羽根くんと僕 編集版

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忘年会の隅っこで  小話②

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何で羽根君が気になったんだろう。
いつの間にか僕の家の食卓の輪の中にいて、父や母がテレビのスポーツ中継で二人で盛り上がっているときも、ついて行けない僕に気をつかってくれていた。


大学の研究室の仲間たちの忘年会に連れていかれた。毎年会っていて何となく顔を知ってるおじさんやお兄さんたちに囲まれてる。

子どもは僕一人。
皆、父や母の付属品の僕を子ども扱いしてまともに相手にしてくれない。


冷えたケータリングの蟹グラタンを取って会場の隅っこにいる羽根君を見つけて隣にに座る。
羽根君は「やぁ」と嬉しそうに声を掛けてくれた。

「和君、楽しんでる?」

僕は最大級のしかめっ面で答えた。 

「全然、楽しくない。早く帰りたい」 

それを聞いた羽根君はそっかーという返事をして笑っていた。


隅っこから見かける父や母はいろんな人と話をしていて楽しそうだ。
会場の隅で静かに一人座って飲んでいる羽根君が気になった。

「羽根君は楽しいの?」
「僕も和君と一緒で早く帰りたい。でもそれを言うとみんなに怒られちゃうから内緒だよ」

そう言って羽根君は少し笑った。


二人で周りのやり取りをただ眺めている。
羽根君としゃべらないでただ横にいるだけで何だか楽しかった。


静か過ぎる羽根君をよく見ると目は父の姿を追っていた。羽根君の関心が父に向いているのに気がついて僕は急に面白くなくなった。


無理矢理学校の面白い話を引っ張りだしてみた。羽根君は僕の話に耳を傾けてくれる。


羽根君の関心をもっと引きたくて父さんや母さんの変な暴露話をしていたら、いつの間にお開きになっていたのか母さんが傍に居て「余計な事を言うんじゃないの」と僕の頭を小突いてきた。

「ネグレクトで児童虐待じゃないか」

僕の抗議は羽根君にお礼を言う母さんに無視された。
「早く帰るわよ」と引っ張られ連れ去られる僕。


「またね、和君」と過激な二次会に拉致される予定をまだ知らない羽根君は、優しそうな笑顔で手を振っていた。




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