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僕の誕生(5)

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部屋の中から現れたのは、細身の優しげな面立ちの中年男性だった。俺は部屋の中に通される。

「初めまして、今日はよろしく。浴室はあっちね」

俺はそのまま示された浴室に向かい、脱衣所で持参したメイドの衣装に着替えた。


ステンレスのモダンなボウルが二つ並ぶ黒大理石の洗面台に、鏡越しに映る眩しくてきらきらしい照明。横に置かれた籠の中には有名ブランドのアメニティグッズが整然と並ぶ。


整然とつまれた重みのあるへたりのない分厚いタオルに、さすが都心の高級ホテル。田舎のラブホのゴワゴワタオルと違うと感心してしまった。


その洗面所で、見よう見真似で覚えたメイクを軽く施した。目元にラインを引くと、少し猫っぽい目になる。目尻にはほんのり紅いアイシャドーを載せてぼかしてみた。最後にピンク色のグロスで唇にツヤ感を足したら、より女の子っぽくなった。


今日は3Kのイベントで俺の女装姿を見た人の指名で、都心の高級ホテルに来ていた。社長がどうしても断れなかった案件だ。この人はどこかの偉い人らしい。


着替えて部屋に戻ると、表地に金糸の入ったベージュの花柄模様の猫脚のソファに座らされた。


グラスに入った琥珀色のお酒みたいな物を渡され飲むよう促された。流し込むと喉が焼け付くように熱く、身体がじんわりと熱を帯びてくる。思わず、ふぅっと大きく息をつく。

「熱いんじゃない?」
「熱いです」

追加で水も飲んだけれど、熱は引かず、じわじわと俺の身体を浸食してくる。胸までドキドキしてきた。うっすらと腋汗までかいている気がする。

「じゃあ、脱いじゃおうか」

罪のないような満面の笑みで、手を引かれた。

深緑のサテンのベッドライナーが掛かったベッドに誘導された。間近で見ると刺繍が施された豪華なものだとわかる。


掛布をはがしてから身体を倒された。耳元、首筋に荒く息を吹きかけられ、俺はくすぐったさに身をよじる。


男は俺の反応をつぶさに観察していた。どうやら俺の反応や仕草は、男の基準に達したみたいだ。俺に向ける視線や表情が柔らかくなる。


男は俺のフリルの付いた襟元のボタンを楽しそうに外していく。

「このボタンは硬いねぇ」

あまりにもうきうきとした様子でボタンを外してくるものだから、つい気安く声をかけてしまった。

「外すの、楽しいですか?」
「うん。脱がせた君の身体がどんな姿なのか、僕の施す愛撫で君がどんな反応をするのか、楽しみでわくわくする。明日が遠足だったら、眠れてないね」

笑う顔はおじさんのはずなのに、可愛らしい。意外と子どもっぽい人なのか。俺は少し緊張が解けた気がした。

ボタンを半分くらいと胸当てを外すと、片側の胸があらわになった。ボタンを全部外して、胸当てを取り除き、ブラウスの前身頃を開かれた。

「白い…きれいな肌をしてるね。ここなんか、カフェオレみたいだ」

男は俺の乳首をつつくと俺の上半身を眺めてから、鎖骨の辺りから胸へと、つぅっと指を這わせてきた。乳首周りを撫でまわしてから、息をのむ俺の様子を見ながら、乳首に軽く爪を立ててくる。

「あぁ…うっ」

軽いぞわぞわする刺激に混じる、甘い痛み。それはしばらく後をひいた。

生暖かい息が胸にかかる。男の顔が近づき、乳頭を舌先で触れるか触れないかのぎりぎりの所で、舐められる。触れる舌先は、熱く鋭い。

「…んっ、ふっ」

じりじりした刺激。
最近、ハルタロにいじられて感じるようになった乳首。こんなにもどかしくて切ない刺激は初めてだ。


スカートをめくられる。乳首をいじられて感じてしまった俺の半勃ちの性器が、女物の下着からはみ出ていた。

「あれ、顔出しちゃってるよ」

ぺろりと先端を舐められると、俺はさらに硬くなり、ますます突出してしまう。男は面白がって舌先でぺろぺろと舐め続けている。

レースをふんだんに使った下着は、俺の先走りで濡れていた。引っかかる性器を外しながら脱ぐと透明な糸を引いていた。





俺は容赦なく責め立てられた。舌でアナル周りを舐められた。熱い舌がにゅるにゅりと這いまわり、俺はじりじりとしたくすぐったいような微妙な快楽にもだえる。


ジェルを入れられ中をいじられる。中指はすっと穴に入るとくるりと腸壁をなぞり、腹側の膨らみを的確に捉えてきた。指で何回か擦られると腰奥がじんと熱くなってくる。


指を足され中を広げられる。ジェルをたくさん足され、かき混ぜる度にぐちゃぐちゃと音がたつ。


中に指一本入れられ、前立腺の場所をトンと軽く押された。ただ、軽く押されているだけなのに、じわじわと広がる快楽が、ちりが積もるように積み上がっていく。

「ん、ん、ん、あぁ…あ…」

しばらくぐったりしていると、中におもちゃを入れられた。アナルバイブらしい。振動を一番弱くされ微妙な振動が体内から伝わってくる。


刺激が無いわけではない。快楽を掻き立てるけれどイくほどではない、絶妙な弱さ。時々バイブをかき回され、乳首を舐められるけど、積みあがるには全然足りなかった。


時間が経つにつれ、俺の頭はそれでいっぱいになり、ちんこを挿れてもらうことしか考えられなっていく。


身体が熱くて仕方ない。身体の中からぶぶぶ……と振動が伝わってくる。全身から噴き出した汗でシーツが湿っている。もにょもにょする疼きに支配され、中を太いものでかき回して欲しくてたまらない。

「はぁぁ、…もう、本物をい、挿れて、ください」
「まだだめー、自分で高まるまで」

俺が自分で高まるって何?この止まらない微量な快楽、とどめを刺して欲しくて、何度も泣きながら挿れてくださいと懇願しても放置された。


しばらくすると背中がぞくりとしてきた。尿意を覚えたのだ。

「ト、トイレに、行きたいです」
「ダメ」

それを言ってからだ。男がぐりぐりと会陰を押し始めた。中から反発するようなものがある。これ以上押されたらもう限界、漏らしてしまいそうだ。

俺は身をよじって刺激から逃げようとするけれど、男の手は俺を逃がさない。

「……と、ト、イレに、行か、せて下さ、いっ」
「だーめ、行かさない」

俺が哀願したにも関わらず、容赦なくぐりぐりと押してくる。切迫感が増し膀胱が破裂しそうだ。

「も、漏れるっ……あっ」

俺の制止を振り切り、熱いものがつーんとこみ上げて、水音とともに腰回りに熱がじわっと広がっていく。俺は、いつの間にか失禁していた。


いやだって言ったのに…。
漏らすって言ったのに…。


恥ずかしいをとおりこして、何だかすごく惨めだ。

俺は独りぼっちで真っ暗な宇宙に放り出されたような気がした。
目の前で俺のことを楽しそうに見ているこの人は、意思疎通がかなわない、他の惑星の住人だ。


俺は何でここにいるんだろう。何しているんだろう。鼻奥がキリキリと痛み目がうるんだと思ったら涙がぼたぼたとシーツに落ちた。

「君はダメな子だなぁ。僕がホテルの人に怒られちゃうよ」

声を殺して泣く俺を、嬉しそうに見下ろしてくる。
顔を隠していた手を無理やり外され、嫌がる顎をとらえ、男の方向に向けさせられた。


涙でにじんだ目で男と目線が合うとにやりと笑った。男が今ので興奮したのが分かった。目がぎらつき小鼻が膨らんだからだ。

「君は泣き顔がいいね。そそられるよ」

手のひらで涙を拭われ、チュッと口吻られた。そして歌うように嬉しそうに言われた。そういえばこれが初めてのキスだ。

「そろそろ、舐めて…もらおうかな♡」

男がカチャカチャと自分のベルトを外しだすと、下着の中から立ち上がったモノを出し、俺の口元に押し当ててきた。


さっきあれだけお願いして、入れてもらえなかった男性器。ハルタロとは違う色素の薄い肌色で、細身で長い性器だった。

しつこく何度もびたびたと口元に押し付けられ、仕方なく先走りで濡れていた先端を舌で舐めまわした。そして口全体で包みこむ。


男臭い臭いと先走りの薄しょっぱい味が唾液と混じり、空っぽの俺の口内を満たしていく。


途中から頭を押さえつけられ、腰を振られた。急に喉奥まで踏み込まれ、奥に先端が当たり嘔吐きそうになる。こらえてやり過ごしたら十分と判断されたのか、唾液で濡れ光る性器をちゅぽっと口から引き抜かれた。


尻をむんずとつかまれ、そのままベッドサイドにうつ伏せにされ、足の間に熱いものを押し付けられた。

さんざんジェルでぐちゅぐちゅにかき回され、とろとろに蕩け、すっかり性器と化してしまった俺の穴。さっきまで中の空洞を埋めて欲しくて泣いた俺の緩んだ穴まわりを、熱くて硬いものがなでまわす。

焦点があったのか、ぬぷりと性器が突き刺された。

「あっ、ぁあぁ……んっ」

硬い熱い物が中を押し広げすすんでくる。中を虫みたいにむずむず這い回っていた痛痒が、すっとなだめられていくみたいだ。

俺はシーツをつかみながら、ひどく惨めだったはずなのに、一転して歓喜の声を上げた。

「…ぁっ、ぁっ、ああぁ…きもちぃぃ」

ゆっくりと腰を動かされる度に、引きずられる腸壁。カリが俺のいいところを擦り上げ、身体がびくりとはねてしまう。自分のひだが歓喜のあまり、男の性器の形を包み込み、うねっている気がした。


片腕を引っ張っられ上半身が反った形になった。
乳暈がぷっくりと腫れ、つんと上を向いた乳首を背後から指で強くつままれ、後ろから奥をずんと突かれた。

「っ、あ゛あっ———!」

頭のてっぺんまで伝わる衝撃。身体が、脳が、男の性器によって揺さぶられる。


ジェルのぐちゃぐちゃした湿った音と肉がぶつかる乾いた音が室内で満ちていた。深く穿たれると奥の気持ちのいいところに当たり、引き抜かれる時に前立腺が擦られる。

「ぁっ、ぁっ、ああぁ!!」

中を突かれ、乳首から伝播する刺激が、俺の腰奥に存在する快楽の器に注がれ俺を満たす。もうその器は容量がいっぱいで、あふれ出しそうだった。


俺は男に責められながら、自分のちんこを握り擦る。先走りのぬめりをすくい、皮ごとさおを擦りたてる。尻がきゅっと窄まり奥から熱いものが駆け上がってきた。

「あっ、出るっ」

俺はシーツに体液を飛ばしていた。


俺がイったあと、男はしばらくしてから俺の中で震えていた。じわりと熱いものが広がっていく気がした。

 



「イく時、中を絞めたでしょ、ずるいよ」

男は俺から身体を離しながら、ぶつぶつと文句を言っている。でも怒っている訳ではなさそうで、ティッシュをケースごと俺に渡してきた。

「何か飲む?」
「俺は……」
「俺なんて野卑な言い方はしない。これからは僕って言いなさい」

男にそう叱られ、口移しでミネラルウォーターを流しこまれた。口移しにされたその水は、冷たさと生ぬるさと奇妙な甘さが入り混じっていた。


一応検査してるけど中に出しちゃったからと、薬を飲まされた。どうやらHIVの予防薬らしい。
「事前と事後に飲むもんだけど明日朝も飲んで」と翌朝分も渡された。


風呂に入り身支度を終えて部屋を退出する際、男に名前を聞かれた。

「ジョウタロです」
「長男なの?」

うなずくとふーんと言っていた。男はドアの前でサカキと名乗り、名刺と封筒を渡しながらキスをしてきた。後で封筒を確認すると20万円が入っていた。





ハルタロとテレビの前に体育座りをして、生放送中の音楽番組を観た。そこには、初登場の3Kが映しだされていた。

「カナヤンだ」

司会者と話す3Kのセンターのカナヤンは緊張してるようだ。それを見るハルタロはとても嬉しそうだ。


この1年間、彼女たちの苦労や努力を間近で見てきたのだ。だけど俺は画面を複雑な思いで眺めていた。


 3Kには少し陰鬱な感じで、伏せた目がやたら色っぽいメンバーがいた。彼女は少し前にグループから脱退してしまった。彼女にはいろんな噂が付きまとっていたが、枕の噂もその噂の一つだ。


元々家族から性的虐待を受けており、そこから逃げる為にアイドルになったという噂もあって、それに枕までと思った記憶がある。


逃げてきた先で彼女もあの男みたいな奴に抱かれていたのか。俺と同じような、あのような屈辱的な仕打ちを受けていたのか。


彼女は今のメンバー達の活躍をどう思っているのだろう。何だか俺は急に哀しくなってしまった。


俺が男に支払った代償の報酬は大きかった。
3Kはゴールデンの歌番組に出演し、俺たちは深夜番組のアシスタントに抜擢された。


少しづつ増えるマスコミ露出。俺のことを気に入ったのか月に数回、サカキにホテルに呼び出された。毎回いろいろと痛め付けられ、お金をもらう。俺の中で確実に何かがすり減っていた。


金銭的に余裕ができた俺は、喫茶店のバイトを辞めた。
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