上 下
16 / 67
悪役令嬢は悪徳商人に囲われる

6

しおりを挟む
 レアード夫妻の夜は長い。


「ああ…っ、あ…、あ……っ」


夜毎ヴィンセントの手練で蕩けさせられて、メイヴィスの蜜口はなんなくヴィンセントの雄を咥えることができるようになった。

けれど狭い蜜壺に大きな熱杭をすべて飲み込むことはいまだ叶わず、少しずつ熱を深めて、奥を拡張しているところだ。
ヴィンセントは雄をすべて収めることに拘っていなかった。それよりメイヴィスを悦ばせることに重点を置いていて、時々それがひどく憎たらしい。


「あう…っ、あっ……ヴィンス…!ヴィンス!」


正面からメイヴィスを抱いて、ぐちゅぐちゅと大きなものが出入りする。浅いところを何度も擦られてメイヴィスは腰を震わせた。
気持ちいい。気持ちいいのに腹の奥底が疼く。

もっと深くにほしいと思っても「まだだめだ」と窘められる。

はじめてのときにわがままを言ってヴィンセントにも苦しい思いをさせてしまったことを反省しているメイヴィスは、渋々と頷いた。


「く……っ」


とぷりとメイヴィスの狭い蜜口に精が溢れる。
ヴィンセントはどんなに浅くても必ずメイヴィスの中に吐精した。それが愛おしくもあり、じれったくもある。物足りなさそうなメイヴィスに、ヴィンセントは「かわいい」と喜んだ。


濡れた身体を清めて裸のままベッドに横になると、すぐに大きな身体に抱き竦められた。

「冷えてしまうよ」

それから二人でシーツにくるまる。メイヴィスはヴィンセントの胸に頬を寄せて目を細めた。高い体温が心地いい。

メイヴェルの細い肢体を腕の中に閉じ込めて、ヴィンセントも満足そうに息を吐く。細い腰を引き寄せて密やかに笑った。


「奥じゃなくても、こうも毎回中に出していたら孕んでしまうかな」

「え……?」

「うん?いや、可能性の話だよ」


ヴィンセントとしては軽い冗談のつもりだったが、顔を上げたメイヴィスがひどく驚いていたから「大丈夫」とその背中をとんとんリズムよく叩く。


「大丈夫だよ、私たちは夫婦なんだから」

「ヴィンス…わたくし、御子は……」


メイヴィスは唇を引き結んで、甘えるようにヴィンセントの胸にすり寄った。


「メイヴィス?」

「ごめんなさい。なんでもないの」


首を横に振って顔を伏せる。
その晩、メイヴィスの身体はやけに冷えて、ヴィンセントは何度も抱き締め直した。



***
メイヴィスは朝からぼんやりしていた。
いつもだったら夫婦は大体同じタイミングで目覚めるが、ヴィンセントが動き出してもメイヴィスはベッドの上でぼうっとしていた。

朝食も進みが悪く、ヴィンセントが出掛ける際も、いつもだったらなにを言われずとも玄関先まで出てくるのに、今日はマヤに声をかけられて慌てて追いかけてくる。

ヴィンセントは心配そうに顔を顰めた。


「調子が悪いのか?昨日は寒かったようだから風邪をひいてしまったかな」

ヴィンセントの大きな手がメイヴィスの頬を撫で、首筋に触れる。何度か手を当て直して「熱はないようだが」と首を捻る。

「マヤ」

「承知致しました」

ヴィンセントの声にマヤは一礼を返した。


「さあ奥様、今日は室内で過ごしましょうね。冷えないよう膝掛けをどうぞ」

「もう、大袈裟よ」


ソファーに座ると膝にブランケットを掛けられ動けなくなってしまう。メイヴィスはくすくす笑って編みかけのレースに手を取る。
けれど。

編んで、目を飛ばして、解いて、編んで、解いて、解いて――ついに手を止めてしまった。


「奥様?」

メイヴィスはよれた絹糸を細い指でぼんやりと手繰っている。

「メル様?」

顔を上げたメイヴィスは真っ青だった。マヤは驚いて駆け寄る。


「メル様!?どうしました?どこかお辛いところが?」

「マヤ…」


細い肩に手を置き、全身に目を走らせる。
メイヴィスはくしゃりと顔を歪めて、ぽろぽろっと涙の粒を落とした。

「マヤ…どうしましょう、わたくし…っ、わたくし……!」

突然泣き出したメイヴィスを、マヤはその胸で包むように抱き締めた。


「――マヤ、メルの様子はどうだ?」


昼過ぎ、ヴィンセントが屋敷に戻ってきた。メイヴィスの具合が気になって仕事を抜けてきたのだ。

「一度調子を崩されまして、いまはお眠りになっています」

「やはりか…」

朝から様子がおかしかった。風邪を引いてしまったんだろう。
難しい顔をするヴィンセントからコートを預かったマヤは、もっと難しい顔をしていた。


「……旦那様、少しよろしいでしょうか」


人払いをしたヴィンセントの書斎で向き合う。


「旦那様。わたしは下町の店での生活から数えて、半年ほどメル様のお近くにおります」

「ああ」

「その間、メル様には月のものがきていらっしゃいません」


マヤの言葉にヴィンセントは声もなく驚いた。
目があって、マヤは真剣な顔で頷く。


「女性ならば月に一度はくるものです。わたしも迂闊でした。高貴な女性は薬を使っているのかと思っていましたので。けれど、世継ぎを求められるような女性が、わざわざ薬で止めるなどありえないのです」

「……そうだな」

「話を聞いたところ、メル様は以前から不定期だったようです。長く間が空いてしまうこともよくあったそうで、それで…」


腕を組んだヴィンセントは書斎机に重心を預けて目を閉じた。マヤはその正面に立ち、心痛な面持ちで続けた。


「メル様は『自分に子は望めない』と泣いていらっしゃいました。なにか言いましたか?」


ヴィンセントは顔を手で覆う。


「…すまない」

「その御心は是非メル様へどうぞ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜

四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」 度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。 事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。 しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。 楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。 その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。 ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。 その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。 敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。 それから、3年が経ったある日。 日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。 「私は若佐先生の事を何も知らない」 このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。 目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。 ❄︎ ※他サイトにも掲載しています。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

何故婚約解消してくれないのか分かりません

yumemidori
恋愛
結婚まで後2年。 なんとかサーシャを手に入れようとあれこれ使って仕掛けていくが全然振り向いてくれない日々、ある1人の人物の登場で歯車が回り出す、、、

逃がす気は更々ない

恋愛
前世、友人に勧められた小説の世界に転生した。それも、病に苦しむ皇太子を見捨て侯爵家を追放されたリナリア=ヘヴンズゲートに。 リナリアの末路を知っているが故に皇太子の病を癒せる花を手に入れても聖域に留まり、神官であり管理者でもあるユナンと過ごそうと思っていたのだが……。 ※なろうさんにも公開中。

竜の手綱を握るには 〜不遇の姫が冷酷無情の竜王陛下の寵妃となるまで〜

hyakka
恋愛
罪の子として、皇国で虐げられ続けた姫は…… ある日、前世の記憶が蘇り、ここが小説の世界だと気づきます。 おまけに自分が、小説の序盤で斬り殺され、大陸戦争の小さなきっかけとなった端役だということも……。 運命を変えようと必死に抵抗するも虚しく、魔物討伐の見返りとして、竜人族の支配する王国に送られた姫は…… 物語の通りに老王に斬り殺されることもなく、なぜか、竜王に溺愛されて……。 やがて、彼女を慕う騎士に拐われて……幼少の頃から、彼女に非道の限りを尽くしてきた皇太子も加わって……それぞれ、持てる知略・権力・能力を最大限奮って彼女を囲い込もうとします。 そんな大変な目に遭いながらも……必死に足掻き続けて……やがて最後には、彼女自身で『幸せ』を掴み取るお話しです。 ⚫️ 儚げで弱そうに見えるけど、芯は強くて優しいヒロイン。 普段は凶暴だけど、ヒロインには純デレで激甘なヒーロー。 外面は優等生だけど、ヒロインにはドSで残忍!なヤンデレサブキャラを、1人称濃いめ心理描写で描いていきたいです。 ⚫️ 08- までは『世界観』 『伏線』 『過去のトラウマ』などでデレ要素不足します;; 09- から『竜王様登場』で、『姫と竜王の出会いの伏線回収』。 『デレ』 は第3章{竜王編}から 『ヤンデレ』は第4章{騎士編}{皇太子編}からです。 ⚫️ ヤンデレ不足解消用に自分都合に綴っていた箇所が多く、また初めての執筆のため、不慣れな点がありましたら申し訳ありません。 ⚫️ どうぞ宜しくお願い申し上げます。

処理中です...