恋愛パーソナリティ!

睦月

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6.友は語る

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 自販機で飲み物を買っていたら神田さんに絡まれた僕。

「話したいのは山々なんだけど、神田さんお昼ご飯食べた?」

「むぅ、ちょっとだけ話そうよ。話し終わったら食べる」

「そうなんだ。じゃあちょっとだけ話そうか」

 そう言うと僕は財布を仕舞った。心の壁を無視してグイグイくるな。

「何の用でもないんだが、私は今まで異性に全く興味がなくてな。それがこの間駅でコウさんを見てからどうもおかしい」

「それ僕じゃなくてマサルじゃない? 実際オジサン抑えてたのマサルだし」

「小原君にもお礼を言った時に少し話したが、特別何も感じなかった。もちろん感謝はしてるがな。少年よ。こういうのは理屈じゃないんだよ」

 急にそんなこと言われてもリアクションに困ってしまう。てかタメじゃん。

「それで僕がどんな奴か知りたいと。でも何もない陰キャだと思うんだけど」

 自虐的に笑ってみせた。

「そういう表面的なところじゃないんだよ。もっとその人の本質を私は見てるつもりだ。そんなに卑屈になることないさ! もっと私と話してくれるだけでいいんだ」

 神田さんは真顔だった。目を思わず逸してしまった。なんて真っ直ぐな言葉なのだろう。

「わかったよ。また、話そう。タケルとマサルを待たせてる」

「そういうことは早く言ってよ! 友達は大事にしなさいね」

 じゃっまたね、と神田さんは去っていった。嵐の様な子である。
 去り際の笑顔が偽りなのか社交辞令なのか、はたまた本物なのか。僕は少し鼓動が速くなった。


 教室に戻るともう二人は食べ終わっていた。特に気を遣って待っていてくれたりしないところが一緒に居て楽でもある。

「遅くなった。いただきます」

 僕はお弁当箱の蓋を開けていただきますした。

「遅かったな。どこの自販機まで行ってたんだ? 俺の知らない自販機がまだこの学校にはあるのか?」

 タケルが笑いながら冗談を言う。今日は機嫌が良いみたい。

「ごめんごめん。色々喋ってた。腹減った~」

 タケルの冗談に頬がゆるむ。そしてなんとかお昼休み間際に食べ終わるのだった。


 土曜日になり、僕は朝から電車に乗った。部活の為学校に行く、のではない。そもそも部活どうしようかな。タケルの家にお泊りさせてもらうのだ。

 スマホの地図のお陰でタケルの家に着いた。周りは山に囲まれているが、家の前は大きな国道だ。近くにはコンビニとファミレスがあるだけである。

 スマホで着いたよ、と連絡を入れてからチャイムを押す。こんにちは、とタケル母が出迎えてくれた。

「お邪魔します。岡田コウと申します。これ、つまらない物ですが」

「あらあら、ご丁寧にありがとうね。」

 いかにも母ちゃんといった風貌のタケル母に連れられてタケルの部屋まで案内してもらう。

「やぁやぁ待ってたよ、コウ」

 ニコニコしながらマサルが言う。もう来てたんだ。

「広い家だね。庭まである」

「まぁ田舎だからな。土地は広いかも。古い家だよ」

 大した事ない、という顔のタケル。

「お、もうやってるね。レースのやつ僕もやりたいぜ」

 そう言うと空いているコントローラーを握りしめるのだった。


 半日ほどゲームを楽しんだ後、少し休憩することになった。持ち寄ったお菓子を開けつつタケルが口を開いた。

「神田あおいとの事少し聞いてるだろ?」

 僕とマサルは顔を見合わせてからタケルを見て頷いた。

「まぁお菓子食べながらで悪いが改めて過去の話をさせてもらうよ。気になるだろうし」

 タケルはそう言うとポテチを何枚か口に入れた。

「昔から、俺は弱い者いじめが大嫌いだった。マンガやアニメのヒーローはいつも弱い者の味方だろ?」

「そうやな、確かに」

 マサルが相槌を打つ。僕もうんうんと追随した。

「うちの学校でもいじめみたいな事が起きてたんだけど、俺はその度にいじめっ子と闘ってきた。自分で言うのも何だけど、一目置かれてたと思うよ」

 タケルは懐かしそうに笑いながら言った。

「揉め事があると直ぐ飛んでった。自分のクラス以外でもな。次第に頼られる事も多くなった。あとはもう一人一目置かれてたのが神田あおいだな」

「家が道場で古武術やってるんだっけ?」

 本人が確かそう言ってたのを思い出した僕。

「聞いてるか。実戦では最強だな。神田は滅多に手は出さないが。強さとは別でカリスマ性があり人気もあった。あと、弱い者いじめが嫌いだ」

 あれ、タケルと一緒じゃん。

「俺と一緒だと思うだろ? 正解だよ。よく一緒にいじめっ子を懲らしめてたんだよ」

「それじゃあどうして?」

 マサルが真剣な顔で訊く。その顔から笑顔は消えていた。

ふぅ、と溜め息をつくタケル。そして数枚ポテチを口に入れてから咀嚼する。僕とマサルは何も言わずタケルの言葉を待った。

「ある時、クラスメイトがいじめっ子にお金を取られたと相談しに来たんだ。もちろん俺は怒っていじめっ子の所に行った。─そしたら、神田あおいがいじめっ子側についたのさ」
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