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ジョウタロとハルタロ(3)

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きつくて、熱い。
それがジョウタロの中に入った感想だった。入り口がみちっとハルタロを締め上げてくる。

「はぁ、あっ……、んっ」

開かれた白い脚。
絡み付くあまい吐息。
腰を引くと肉の輪にしごかれ、とろとろに解された腸壁がやんわりと絡みついてくる。

(ああぁ……、気持ちいい、腰から下がキュッと絞られ、温かくて蕩けてしまいそうだ……)

男たちがジョウタロに列を成す理由をハルタロは身をもって知った。

「んっ、あぁぁ……はぁ」

腰を進めるたびにあがるジョウタロの艶めく嬌声。動きによって変わる恍惚の表情。ちらりと流れてくる快楽で潤んだ視線。


下であえぐ彼をもっととろとろにしたい。ジョウタロを快楽一色に染め上げたい。腰がきゅうっとせり上がり急激熱くなって、ドクンと欲望を吐き出した。


もうこれで何度目なのだろうか。ハルタロが出したものでつながっている箇所は溢れ、動くたびにぐちゅぐちゅ、クプクプと卑猥な水音がたつ。時折、ブフッと体内に混じった空気音が抜けてわいく。

「はぁ、……あぁ、あ゛っ――」

ジョウタロの声はかすれ気味だ。ハルタロに腰奥を突かれる度にジョウタロは身体をのけ反ぞらせ、もだえる。


散々なぶられ、ぽってりと腫れ赤らむ乳首。ハルタロは目の前でちらつくそれを軽く舌先でなぶり、腰を打ちつけるタイミングで更にじうっと強く吸い上げた。

「あっ、ひ、あぁっ――!! 」

ずり上がる身体を固定され真正面から打ちつけられる腰奥への衝撃。乳首と奥との重複する刺激に、半分立ち上がったジョウタロ自身の茎からは、たらたらと白混じりの透明な液が伝い落ちていた。


骨が浮いたジョウタロの青白い身体は上気して赤らみ、汗や体液に捕らわれたワラ屑が身体のあちこちに貼り付いている。


粗く息をつく肩。ハルタロが与えた快楽で涙が滲み、ふちが赤く染まった目元。吸われすぎて赤く腫れた薄い唇。ハルタロに全面の信頼を置き、見つめる濡れた目。

(あぁ、何て愛おしいんだ……。全部、喰らいつくしたい)

ハルタロは唾液で濡れた唇を覆い、相手の口内に入り舌を吸い上げた。ぬるつく舌がねちゃりぬちゃりと絡みあい、透明な糸を引く。


散々交接したのに、まだまだジョウタロの成分が足りない。食い足りない気分だった。


ジョウタロの薄い胸を撫でさすりながら、背後から細い身体にわけ入る。性器に角度をつけ前立腺に当たるよう小刻みにこすり付けた。

「うぁあっ、うっ、うぐっ、んっ――」

柱にすがりつき前立腺を突かれ、もだえるジョウタロ。柱を掴む指は力の入れすぎで血色を失っている。


ぎりぎりまで引いて、奥まで突き刺す。ジョウタロは全身を突っ張らせ甘く鋭い悲鳴を上げた。彼の先端からは薄い液がぽたたっと垂れ、これまで中に出された精液が腿を伝い足下を濡らしていた。



ハルタロはジョウタロにどっぷり溺れ、我を忘れ、失念していた。



ここはどこか、どうして自分たちがここにいるのかということを。










「だってー、これからどうなっちゃうの?」

「やめて-! 読み上げるのは、止めてくださいってば!」


俺は魔痢輪まりりんさんから新刊を取り上げた。止めて、やーめーろー。恥ずかしい。恥ずかしくて死にそうだ。





俺は巳年屋さんの打ち上げにお邪魔している。巳年屋さん、手伝いの人、巳年屋さんの仲良しサークルさんも来ている。
あの有名サークルの六軒楼ロッケンロウルさんや魔痢輪さんも参加していた。


みんな今回のイベントでアイドル3Kの男の娘本を出している作家さんたち。まるで男の娘本作家オフ会みたいだ。


場に緊張がなくなり、皆がうちくだけ、落ちついた頃に巳年屋さんにがっつり挨拶に行った。俺の名前を聞いた隣にいた巳年屋のスタッフさんが、しちょりさん、ジョウタロ本買いました! って言ってくれた。有名作家さんばかりの場に無名が一人。ひどく肩身が狭かったので、とても嬉しかった。


近場にいた魔痢輪さんがその新刊を見たがるので持参していたスタッフさんが貸したら、朗読をし始めた訳だ。


恥ずかしくて泣きそう。いくら酔っぱらっているからって酷い。自分も同じことをされたら嫌じゃん。


取り返した本を返却し腹を立てながら席に戻ると、巳年屋さんが来ていて、魔痢輪がふざけてごめんねと謝っていた。


巳年屋さんがあやまる事じゃないけど、初対面で年下で立場が弱い俺を気づかってくれたみたいだ。少し、嬉しい。


「しちょりくんと、リアルでちゃんと話すの初めてだったよね。よろしく。そうだ、新刊ありがとう。今回の話、BLみたいだったね」

「あっ、ありがとうございます。び、B、BL?」

巳年屋さんは、さらっととんでもない事をいう。俺の新刊は腐女子たちの大好物のBLみたいと?あの細目の男たちが裸で絡みあっているやつか!

「何も考えないで普通に描いたつもりだったんです。俺、正直言ってBLと男の娘の定義の違いがわからない……です。もしかして、今回はモブではなくて、相手にハルタロを出してしまったから、BLになってしまったのかなと、一瞬思いました。俺的には相手は誰でもよくて、エモくて、エロいジョウタロが描ければよかったんですけど……」

「あ、別に悪く言ってるつもりは無くて、男の娘って描写重視でエロくて明るくポップなものが多いでしょう。しちょりくんの新刊は、そうではなくて、ストーリー重視に見えたんだよね。腐女子は関係性に萌えると言うからさ。しちょりくんの今回の話は二人の関係性の変化にフォーカスを当てているでしょ」

そこまで考えてなかった。ただ単に自分が見たいものを描いただけだったから。

「僕、BL好きだし、読むよ。そうだ、今度貸してあげるよ。面白いのがあるから」

「はぁ……」

これも貸そう、あれもと、一人でテンションが上がっていく巳年屋さんに俺は付いていけず一人取り残されていた。


結局、時間まで巳年屋のスタッフの山田くんと巳年屋さんのイラストの素晴らしさや、ジョウタロの魅力について話しあった。やっぱりファン同士ってすげー楽しい。


俺は作者側ではなくてファン側の人間なんだって実感する。山田くんとは連絡先の交換をした。


解散の時に魔痢輪さんには背後から首を絞められた。この人は小学生みたいなコミュニケーションを取る人なのか。

「ぐぇっ」

「おめー、前髪長すぎ、切れ、切れ。視力が悪くなるぞ」

魔痢輪さんに前髪を押しのけられ丸見えの白いおでこ。俺は慌てて髪に触れる手を払いのけていた。魔痢輪さんは俺に気を止めず次の絡み先に行ってしまった。


六軒楼さんは名前のわりに無口な人で、打ち上げ中、一緒に話す機会はなかったし、ご本人がしゃべっているのを見かけなかった。誰かと誰かが話している場にいたという感じだった。


今さっきまで、俺と魔痢輪さんの絡みを無表情で見ていた。でも最初に初対面で見たときよりも表情が緩んでる気がする。もしかしてニコニコと見ていたのかも。


巳年屋さんと一緒の帰り道。同じマンションって凄いよな。

「突然誘ってごめんね、びっくりしたでしょう。一度、しちょりくんと話してみたかったから。ああいう場だと入りやすいかなと思ったんだけど、かえって気づかいさせてしまったね」

「ありがとうございます。楽しかったですよ。いきなり朗読されたのにはびっくりしましたけど、魔痢輪さんや、六軒楼さんにもお会いできて、配信の裏話とか聞けてよかったです。それと山田くんと仲良くなれました」

「そう言って貰えると僕は嬉しいけれど。朗読は本当にごめんね。僕の知り合いだって甘えちゃってる。特に魔痢輪は自他の境界が曖昧なんだ。作業通話だとめちゃくちゃだよ。六軒楼もあきれている」


仲間内で通話アプリで通話しながら作業しているんだ。かなり盛り上がるんだろうな。

「六軒楼さんも、通話で喋るんですか?」

「凄い喋ってる。通話だと彼はいろんなことに過激派で面白いよ。彼は対面だと吃驚するくらい静かなんだよね。よかったらしちょりくんも通話においでよ。歓迎するよ」

六軒楼さんの会話。どんなものなんだろう。少し気になった。

「俺は静かじゃないと作業が出来ないので……残念です」

俺は全然名残惜しくないのにそう断った。


エレベーターの階数を押す。巳年屋さんとは偶然同じマンションで同じフロアなんて本当に凄いな。

「そっか、残念。また、打ち上げで遊ぼうね」

エレベーターの前でお礼を言おうとすると、

「ちょっと待ってて。渡したいものがあるから」

自室に駆け込んだ巳年屋さんから紙袋いっぱいの本を渡された。巳年屋さんは息を弾ませている。

「これ、さっき言っていたBL本とか。他にも僕が好きな本が入ってる。よかったら読んでみて」

たまたま同じマンションで、同じジャンルでジョウタロ本を出しているだけなのに、なんでこんなに上手い人が親切にしてくれるんだろう。

「巳年屋さん。本当にありがとうございます。早めに返却しますね」

「あ、そうだ。しちょりくんの呼び方、巳年屋は止めて欲しいかな。それ、サークル名だし。出来ればにょろ助って呼んでもらえたら、嬉しいな」

にょろ助さんは微笑みながら言う。


俺はにょろ助さんからBL本をたくさん貸してもらった。そしてにょろ助さんと呼ぶよう言われた。


何か急速すぎないか、この接近し過ぎな感じ。俺は浮かんだ疑念を踏みつぶしながら、にょろ助さんと別れた。


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