい」
「おうよ! もちろんだぜ!」
みんなが差し伸べてくれた手の重さを右の手の甲でしっかりと受け止めながら、5人分の力で未来を見るべく、俺は目を閉じた。
やはりそこには、無限に拡大された未来空間が広がっている。
そう遠くない時期に、この未来のどこかで、誰かが死の薔薇を見つけるはずだ。一体いつ、誰が、どこで見つけるんだ……?
俺は神経を集中させ、未来空間のどこかに存在するはずの死の薔薇の姿を探し回った。
「……ん? これは……、これだ……、これだ!! 見つけた!!」
――今からおよそ3ヶ月後、坂東来世という植物学者が、高々と青い薔薇を掲げて記者会見を行っている――。
間違いない。これこそ誠志郎が言っていた、青い薔薇……、死の薔薇だ!
この植物学者によって、今から3ヶ月後に死の薔薇が見つけ出されてしまう。
けれど、それより先に俺たちが死の薔薇を見つけ出すことで、人間を含めた動物たちを、大量死から救うことができるはずだ。何としても、俺たちが先に死の薔薇を見つけ出さないといけない。
俺は自分が見た未来について、みんなに詳しく説明した。
「やっぱりそうだったのか。死の薔薇が見つけ出されてしまうのを阻止するのが私たちの役目なんだ。それで、死の薔薇はどこに咲いてるの? 外国?」優莉が身を乗り出すようにして尋ねてきた。
「いや、運が良いのか悪いのか、どうやら日本国内みたいだ」
「ほお。具体的にはどのあたり?」
「樹海だよ。青木ヶ原樹海」
「……樹海、かあ……。行ったことないなあ。入ったら二度と出て来られないとか、自殺の名所だとか、案外普通の場所だとか、いろいろ聞いたことはあるけど……」優莉が少し不安げにそう言った。
「とにかく樹海へ行ってみよう。そしてあの迷惑な植物学者よりも先に、俺たちが死の薔薇を見つけ出そう。ただ、俺たちもそれなりの用意をしていかないと。防護服とか、消毒剤とか、……具体的には何が必要なんだろう?」
「そこは私にお任せください。 最先端の装備をふんだんに持っていくので」
玲子さんが日本感染症研究所の職員の方に事情を説明してくれたおかげで、俺たちは、玲子さんをはじめとした日本感染症研究所の職員の方々の全面的な協力のもとで樹海へ行けることとなった。色々な準備や手続きなどで3週間ほどかかるらしいが、あの迷惑な学者が死の薔薇を見つけるのは3ヶ月後だから、十分間に合う。
「3週間か。結構あるけど、あっという間だろうな。私はたまに学校に行くくらいでほとんど暇だけど、みんなは何して過ごすの?」
「私は仕事だなあ。また3週間後に会いましょう!」
「わたしも仕事かなあ。そういえば本当はみんなを取材しに来たんだったけど、なんかそういう感じじゃなくなってきたし、山形さんが帰ってきてるだろうからそっちを手伝おうかな」
「僕も京都へ戻って仕事です。腕が落ちてないといいですが」
「俺は家で瞑想してるよ」
「なんじゃそりゃ。咲翔も私と同じで暇そうだな!」
ということで、3週間後に樹海へ行く約束をし、俺たち5人は一旦それぞれの生活へ戻ることとなった。
「あまり人間が立ち入らない植物の多い場所に、まだその死の薔薇が咲いている可能性があるというわけか……。もし今後、誰かが死の薔薇を見つけ出して、それがきっかけで動物たちの大量死が引き起こされるとしたら……。ねえ、もしかして私たちが抱いてる違和感の原因は、これじゃないだろうか?」
優莉が一層険しそうな表情でそう言った。
「動物たちの大量死……。それが俺たちの能力を歪ませているわけか……。誠志郎、その大量死する動物たちのなかには、人間も含まれてるんだろうか?」
「僕の見た過去の風景には、人間らしき生物の遺体は見当たりませんでしたが、猿のような生物の遺体は確認できました。なので恐らく我々人間も、ほかの動物たちと同様、死の薔薇の影響を受けるものと思われます」
「死の薔薇は、どのような方法で動物を死に追いやるんだろう? もしウイルスや細菌によるものなら、私の専門だから、力になれると思う。ぜひ頼ってほしいな」
「そっか! レーコさんは感染症研究の第一人者だもんね! ということは……、つまり……、他の誰かが見つけるより先に、私たちが死の薔薇を見つけて、レーコさんの研究所へと運ぶ。これだ! きっとこれが、私たちの使命なんだ!」
ようやく話がまとまってきた。俺たちなら、きっとできる。
「ねえ咲翔、君の能力で調べてみてよ。そう遠くない未来に、死の薔薇を誰かが発見しちゃうのかどうなのか。それがわかれば、対策が打てる!」
優莉にそう頼まれた。
「うん。わかった。けど、俺一人の力じゃ見えないと思うから、みんなの力を貸してほしい」
「おうよ! もちろんだぜ!」
みんなが差し伸べてくれた手の重さを右の手の甲でしっかりと受け止めながら、5人分の力で未来を見るべく、俺は目を閉じた。
やはりそこには、無限に拡大された未来空間が広がっている。
そう遠くない時期に、この未来のどこかで、誰かが死の薔薇を見つけるはずだ。一体いつ、誰が、どこで見つけるんだ……?
俺は神経を集中させ、未来空間のどこかに存在するはずの死の薔薇の姿を探し回った。
「……ん? これは……、これだ……、これだ!! 見つけた!!」
――今からおよそ3ヶ月後、坂東来世という植物学者が、高々と青い薔薇を掲げて記者会見を行っている――。
間違いない。これこそ誠志郎が言っていた、青い薔薇……、死の薔薇だ!
この植物学者によって、今から3ヶ月後に死の薔薇が見つけ出されてしまう。
けれど、それより先に俺たちが死の薔薇を見つけ出すことで、人間を含めた動物たちを、大量死から救うことができるはずだ。何としても、俺たちが先に死の薔薇を見つけ出さないといけない。
俺は自分が見た未来について、みんなに詳しく説明した。
「やっぱりそうだったのか。死の薔薇が見つけ出されてしまうのを阻止するのが私たちの役目なんだ。それで、死の薔薇はどこに咲いてるの? 外国?」優莉が身を乗り出すようにして尋ねてきた。
「いや、運が良いのか悪いのか、どうやら日本国内みたいだ」
「ほお。具体的にはどのあたり?」
「樹海だよ。青木ヶ原樹海」
「……樹海、かあ……。行ったことないなあ。入ったら二度と出て来られないとか、自殺の名所だとか、案外普通の場所だとか、いろいろ聞いたことはあるけど……」優莉が少し不安げにそう言った。
「とにかく樹海へ行ってみよう。そしてあの迷惑な植物学者よりも先に、俺たちが死の薔薇を見つけ出そう。ただ、俺たちもそれなりの用意をしていかないと。防護服とか、消毒剤とか、……具体的には何が必要なんだろう?」
「そこは私にお任せください。 最先端の装備をふんだんに持っていくので」
玲子さんが日本感染症研究所の職員の方に事情を説明してくれたおかげで、俺たちは、玲子さんをはじめとした日本感染症研究所の職員の方々の全面的な協力のもとで樹海へ行けることとなった。色々な準備や手続きなどで3週間ほどかかるらしいが、あの迷惑な学者が死の薔薇を見つけるのは3ヶ月後だから、十分間に合う。
「3週間か。結構あるけど、あっという間だろうな。私はたまに学校に行くくらいでほとんど暇だけど、みんなは何して過ごすの?」
「私は仕事だなあ。また3週間後に会いましょう!」
「わたしも仕事かなあ。そういえば本当はみんなを取材しに来たんだったけど、なんかそういう感じじゃなくなってきたし、山形さんが帰ってきてるだろうからそっちを手伝おうかな」
「僕も京都へ戻って仕事です。腕が落ちてないといいですが」
「俺は家で瞑想してるよ」
「なんじゃそりゃ。咲翔も私と同じで暇そうだな!」
ということで、3週間後に樹海へ行く約束をし、俺たち5人は一旦それぞれの生活へ戻ることとなった。
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