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銀河のかなたよりⅡ
その14
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「あ、レーコさん来た!」
「ごめんね~待たせちゃって。いろいろ忙しくて……」
「仕方ないよ! 私たちのために頑張ってくれてるんだもん。よし、じゃあそろそろ行こっか!」
時刻は、22時を少し過ぎたあたり。
咲翔が見た未来によると、宇宙船は午前0時頃にやって来るとのことだったので、その時間に間に合うように、5人は病院を出発した。
「宇宙船てさ、どんな感じなの? UFO?」
「いや、なんかね、赤い、蒸気機関車みたいな感じ」
「ええ!? なにそれ! めっちゃロマンチックやん!」
病院の最寄り駅へと到着した5人は、『ウエスタントーキョーモノレール』に乗り、乗換駅を目指した。
「おお、モノレール。ほんとに線路が1本しかない。よく落ちないねえ。どういう仕組みだこれは」
優莉がモノレールに大変関心を持っているようだ。
「このタイプは跨座式とよばれるものですね。他にも懸垂式とよばれる、レールに車両がぶら下がっているような形式もあって、たしか湘南や千葉のモノレールがそうだった気がします」
「へえ~。さすが誠志郎。モノレールにも詳しいんだねえ」
「いえいえ、以前千葉に住む友人から聞いたことがあったので。ただそれだけのことですよ」
「ほお~。懸垂式なんてもはや遊園地のアトラクションみたいだね。かなりのスリルがありそうや。今度乗ってみよっと!」
優莉がモノレールの情報をメモしている。
10分ほどの『やや空の旅』を終えた5人は、モノレールを降り、京王江頭線に乗り換えた。
「さっき時刻表見てみたけどさ、2時50分には電車来なかった。他の駅では来るところもあるのかなあ」
江頭線ということで、優莉がやたらと江頭2:50氏のことを意識しているようだ。
「エガちゃんてめっちゃ変なやばい奇人ていうイメージだけど、意外と優しくていい人でもあるらしいよ」
ミューがそう言った。
「あ、なんか俺も聞いたことあるそれ。けどエガちゃんはいい人とか言われたくなさそうだよね」
江頭氏のいい人エピソードなどを話していると、列車はあっという間に次の乗換駅に到着し、5人は江の急線へと乗り換えた。
「あ、これ、タマゾン川だよね」
「お! レーコさんも知ってるんだ。私は前に咲翔から聞いて知ったんだけど、やっぱり有名なの? タマゾン川」
「うん。なんか知り合いに聞いたことあって。『なんとかガー』ってのがいるんだよね」
「そうそう。アリゲーターガーっていうのがいるらしい。実際に俺が見たことあるわけではないんだけど」
「おお、やっぱりほんとにいるのか『なんちゃらガー』。やばいなあこの川」
そして列車は、咲翔のアパートの最寄り駅である『リードセルワールド前駅』に到着した。
「さあ着いた! リードセルワールド前! ……といっても、なんかさ、前に来た時にも思ったんだけど、全然リードセルワールドの雰囲気がしないよね。どっちの方向にあるの?」
「リードセルワールドは駅からバスで10分くらいかかるよ」
「え!? マジで!? 前っていうからほんとに前なんだと思ってた。10分かかるんじゃ、『やや近くにリードセルワールドがある駅』じゃん! 『リードセルワールド前(前ではない)』とか。まあ、いっか~」
電車を降りた一行は、そこから更に10分ほど歩き、目的地である咲翔のアパートへと到着した。
「へえ~。ここが咲翔の家かあ。なんかいいねえ」
ミューがアパート全体をグルグルと見回している。
「私は2回目だ。どこか少し懐かしい」
「『ハイツラルカンシエルワタナベ』? なんかすごい名前だね。バンドっぽい」
「咲翔がラルク好きだからここに住むことにしたらしいよ」
「あ、やっぱラルクが関係してるのか。そういえばさ、ラルク アン シエルってどんな意味なの?」
「フランス語で虹だよ」
「へえー! そうなんだ。かっこいいねえ! ワタナベっていうのは何? 大家さんがワタナベさんていうの?」
ミューがアパートの名前にとても興味を持っているようだ。
「いや、全然違うんだそれが。ワタナベの由来は俺もまったく知らない」
「なんだそりゃ」
時刻は、23時55分。
「もうすぐだ。さあ、そろそろ屋上へ行こう!」
誰かに見られていると困るので、念のため優莉に時間を止めてもらい、ミューの力で俺たち5人は屋上へと上がった。
「なんや。屋上っていうかただの建物の上の部分て感じやな」
「そうそう。だから普段は人が来ることはないんだ。いい条件だろ?」
「なるほど。ええやんええやん!」
時刻は、午前0時を回った。
「よし、彼らにテレパシーを送ろう! 玲子さん、彼らは今、火星にいるらしい。なので、火星へ向けてテレパシーをお願いします!」
「火星だね。わかった!」
力を増強するべく、5人は手を重ね合わせた。そして、夜空に浮かぶ赤い惑星へ向けて、玲子さんがテレパシーを送る……。
『――助けてください。地球の危機。力が必要です。あなたがた3名の――』」
「念のためにもう1回送ってみようかな。今度は少しずつに分けて送ってみるね」
『――助けてください――』
『――地球の危機――』
『――力が必要です――』
『――あなたがた、3名の――』
「これで大丈夫かな。あ、そうだ。この場所のことも伝えないと」
『――ハイツラルカンシエルワタナベの屋上――』
「『助けてください、地球の危機、力が必要です、あなたがた3名の、ハイツラルカンシエルワタナベの屋上』って送ってみたよ。日本語だけど、大丈夫かな?」
「うん。大丈夫。彼らは必ず来てくれる」
時刻は午前0時7分。もう間もなく、彼らがやって来る
「おお、なんか緊張してきたぞ。もうそうそろかな?」
「……」
「ん? 咲翔?」
咲翔の目つきが、明らかに変わった……。
「……来るよ!」
――それは、あまりにも突然だった。
その瞬間、何もない空間から、突如として赤い蒸気機関車が現れたのだ。
5人は、あっけに取られていた。あまりの衝撃に、ただ立ち尽くしていた。
この未来をあらかじめ見ていたはずの咲翔でさえも、その信じられないような光景を前に、ただ驚くことしかできなかった。
すると、機関車の扉が開き、そのなかから、人影が現れた。
地球人だと言われても、なんら不思議はない。彼らはとても地球人に似ているが、だがやはり、きっと、そうではないのだ……。
「……あなたたちですか? 我々を、呼んだのは……」
「……はい。僕たちです。皆さんの力をぜひお借りしたく、テレパシーで、皆さんをお呼びしました」
「ごめんね~待たせちゃって。いろいろ忙しくて……」
「仕方ないよ! 私たちのために頑張ってくれてるんだもん。よし、じゃあそろそろ行こっか!」
時刻は、22時を少し過ぎたあたり。
咲翔が見た未来によると、宇宙船は午前0時頃にやって来るとのことだったので、その時間に間に合うように、5人は病院を出発した。
「宇宙船てさ、どんな感じなの? UFO?」
「いや、なんかね、赤い、蒸気機関車みたいな感じ」
「ええ!? なにそれ! めっちゃロマンチックやん!」
病院の最寄り駅へと到着した5人は、『ウエスタントーキョーモノレール』に乗り、乗換駅を目指した。
「おお、モノレール。ほんとに線路が1本しかない。よく落ちないねえ。どういう仕組みだこれは」
優莉がモノレールに大変関心を持っているようだ。
「このタイプは跨座式とよばれるものですね。他にも懸垂式とよばれる、レールに車両がぶら下がっているような形式もあって、たしか湘南や千葉のモノレールがそうだった気がします」
「へえ~。さすが誠志郎。モノレールにも詳しいんだねえ」
「いえいえ、以前千葉に住む友人から聞いたことがあったので。ただそれだけのことですよ」
「ほお~。懸垂式なんてもはや遊園地のアトラクションみたいだね。かなりのスリルがありそうや。今度乗ってみよっと!」
優莉がモノレールの情報をメモしている。
10分ほどの『やや空の旅』を終えた5人は、モノレールを降り、京王江頭線に乗り換えた。
「さっき時刻表見てみたけどさ、2時50分には電車来なかった。他の駅では来るところもあるのかなあ」
江頭線ということで、優莉がやたらと江頭2:50氏のことを意識しているようだ。
「エガちゃんてめっちゃ変なやばい奇人ていうイメージだけど、意外と優しくていい人でもあるらしいよ」
ミューがそう言った。
「あ、なんか俺も聞いたことあるそれ。けどエガちゃんはいい人とか言われたくなさそうだよね」
江頭氏のいい人エピソードなどを話していると、列車はあっという間に次の乗換駅に到着し、5人は江の急線へと乗り換えた。
「あ、これ、タマゾン川だよね」
「お! レーコさんも知ってるんだ。私は前に咲翔から聞いて知ったんだけど、やっぱり有名なの? タマゾン川」
「うん。なんか知り合いに聞いたことあって。『なんとかガー』ってのがいるんだよね」
「そうそう。アリゲーターガーっていうのがいるらしい。実際に俺が見たことあるわけではないんだけど」
「おお、やっぱりほんとにいるのか『なんちゃらガー』。やばいなあこの川」
そして列車は、咲翔のアパートの最寄り駅である『リードセルワールド前駅』に到着した。
「さあ着いた! リードセルワールド前! ……といっても、なんかさ、前に来た時にも思ったんだけど、全然リードセルワールドの雰囲気がしないよね。どっちの方向にあるの?」
「リードセルワールドは駅からバスで10分くらいかかるよ」
「え!? マジで!? 前っていうからほんとに前なんだと思ってた。10分かかるんじゃ、『やや近くにリードセルワールドがある駅』じゃん! 『リードセルワールド前(前ではない)』とか。まあ、いっか~」
電車を降りた一行は、そこから更に10分ほど歩き、目的地である咲翔のアパートへと到着した。
「へえ~。ここが咲翔の家かあ。なんかいいねえ」
ミューがアパート全体をグルグルと見回している。
「私は2回目だ。どこか少し懐かしい」
「『ハイツラルカンシエルワタナベ』? なんかすごい名前だね。バンドっぽい」
「咲翔がラルク好きだからここに住むことにしたらしいよ」
「あ、やっぱラルクが関係してるのか。そういえばさ、ラルク アン シエルってどんな意味なの?」
「フランス語で虹だよ」
「へえー! そうなんだ。かっこいいねえ! ワタナベっていうのは何? 大家さんがワタナベさんていうの?」
ミューがアパートの名前にとても興味を持っているようだ。
「いや、全然違うんだそれが。ワタナベの由来は俺もまったく知らない」
「なんだそりゃ」
時刻は、23時55分。
「もうすぐだ。さあ、そろそろ屋上へ行こう!」
誰かに見られていると困るので、念のため優莉に時間を止めてもらい、ミューの力で俺たち5人は屋上へと上がった。
「なんや。屋上っていうかただの建物の上の部分て感じやな」
「そうそう。だから普段は人が来ることはないんだ。いい条件だろ?」
「なるほど。ええやんええやん!」
時刻は、午前0時を回った。
「よし、彼らにテレパシーを送ろう! 玲子さん、彼らは今、火星にいるらしい。なので、火星へ向けてテレパシーをお願いします!」
「火星だね。わかった!」
力を増強するべく、5人は手を重ね合わせた。そして、夜空に浮かぶ赤い惑星へ向けて、玲子さんがテレパシーを送る……。
『――助けてください。地球の危機。力が必要です。あなたがた3名の――』」
「念のためにもう1回送ってみようかな。今度は少しずつに分けて送ってみるね」
『――助けてください――』
『――地球の危機――』
『――力が必要です――』
『――あなたがた、3名の――』
「これで大丈夫かな。あ、そうだ。この場所のことも伝えないと」
『――ハイツラルカンシエルワタナベの屋上――』
「『助けてください、地球の危機、力が必要です、あなたがた3名の、ハイツラルカンシエルワタナベの屋上』って送ってみたよ。日本語だけど、大丈夫かな?」
「うん。大丈夫。彼らは必ず来てくれる」
時刻は午前0時7分。もう間もなく、彼らがやって来る
「おお、なんか緊張してきたぞ。もうそうそろかな?」
「……」
「ん? 咲翔?」
咲翔の目つきが、明らかに変わった……。
「……来るよ!」
――それは、あまりにも突然だった。
その瞬間、何もない空間から、突如として赤い蒸気機関車が現れたのだ。
5人は、あっけに取られていた。あまりの衝撃に、ただ立ち尽くしていた。
この未来をあらかじめ見ていたはずの咲翔でさえも、その信じられないような光景を前に、ただ驚くことしかできなかった。
すると、機関車の扉が開き、そのなかから、人影が現れた。
地球人だと言われても、なんら不思議はない。彼らはとても地球人に似ているが、だがやはり、きっと、そうではないのだ……。
「……あなたたちですか? 我々を、呼んだのは……」
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