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クリスの部屋
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醜態と言える淫行を働いた後なのだ、幾ら相手がキラキラと光るクリスでも誰しもがそう言うだろう。
「クリスの部屋には行かない」と断るとギャアと喚いて倒れ込み、死んだふりをする。
2つの大学で法律を学び、起業した会社を経営する23歳。恋愛ゲームの推しキャラNo.1のような姿で……だ。
お風呂で触りっこしようと言うのだ。
行かないだろう。では、お風呂ではないならいいのかと聞かれても行かない。
「じゃあ!僕のを触れとは言わないから触ってもいい?」
これは一体何の攻防だと言うのだ。
「触るなら行きません」
「でも!好きな人を部屋に呼んで何もしないなんておかしいだろ?!」
「だから行かないって言ってるんでしょう!」
「蓮にご飯を作る為に色々買ったのに?!」
炊飯器もフライパンも鍋も買った……という事は今まで料理なんかしてなかったという事だ。
「蓮の部屋には何もないから」という理由も少しおかしい。
「俺はご飯を作って欲しいなんて一回も言ってませんよ」
「眠れないって言っただろう!」
「眠ろうと思えば眠れます!」
そこで、隣の部屋から人生初の壁ドンが来た。
真夜中を過ぎているのだ、2人で顔を見合わせて静かに、静かにと、空気を手で抑えた。
「ベッドで横になっていれば2分で眠る自信があります」
1人なら……と付け加えようとすると、「蓮はよく寝るよね」とクリスが笑った。
どうやら留守をしている時ばかりで無く、部屋で寝ている時間にまで不法侵入を許していたらしい。
「それ……いつですか」
「え?」
「一回ですか?」
「ほら、心配だし、あ、そうだ、僕の住んでる部屋がここから見えるんだよ」
「え?近いの?」
「うん、駅の方なんだけどね」
こっちこっちと腕を引っ張られて狭いベランダに出ると「あそこだよ」とクリスが空に向けて指を差したのは手に乗せるとバッドくらいのサイズだ。
どうやらクリスの住む家はてっぺんがピカピカと光ってる細長いビルらしい。
周りに高い建物が無いせいか正に塔と呼んでもいいと思う。
「デカい…」
「普通だよ、蓮にもっとちゃんとした朝ご飯を作ってあげたいし、明日も逢いたいし、そうだ、ちょっとだけ買い物に付き合ってよ、服とか買いに行きたいからさ、そうなるとあっち行ったりこっち行ったりも面倒だろ?それに、それに……もうここに泊まるのは俺的に無理と言うか……」
「泊めるとは言ってないんですが…」
「恋人なのにっっ?!」
ここで再びの壁ドンが来た。
ほんのさっきまでは確かに隣の気配は無かったのに間が悪い。
「いつもそっちの方がうるさい癖に」
「僕の部屋は静かだよ?騒いでも多分隣には聞こえないしね」
「ボロくて……悪かったですね」
そんなに粗末な部屋が嫌なら豪勢な自分の家に帰ればいい。口を挟む暇も無い程色々の計画っぽい事を並べたけど、どうせ断る選択肢は与えてくれないくせに、「駄目?」と綺麗な笑顔でお願いしている体をとるのは狡いと思う。
「日曜は…ゆっくりしたいんです」
「うん、ゆっくりしよう、じゃあもう行こうか」
「いや……」
これはある意味無視されてるのでは無いのか?
全く話を聞かないクリスに高さの釣り合わない腕組みをされ、着のみ着のまま……つまりクリスは寸足らずの体操服を着たままの姿なのに部屋を連れ出されてしまった。
「ちょっと!行かないって!」
「うん、蓮に見せたいものもあるんだ」
「だから!」
嫌だと喚いても、ポカポカと殴り付けても、脇の下を擽ってもガッチリと組まれた腕は外れない。
かなり抵抗した筈なのに寧ろ喜ぶ変態には騒ぐより冷静に、真面目に断りを入れた方が効き目もあるのかもしれないが状況が状況だ。
逆効果なのはわかっているのにひたすら抵抗していたら背の高いマンションに着いてしまった。
古いアパートからクリスのマンションまでは行ったり戻ったり立ち止まったりしながらでも20分くらいだった。
「まさか……近くに引っ越して来た…とか言わないでしょうね」
「ここは違うよ、そんな事するなら隣に住むけど」
「隣は塞がってますよ」
「そんなものどうにでも…」
「それ以上言わなくていいです」
入り口にある強固なセキュリティ、ガラスの自動ドア、大理石に見える床と壁。
おまけに駅近。
遠くから見ても豪華だったけど、細長いマンションの足元は思っていたよりずっと豪華だった。
例え体操服を着ていたとしてもクリスのイメージにはピッタリなのだけど、首の伸びた2年越しのユニ○ロを着てる庶民が入っていい場所では無い。
「俺が入ったら……ブザーが鳴りそう…」
「ファンファーレ的な?」
「あのね……」
クリスの脳味噌は勉強に特化されているらしい。
そこ以外はお花畑に居座って楽しくラッパでも吹いているらしい。
完璧な貴公子のようなイメージの外壁がパラパラと崩れて普通の……普通よりも少しおかしい普通の人に見えてきた。
だからだろうか、この立派なマンションの中身はどうなんだろうと覗き見的な興味が湧いてきた。
「絶対に何もしませんか?」
「蓮の嫌がる事をした事ある?」
嫌がる以前の話なのだがそこはもういい。
「お邪魔します」
「まだエレベーターだよ」
「そうですけど」
いつもは真正面から華やかな顔で話しかけてくるくせに、何故か目が合わない。
もじもじしたり、当然の顔で部屋に入って来たり、好きだと喚いたりするクリスについては、半信半疑……4分の3くらいは作っているのかもしれないが、何だか落ち着かないように見える今のクリスは多分本物だと思える。
音もなく、揺れも無く、滑るように上層まで上がって来た。
12階ね。
エレベーターを降りると表札の無い部屋の前でクリスがポケットを探った。
取り出したキーホルダーには2つの鍵がぶら下がっているいけど……一方は高そうなディンプルキーだったが、もう片方は何だか凄く見覚えのある形だ。
そこは後で全ての決着を付けたらいいだろう。
開いたドアを広げて「どうぞ」と背中に押され、「何もしない事」ともう一度念を押してから足を踏み入れた。
「わかってたけど……ね…」
「何が?」
「……何でもない」
一般的なマンションのイメージよりもずっと広かった。素材そのものが高級に見える立派な玄関からはエグゼクティブな香りがする。
折れ戸が開いたままになってる広いシューズクローゼットはほぼ空っぽで四足か五足くらいの靴が並んでいた。
何も言わずに出してくれたスリッパは何故かガチャピンが平べったく寝転んでいるが何も言わずに履いた。
もう一度「お邪魔します」と言ってから中を進むとかなり広いが間取りは家族用に見える。
マンションの外観や内装から推測したイメージでは、20畳くらいある広い部屋にモデルハウスみたいな家具があるだろうと予想していたのに少し違う。
トイレやお風呂が並ぶドアの前にあった部屋の中には段ボールが積み上がり、奥にキッチンが見えるリビングにもやはり段ボール箱と積み上がった本、本、本。乱雑に纏めた沢山のプリントと床に置いた2つのノートパソコン。
家具と言えるものはほとんど無くて、唯一生活感を感じたのは部屋の隅に置いたベッドだけだった。
もっと豪華な、芸能人みたいな部屋を想像していたから驚いていると、眉を下げたクリスが言いたい事を悟ったようにポリポリと頭を掻いた。
「散らかっててごめんね」
「いえ、俺は気にならないけど……」
「ここはね、俺の叔父が借金が山盛りの会社と一緒に遺した部屋なんだ、叔父と言っても俺の親父とは18も歳が離れてるから祖父ってイメージなんだけどね」
「その会社をクリスが継いだってこと?」
「ううん、立て直しは無理に思えたから起業して子会社にしたんだ、僕の親は相続を放棄するつもりだったらしいけど昔から顔を知っている従業員もいたからね、見た通り引き払った事務所の荷物を預かる倉庫になっちゃってる」
「大変?」
「今はそうでも無いよ」
全部を任せているからとクリスは笑ったけど、仕事と大学の勉強との両立はほぼ何もわからない脛齧りから見ても大変なのはわかる。
しかもクリスは法課だ。
表では沢山の女の子をチャラチャラと纏い、裏では熱心なストーキングを極めていてもやるべき事はやっているのだと思う。
「カッコいいですね」
カッコいいのはわかってるけど、思わず出てきたシンプルな感想だったのだが、居丈高になると思ったクリスはプルプルと首を振った。
「反対、今の僕は生きてきた中でダントツにカッコ悪いと思うよ、今日蓮を無理矢理連れてきたのは変な噂に惑われて僕の事を誤解して欲しく無かったからなんだ」
「黒塗りの高級車が送り迎えをしているとか?」
「それは多分……会社の人が仕事のついでに送ってくれた所を見られたんだと思うよ」
「芸能事務所からスカウトされたとか」
「1度ね、声を掛けて来たおばさんを無視してたら大学までついて来ちゃった事があったから」
「自家用の飛行機があるとかは?」
「飛行機は無いけどヘリなら親父が持ってる」
全部本当かよ。
「やっぱり特別な人なんですね」
「そうでも無いと思うけど……え?!!こんな僕は嫌?!嫌いって言われたら飛び降りるよ?!」
そこから!と指さしたのは住めそうなくらい広いベランダだ。
これはそろそろ帰った方がいいのかもしれない。
このままではどうぞご勝手にと言いそうになる。
「…………思ってもみない所でキレる所が嫌です」
「キレてないし、キレないよ。それよりもさ、ちょっとここを見て」
おいで、おいでとクリスが手招きしたのはリビングの右手にあったドアだ。
左側の部屋も入り口近くにあった部屋もドアが開いていたのにそこだけ閉まっているからちょっと警戒した。しかし、クリスがサッと開けたから中が見えた。
「……何も無い……ように見えるけど…」
他の部屋のように荷物や勉強道具も無く、本当に何も無かった。
粒粒と穴が並んだ壁が他の部屋とは違うのだが、見てと言われても見るものは無い。
「クリスの部屋には行かない」と断るとギャアと喚いて倒れ込み、死んだふりをする。
2つの大学で法律を学び、起業した会社を経営する23歳。恋愛ゲームの推しキャラNo.1のような姿で……だ。
お風呂で触りっこしようと言うのだ。
行かないだろう。では、お風呂ではないならいいのかと聞かれても行かない。
「じゃあ!僕のを触れとは言わないから触ってもいい?」
これは一体何の攻防だと言うのだ。
「触るなら行きません」
「でも!好きな人を部屋に呼んで何もしないなんておかしいだろ?!」
「だから行かないって言ってるんでしょう!」
「蓮にご飯を作る為に色々買ったのに?!」
炊飯器もフライパンも鍋も買った……という事は今まで料理なんかしてなかったという事だ。
「蓮の部屋には何もないから」という理由も少しおかしい。
「俺はご飯を作って欲しいなんて一回も言ってませんよ」
「眠れないって言っただろう!」
「眠ろうと思えば眠れます!」
そこで、隣の部屋から人生初の壁ドンが来た。
真夜中を過ぎているのだ、2人で顔を見合わせて静かに、静かにと、空気を手で抑えた。
「ベッドで横になっていれば2分で眠る自信があります」
1人なら……と付け加えようとすると、「蓮はよく寝るよね」とクリスが笑った。
どうやら留守をしている時ばかりで無く、部屋で寝ている時間にまで不法侵入を許していたらしい。
「それ……いつですか」
「え?」
「一回ですか?」
「ほら、心配だし、あ、そうだ、僕の住んでる部屋がここから見えるんだよ」
「え?近いの?」
「うん、駅の方なんだけどね」
こっちこっちと腕を引っ張られて狭いベランダに出ると「あそこだよ」とクリスが空に向けて指を差したのは手に乗せるとバッドくらいのサイズだ。
どうやらクリスの住む家はてっぺんがピカピカと光ってる細長いビルらしい。
周りに高い建物が無いせいか正に塔と呼んでもいいと思う。
「デカい…」
「普通だよ、蓮にもっとちゃんとした朝ご飯を作ってあげたいし、明日も逢いたいし、そうだ、ちょっとだけ買い物に付き合ってよ、服とか買いに行きたいからさ、そうなるとあっち行ったりこっち行ったりも面倒だろ?それに、それに……もうここに泊まるのは俺的に無理と言うか……」
「泊めるとは言ってないんですが…」
「恋人なのにっっ?!」
ここで再びの壁ドンが来た。
ほんのさっきまでは確かに隣の気配は無かったのに間が悪い。
「いつもそっちの方がうるさい癖に」
「僕の部屋は静かだよ?騒いでも多分隣には聞こえないしね」
「ボロくて……悪かったですね」
そんなに粗末な部屋が嫌なら豪勢な自分の家に帰ればいい。口を挟む暇も無い程色々の計画っぽい事を並べたけど、どうせ断る選択肢は与えてくれないくせに、「駄目?」と綺麗な笑顔でお願いしている体をとるのは狡いと思う。
「日曜は…ゆっくりしたいんです」
「うん、ゆっくりしよう、じゃあもう行こうか」
「いや……」
これはある意味無視されてるのでは無いのか?
全く話を聞かないクリスに高さの釣り合わない腕組みをされ、着のみ着のまま……つまりクリスは寸足らずの体操服を着たままの姿なのに部屋を連れ出されてしまった。
「ちょっと!行かないって!」
「うん、蓮に見せたいものもあるんだ」
「だから!」
嫌だと喚いても、ポカポカと殴り付けても、脇の下を擽ってもガッチリと組まれた腕は外れない。
かなり抵抗した筈なのに寧ろ喜ぶ変態には騒ぐより冷静に、真面目に断りを入れた方が効き目もあるのかもしれないが状況が状況だ。
逆効果なのはわかっているのにひたすら抵抗していたら背の高いマンションに着いてしまった。
古いアパートからクリスのマンションまでは行ったり戻ったり立ち止まったりしながらでも20分くらいだった。
「まさか……近くに引っ越して来た…とか言わないでしょうね」
「ここは違うよ、そんな事するなら隣に住むけど」
「隣は塞がってますよ」
「そんなものどうにでも…」
「それ以上言わなくていいです」
入り口にある強固なセキュリティ、ガラスの自動ドア、大理石に見える床と壁。
おまけに駅近。
遠くから見ても豪華だったけど、細長いマンションの足元は思っていたよりずっと豪華だった。
例え体操服を着ていたとしてもクリスのイメージにはピッタリなのだけど、首の伸びた2年越しのユニ○ロを着てる庶民が入っていい場所では無い。
「俺が入ったら……ブザーが鳴りそう…」
「ファンファーレ的な?」
「あのね……」
クリスの脳味噌は勉強に特化されているらしい。
そこ以外はお花畑に居座って楽しくラッパでも吹いているらしい。
完璧な貴公子のようなイメージの外壁がパラパラと崩れて普通の……普通よりも少しおかしい普通の人に見えてきた。
だからだろうか、この立派なマンションの中身はどうなんだろうと覗き見的な興味が湧いてきた。
「絶対に何もしませんか?」
「蓮の嫌がる事をした事ある?」
嫌がる以前の話なのだがそこはもういい。
「お邪魔します」
「まだエレベーターだよ」
「そうですけど」
いつもは真正面から華やかな顔で話しかけてくるくせに、何故か目が合わない。
もじもじしたり、当然の顔で部屋に入って来たり、好きだと喚いたりするクリスについては、半信半疑……4分の3くらいは作っているのかもしれないが、何だか落ち着かないように見える今のクリスは多分本物だと思える。
音もなく、揺れも無く、滑るように上層まで上がって来た。
12階ね。
エレベーターを降りると表札の無い部屋の前でクリスがポケットを探った。
取り出したキーホルダーには2つの鍵がぶら下がっているいけど……一方は高そうなディンプルキーだったが、もう片方は何だか凄く見覚えのある形だ。
そこは後で全ての決着を付けたらいいだろう。
開いたドアを広げて「どうぞ」と背中に押され、「何もしない事」ともう一度念を押してから足を踏み入れた。
「わかってたけど……ね…」
「何が?」
「……何でもない」
一般的なマンションのイメージよりもずっと広かった。素材そのものが高級に見える立派な玄関からはエグゼクティブな香りがする。
折れ戸が開いたままになってる広いシューズクローゼットはほぼ空っぽで四足か五足くらいの靴が並んでいた。
何も言わずに出してくれたスリッパは何故かガチャピンが平べったく寝転んでいるが何も言わずに履いた。
もう一度「お邪魔します」と言ってから中を進むとかなり広いが間取りは家族用に見える。
マンションの外観や内装から推測したイメージでは、20畳くらいある広い部屋にモデルハウスみたいな家具があるだろうと予想していたのに少し違う。
トイレやお風呂が並ぶドアの前にあった部屋の中には段ボールが積み上がり、奥にキッチンが見えるリビングにもやはり段ボール箱と積み上がった本、本、本。乱雑に纏めた沢山のプリントと床に置いた2つのノートパソコン。
家具と言えるものはほとんど無くて、唯一生活感を感じたのは部屋の隅に置いたベッドだけだった。
もっと豪華な、芸能人みたいな部屋を想像していたから驚いていると、眉を下げたクリスが言いたい事を悟ったようにポリポリと頭を掻いた。
「散らかっててごめんね」
「いえ、俺は気にならないけど……」
「ここはね、俺の叔父が借金が山盛りの会社と一緒に遺した部屋なんだ、叔父と言っても俺の親父とは18も歳が離れてるから祖父ってイメージなんだけどね」
「その会社をクリスが継いだってこと?」
「ううん、立て直しは無理に思えたから起業して子会社にしたんだ、僕の親は相続を放棄するつもりだったらしいけど昔から顔を知っている従業員もいたからね、見た通り引き払った事務所の荷物を預かる倉庫になっちゃってる」
「大変?」
「今はそうでも無いよ」
全部を任せているからとクリスは笑ったけど、仕事と大学の勉強との両立はほぼ何もわからない脛齧りから見ても大変なのはわかる。
しかもクリスは法課だ。
表では沢山の女の子をチャラチャラと纏い、裏では熱心なストーキングを極めていてもやるべき事はやっているのだと思う。
「カッコいいですね」
カッコいいのはわかってるけど、思わず出てきたシンプルな感想だったのだが、居丈高になると思ったクリスはプルプルと首を振った。
「反対、今の僕は生きてきた中でダントツにカッコ悪いと思うよ、今日蓮を無理矢理連れてきたのは変な噂に惑われて僕の事を誤解して欲しく無かったからなんだ」
「黒塗りの高級車が送り迎えをしているとか?」
「それは多分……会社の人が仕事のついでに送ってくれた所を見られたんだと思うよ」
「芸能事務所からスカウトされたとか」
「1度ね、声を掛けて来たおばさんを無視してたら大学までついて来ちゃった事があったから」
「自家用の飛行機があるとかは?」
「飛行機は無いけどヘリなら親父が持ってる」
全部本当かよ。
「やっぱり特別な人なんですね」
「そうでも無いと思うけど……え?!!こんな僕は嫌?!嫌いって言われたら飛び降りるよ?!」
そこから!と指さしたのは住めそうなくらい広いベランダだ。
これはそろそろ帰った方がいいのかもしれない。
このままではどうぞご勝手にと言いそうになる。
「…………思ってもみない所でキレる所が嫌です」
「キレてないし、キレないよ。それよりもさ、ちょっとここを見て」
おいで、おいでとクリスが手招きしたのはリビングの右手にあったドアだ。
左側の部屋も入り口近くにあった部屋もドアが開いていたのにそこだけ閉まっているからちょっと警戒した。しかし、クリスがサッと開けたから中が見えた。
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