銀河のかなたより

羽月蒔ノ零

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とある銀河のとある星より

女神

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 とある銀河のとある星、『イソピア』

 子供たちが森で遊んでいたところ、そのうちの一人が、『あるもの』を泉に落としてしまった。

「ああ! 落としちゃった!」
「もう~ドジだなあ~」

 すると、泉のなかから何者かが現れて言った。

「あなたが落としたのは、金の斧ですか? 銀の斧ですか?」

「……え?」
「え、いや、金と銀、どちらですか?」
「いや、その……、オノって、なんですか?」
「斧というのは、木を切る道具のことですが……」
「ええ? 木を切る!? 何それ!?」
 子供たちはキャハハと無邪気に笑い出した。

「木を切るなんて、そんなこと絶対にしないよ。そもそも、なんで木を切ったりするの?」
「それは……、家を建てたり、燃料にしたり……」
「……? それって、何万年も前の話じゃないの?」


「僕が落としたのはね、アルマグフティっていうものなんです」
「アルマグ……なんですかそれは?」

「んー、簡単に言うと、何でもできる装置って感じかな。本当に、何でもできるんだ。これがあれば、空も飛べるし、水の中でも暮らせるし、家を建てることもできるし……、多分、できないことなんてひとつもないと思う」
「はあ。なるほど」
「アルマグフティはどんな環境にも耐えられるから、落としたとしても平気なんだ。持ち主から離れると、自動的に戻ってくるから。あ、ほら!」

 すると、泉の底から、何かが上がってきた。それは魚が泳ぐように、小鳥が空を飛ぶように、少年の手の中へと戻っていった。

「こんな感じに。あなたは、アルマグフティ持ってないの?」
「ええ。私は持っておりません」
「えー!? ほんとうに!? 持った方がいいよ! 費用はかからないから!」
「ええ。考えてみます。どうもありがとう」
「それじゃあね!」

 
「はあ……。ここしばらく斧が落ちてこないと思ったら……。この星の文明も、いつの間にかここまで進歩していたなんて。アルマグフティ、私も買ってみようかしら。できれば金のアルマグフティと銀のアルマグフティを……、いや、もうそんな時代じゃ、ないのかもしれないな。……引っ越そう。どこか別の、まだ文明が発展途上にある星へ……」


 その夜、森の中から夜空へ飛び立つ、謎の光が見えたそうな。
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