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春臣
春臣、独白
しおりを挟むこの章以降、性描写多数になります。
――――――――
体を押しのけられた。起き上がって唇を拭っている。
「もう、あんたの知ってる俺じゃないから」
自分の知っていた邦陽より男くさい男は吐き捨てるように言った。
親戚の子供がくると聞いたのは、つい3日前の事だった。留学生がいたり、会社の取引相手がいたり、いつも何だかんだいって家の中に人が滞在していたので、いつもの事と思って聞き流していた。
子どもが来ても特に気にならなかった。滞在が長期に及び、立ち去る様子が全く見られないので、遅まきながら母親に聞いてみると身内が亡くなり遠縁の我が家で引き取ることになったそうだ。
後で噂好きの親戚から子どもの母親が父親と異母兄妹で、あの子どもとは従兄弟であると聞いた。
別に興味も無かったし、そのままにしていた。
ある日、学校から帰って来て部屋に入ろうとすると廊下の影から覗いている子どもがいた。
無視して部屋で着替えてリビングに行こうとするとまだいた。
「お前さっきから何してるんだ? 」
おずおずと影から出てきた子どもは6歳くらいか。
色白で眉毛が濃く目元がはっきりしていて、顔の作りに何となく見覚えがある気がした。
身長の割に手足がひょろ長くバランスの悪さが気になった。
子どもはこっちを見て怯えているみたいだ。挙動が変だ。別に脅かした覚えもなければ、いじめた覚えもない。
一方的に怯えを抱かれるのは不本意だ。仕方なく優しい言葉をかけてみた。
「向こうで遊ぶけど来るか? 」
子どもはうなづいて付いてきた。名前は邦陽というらしい。
リビングの奥にジェンガとか積み木のバランスを取る玩具があったのを思い出した。
引っ張り出して遊んでみるが、幼児特有の不器用なのか、邦陽の番になると必ず崩壊する。
他の積みゲーをやっても同様だ。繊細さを必要とする遊びは一緒にやる遊びとして適していなかった。
遊んであげている状態にイライラした。本来だったら自分の部屋でプラモの続きを作っているのに。
表情変化が乏しい子どもは精一杯であろう小さな笑顔を向けてくる。
その健気な可愛いさみたいなものの中に、鈍さを感じてイライラした。
その後も子どもは俺の姿を見かけると追いかけてくるようになった。
期待を抱いて無言で見つめてくる。
自分が用事があるのに相手に切り出させるのは卑怯に思える。
何回かは付き合ってやったけど、実質子守だから全然楽しくない。
見かけてもこちらからは声を掛けなかった。自分のやりたい事を優先した。それでも子どもは希望を含んだきらきらした瞳で見てくる。
相手の期待通りにするのは不愉快で、なんだか妙に腹が立ってきて、向こうから避けたくなるように用事を押し付けた。
それでも俺が声をかけるだけで喜んでるのが分かる。なんで喜ぶんだよ。見ているとイライラするので出来るだけ関わらないようにしていた。
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