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エピソード2
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ワイズフードのパーティから帰った夜。
怒り半分、後ろめたさ半分、疑問半分なのだと思う。考え込むようにムッツリとしているから配分はわからないが、何だかんだと文句を言っていた割に、素直にアパートまで一緒に帰ってくる所は水嶋の愛すべき点と馬鹿だと思える点だ。
そこに付け込んでいるつもりは無いが、そこが付け込まれる隙でもあるのだ。
そして、考え込んでいる水嶋は部屋に帰っても水風船にはならずに、多分どこにいるかもよく考えてない。
声の無い呟きには「童貞」が混じっているから恐らくまだ拘っているのだと思う。
水嶋さん、ここは謝らせてもらう(心で)
もう一回言うけど、お尻は貸せない。
そして、今更女子とどうこうなんて許さないし、見過ごさないし、あったとしても爽やかに邪魔をする。だって、もしも水嶋がその気になったら簡単だと思うから。
何よりも水嶋はお金を持っている。そこはきっと大事だ。そして、懐に入ってしまえば本当の水嶋が見え来る、そしたらすぐに落ちると思う。何と言っても水嶋は優しいのだ。
程なくして「優しい」の本当の意味を知るだろう。何をしても、どんな我儘を言ってもハイハイと付き合ってくれるのだ。(証明済み)。例え、力を込めたオナラをブリっとこいても「実が出てないか?」…で終わる(証明済み)。疲れる仕事から帰ってきたのにビールが無かったから「買って来て!」って暴れてみれば「やれやれ」って立とうとするし(結局一緒に行った)
お金は稼ぐけど使わないし、しかも殆ど家にいない、いても掃除の時に邪魔なくらいだ。家事はしないけど、やってと言えばやると思う。
そして……。
どうしても拭いきれない例の問題を克服したら子供だって望める。きっと、水嶋を知る人から「お前誰だ!」って言われるくらい、この上ない愛情を持って育てて行くのだろう。目に見える。
例え、敵対する経理の女子だってそんな水嶋を深く知れば落ちると思う。何なら部長だって課長だって、その辺にいる奴全て「イキ顔が見たい」とか……きっと思う。
そう考えると……「やってる」水嶋を一度見てみたいとは思う。しかし、お尻は貸せないからやはりそこは諦めてもらおう。
「もう俺しかダメって事で…」
「ああ、ダメだな」
「……何がダメなんですか」
「え?」
「さあ?」って……。
何だか水嶋の視界に入っていないような気がして、足を投げ出し座ったまま呆けている背中に凭れてやった。するとグーっと押し返してくる。
押されたら押し返すよな。
そして、ヒョイっと避けてやると、パタンと落ちて嘘みたいに膝枕の形になった。
相変わらず誘うの上手。
今はお互いに素面の上、まだ夕方の5時を過ぎたばかりなので部屋も外も明るかった。
何かするなら(するけど)ご飯を食べてお風呂に入ってまったりとした所で口説こうと思っていた。
しかし、そこは水嶋だ。パッと目を逸らせ、慌てて起き上がろうとしたけど手を滑らせてバフッと太腿に顔を埋めてる。
これ、誘ってるよな。
絶対にわかってて誘ってる。
昨晩もお預けを食らっているのだ。
「いただきます」
「いただくな!」
キスをしようとしたら殴られた。
「そこは、「よろしゅうおあがり」でしょう、京都で教えてくれたじゃ無いですか」
「よろしゅうおあがりは「ご馳走さま」だ」
「え?そうでしたっけ?じゃあ終わったらいいます」
「言わなくていいから」
「そうやってすぐに誤魔化す」
このままではふざけて、言い訳をして逃げられそうだったから一番先に手を伸ばしたのは下半身だ。スラックスの上からふかふかの股間を抑えると「クソ」とか「すぐそれだ」とか言いながらも抵抗はしないのだ。
すぐにフニャッとなって頭に巻き付けた腕に噛み付いて来る。
甘噛みね、悔し紛れだね。
もうこの際だから男らしく女役を認めて欲しい。
いつもこんな風だから「嫌だ」と言われても本気だとは思えない。
股間をゆっくり揉み込解すとすぐに手応えが出て来た。
もう片手でベルトを外すのは得意になっている。
ズボンの中に手を忍び込ませると、水嶋の細い体がブルッと震え、ハァって吐き出した息が次を誘っているようだ。
下がった眉は困ってるからじゃないよな?
「気持ちいい?」
「なあ江越……出来れば風呂………に入りたいんだけど…」
「俺も入りたいです…後でいいですけど」
「じゃあ口は……無しな?」
「それはやって欲しいって意味ですか?」
何でそうなるって水嶋は怒るけど、セックスを許容したやり取りの中で「口を使うのはやめよう」とはやって欲しいと同義語だと思う。
リクエスト通りに胸を這い、腹を這い、割れたチャックの隙間に頭を沈めるとビクっと両足が上がった。
もう股間に顔を埋めてる俺の頭を抱いてるのに、「俺は酸っぱいぞ?」と、謎の申告だ。
そりゃ隅々まで舐めるけど、舐めるられる事前提なのが面白い。どんな味がするのかなと、パンツのジッパーを下ろして下着の割れ目から舌を忍び込ませるとポロンと飛び出て鼻に当たった。
ちょっと匂いでから舐めてみると確かにチンコの味じゃ無い。
「うん、酸っぱいですね、ワイズフードのパーティでは裸になって檸檬の掛け合いでもする奇抜なイベントでもあったんですか」
「違うわ、ホテルに行く前にちょっとだけうちの倉庫に寄っただけだ」
「それにしても何でこんなとこが酸っぱいんです、まさか変な所で変な事を」
もしくは変な事をされたか……。
そう考えると笑っている場合じゃ無い。
水嶋は男にモテるのだ。
言い方を変えればホモにモテる。
男とセックスなんて想像した事も無かったいち好青年がいとも簡単に吸い込まれたのだ、その心配は常にある。
「アホ」と水嶋。
「アホじゃ無いです、あんたには実績があるんですからね、どうしてチンコだけが酸っぱいんですか…」
「俺だって知らないけど……そこは…ほら、トイレにだって行くだろう」
「トイレって……」
奥田製薬第二営業部の主力製品は食品添加物を多く取り扱う。主に膨張剤や増粘剤、酸化防止剤、中でも保存料は、とにかく酸っぱい物が多い。
それって…つまりそれってソルビン酸とかクエン酸とかアスコルビン酸とか酒石酸とかフマル酸とか何か(まだ味ではわからない)酸っぱい製品に塗れた手でナニを触ったからって事で……もし、これが他の誰かなら、引く程禍々しい光景ではあるが、何故か水嶋が相手だとエロ欲を駆り立てる材料になる。
「だから風呂に…」
「散々煽っておいてそれは無いです」
「煽ってない」って本当にこの人は馬鹿。
口に含んで舌を使い、揺らして吸い付く。
しかしちょっと虐めたい気分でもあるのだ、生かさず殺さず、エロい腰が動くと圧を弱め、こめかみを挟んだ手が頭を揺すろうとすると先っぽを舐めるだけにした。
焦らす。
遊ぶ。
変な男の誘いに乗ろうとしたからちょっとした罰。「江越…」と情けない声が出て来たから、ここで聞きたかった事を聞いてみる。
「何かされたんでしょう?」
「何…が?……何の話だ」
「前橋ですよ、俺に嘘付いてまで会ってた、そうでしょう?そこで何かされましたよね?」
前橋の態度には「もう手は付けた」という、自らの所有物に対しての傲慢さが見えたのだ。
幾ら父親の威光があっても、幾ら謎の自信を持つ勘違い野郎でも、社交辞令込みの世間話の中で、どこに住んでいるかを聞いたくらいで「行く」とはならないだろう。
「体を触られた?ズボンに手を突っ込まれた?まさか変なホテルにでも連れ込まれたんじゃ無いでしょうね」
「アホ、ちゃうわ」
浅く、早めの息、関西弁、これが揃えば水嶋はどうにでもなる。
寸止めと追い上げを繰り返し、吐かせたのはいいけど、ちょっと許せなくなった。
「キスをされただけだ」
クネクネと腰を捩らせ、太腿が頭を締めてくるこの状態で、「キス」に「だけ」を付けた。
「……何ですか……それ」
「透けたシャツから乳首を覗かせ、ゲイバーで飲み枝垂れている時に声をかけられキスをされた」
……それならわかる。許せないけどわかる。
佐倉を擁護したりは出来ないけど仕方が無いとは思う。
しかし、前橋はビジネスの場で優位な立場を利用して、まだ社交辞令しか話して無い相手にキスを迫った。そして水嶋はそんな相手に対し、まだ笑いかけ、2人で抜けようという誘いに乗ろうとした。
多分、こんなに腹が立つのは水嶋の無警戒に対してじゃ無い。自分を諦めてしまったような無欲にでも無い。
個として、特別な相手だと認識されてない様な…、どうでもいいと思われているような、そんな気がした。
ちょっと乱暴だったと思う。
自分でも驚くくらい頭に血が登ってどうにもならない、行為としてはDVに近かったと思う。
突然顔を上げた俺に驚いている水嶋を抱き上げ、風呂場に放り込んだ、シャワーを浴びたのはお互いにスーツのままだ。
片手は風呂桶の縁にしがみ付いている。もう片手は拘束するように背中に回し自由にはさせてない。四つ這いになった膝下にはスラックスと下着がズリ下がっている。
濡れたシャツが張り付く背中は肌色が透け、ウネウネと山を描く背骨のラインがSの字に撓む。
一応脱いで脱がせた2人分のジャケットは排水口の辺りでグチャグチャになって固まっていた。
「ふ……あ……は…あ、江越…手を…手を離せ」
「だって…自分で触ろうとするから」
「もう…あ…あ…駄目だから…頼むから…」
「水嶋さんが……悪い」
途切れ途切れの哀願が濡れた浴室に響いて篭る。
水嶋相手では無くても、誰かにこんな真似が出来るなんて思いもしなかった。
膝立ちで怒張した下半身を押し込む先はただでも狭いのに、脱いでない各種ボトムのせいで足が閉じてるから尚狭い。潤滑剤の代わりにしたボディソープがにわかに泡立ち、ズボ、ズボ、とあられも無い音を立て、中を穿つ切っ先は狭道を抉り、腕を回した下腹から掌に感じる程だ。
パンっと腰を打つと細い背中が躍る。
「キツイねん」とか「早いねん」とか文句を言いながらも恍惚に身を委ねる様はいつもと同じだと思っているから……つい「ご希望のお風呂です」なんて言ってしまった俺は……子供だと思った。
怒り半分、後ろめたさ半分、疑問半分なのだと思う。考え込むようにムッツリとしているから配分はわからないが、何だかんだと文句を言っていた割に、素直にアパートまで一緒に帰ってくる所は水嶋の愛すべき点と馬鹿だと思える点だ。
そこに付け込んでいるつもりは無いが、そこが付け込まれる隙でもあるのだ。
そして、考え込んでいる水嶋は部屋に帰っても水風船にはならずに、多分どこにいるかもよく考えてない。
声の無い呟きには「童貞」が混じっているから恐らくまだ拘っているのだと思う。
水嶋さん、ここは謝らせてもらう(心で)
もう一回言うけど、お尻は貸せない。
そして、今更女子とどうこうなんて許さないし、見過ごさないし、あったとしても爽やかに邪魔をする。だって、もしも水嶋がその気になったら簡単だと思うから。
何よりも水嶋はお金を持っている。そこはきっと大事だ。そして、懐に入ってしまえば本当の水嶋が見え来る、そしたらすぐに落ちると思う。何と言っても水嶋は優しいのだ。
程なくして「優しい」の本当の意味を知るだろう。何をしても、どんな我儘を言ってもハイハイと付き合ってくれるのだ。(証明済み)。例え、力を込めたオナラをブリっとこいても「実が出てないか?」…で終わる(証明済み)。疲れる仕事から帰ってきたのにビールが無かったから「買って来て!」って暴れてみれば「やれやれ」って立とうとするし(結局一緒に行った)
お金は稼ぐけど使わないし、しかも殆ど家にいない、いても掃除の時に邪魔なくらいだ。家事はしないけど、やってと言えばやると思う。
そして……。
どうしても拭いきれない例の問題を克服したら子供だって望める。きっと、水嶋を知る人から「お前誰だ!」って言われるくらい、この上ない愛情を持って育てて行くのだろう。目に見える。
例え、敵対する経理の女子だってそんな水嶋を深く知れば落ちると思う。何なら部長だって課長だって、その辺にいる奴全て「イキ顔が見たい」とか……きっと思う。
そう考えると……「やってる」水嶋を一度見てみたいとは思う。しかし、お尻は貸せないからやはりそこは諦めてもらおう。
「もう俺しかダメって事で…」
「ああ、ダメだな」
「……何がダメなんですか」
「え?」
「さあ?」って……。
何だか水嶋の視界に入っていないような気がして、足を投げ出し座ったまま呆けている背中に凭れてやった。するとグーっと押し返してくる。
押されたら押し返すよな。
そして、ヒョイっと避けてやると、パタンと落ちて嘘みたいに膝枕の形になった。
相変わらず誘うの上手。
今はお互いに素面の上、まだ夕方の5時を過ぎたばかりなので部屋も外も明るかった。
何かするなら(するけど)ご飯を食べてお風呂に入ってまったりとした所で口説こうと思っていた。
しかし、そこは水嶋だ。パッと目を逸らせ、慌てて起き上がろうとしたけど手を滑らせてバフッと太腿に顔を埋めてる。
これ、誘ってるよな。
絶対にわかってて誘ってる。
昨晩もお預けを食らっているのだ。
「いただきます」
「いただくな!」
キスをしようとしたら殴られた。
「そこは、「よろしゅうおあがり」でしょう、京都で教えてくれたじゃ無いですか」
「よろしゅうおあがりは「ご馳走さま」だ」
「え?そうでしたっけ?じゃあ終わったらいいます」
「言わなくていいから」
「そうやってすぐに誤魔化す」
このままではふざけて、言い訳をして逃げられそうだったから一番先に手を伸ばしたのは下半身だ。スラックスの上からふかふかの股間を抑えると「クソ」とか「すぐそれだ」とか言いながらも抵抗はしないのだ。
すぐにフニャッとなって頭に巻き付けた腕に噛み付いて来る。
甘噛みね、悔し紛れだね。
もうこの際だから男らしく女役を認めて欲しい。
いつもこんな風だから「嫌だ」と言われても本気だとは思えない。
股間をゆっくり揉み込解すとすぐに手応えが出て来た。
もう片手でベルトを外すのは得意になっている。
ズボンの中に手を忍び込ませると、水嶋の細い体がブルッと震え、ハァって吐き出した息が次を誘っているようだ。
下がった眉は困ってるからじゃないよな?
「気持ちいい?」
「なあ江越……出来れば風呂………に入りたいんだけど…」
「俺も入りたいです…後でいいですけど」
「じゃあ口は……無しな?」
「それはやって欲しいって意味ですか?」
何でそうなるって水嶋は怒るけど、セックスを許容したやり取りの中で「口を使うのはやめよう」とはやって欲しいと同義語だと思う。
リクエスト通りに胸を這い、腹を這い、割れたチャックの隙間に頭を沈めるとビクっと両足が上がった。
もう股間に顔を埋めてる俺の頭を抱いてるのに、「俺は酸っぱいぞ?」と、謎の申告だ。
そりゃ隅々まで舐めるけど、舐めるられる事前提なのが面白い。どんな味がするのかなと、パンツのジッパーを下ろして下着の割れ目から舌を忍び込ませるとポロンと飛び出て鼻に当たった。
ちょっと匂いでから舐めてみると確かにチンコの味じゃ無い。
「うん、酸っぱいですね、ワイズフードのパーティでは裸になって檸檬の掛け合いでもする奇抜なイベントでもあったんですか」
「違うわ、ホテルに行く前にちょっとだけうちの倉庫に寄っただけだ」
「それにしても何でこんなとこが酸っぱいんです、まさか変な所で変な事を」
もしくは変な事をされたか……。
そう考えると笑っている場合じゃ無い。
水嶋は男にモテるのだ。
言い方を変えればホモにモテる。
男とセックスなんて想像した事も無かったいち好青年がいとも簡単に吸い込まれたのだ、その心配は常にある。
「アホ」と水嶋。
「アホじゃ無いです、あんたには実績があるんですからね、どうしてチンコだけが酸っぱいんですか…」
「俺だって知らないけど……そこは…ほら、トイレにだって行くだろう」
「トイレって……」
奥田製薬第二営業部の主力製品は食品添加物を多く取り扱う。主に膨張剤や増粘剤、酸化防止剤、中でも保存料は、とにかく酸っぱい物が多い。
それって…つまりそれってソルビン酸とかクエン酸とかアスコルビン酸とか酒石酸とかフマル酸とか何か(まだ味ではわからない)酸っぱい製品に塗れた手でナニを触ったからって事で……もし、これが他の誰かなら、引く程禍々しい光景ではあるが、何故か水嶋が相手だとエロ欲を駆り立てる材料になる。
「だから風呂に…」
「散々煽っておいてそれは無いです」
「煽ってない」って本当にこの人は馬鹿。
口に含んで舌を使い、揺らして吸い付く。
しかしちょっと虐めたい気分でもあるのだ、生かさず殺さず、エロい腰が動くと圧を弱め、こめかみを挟んだ手が頭を揺すろうとすると先っぽを舐めるだけにした。
焦らす。
遊ぶ。
変な男の誘いに乗ろうとしたからちょっとした罰。「江越…」と情けない声が出て来たから、ここで聞きたかった事を聞いてみる。
「何かされたんでしょう?」
「何…が?……何の話だ」
「前橋ですよ、俺に嘘付いてまで会ってた、そうでしょう?そこで何かされましたよね?」
前橋の態度には「もう手は付けた」という、自らの所有物に対しての傲慢さが見えたのだ。
幾ら父親の威光があっても、幾ら謎の自信を持つ勘違い野郎でも、社交辞令込みの世間話の中で、どこに住んでいるかを聞いたくらいで「行く」とはならないだろう。
「体を触られた?ズボンに手を突っ込まれた?まさか変なホテルにでも連れ込まれたんじゃ無いでしょうね」
「アホ、ちゃうわ」
浅く、早めの息、関西弁、これが揃えば水嶋はどうにでもなる。
寸止めと追い上げを繰り返し、吐かせたのはいいけど、ちょっと許せなくなった。
「キスをされただけだ」
クネクネと腰を捩らせ、太腿が頭を締めてくるこの状態で、「キス」に「だけ」を付けた。
「……何ですか……それ」
「透けたシャツから乳首を覗かせ、ゲイバーで飲み枝垂れている時に声をかけられキスをされた」
……それならわかる。許せないけどわかる。
佐倉を擁護したりは出来ないけど仕方が無いとは思う。
しかし、前橋はビジネスの場で優位な立場を利用して、まだ社交辞令しか話して無い相手にキスを迫った。そして水嶋はそんな相手に対し、まだ笑いかけ、2人で抜けようという誘いに乗ろうとした。
多分、こんなに腹が立つのは水嶋の無警戒に対してじゃ無い。自分を諦めてしまったような無欲にでも無い。
個として、特別な相手だと認識されてない様な…、どうでもいいと思われているような、そんな気がした。
ちょっと乱暴だったと思う。
自分でも驚くくらい頭に血が登ってどうにもならない、行為としてはDVに近かったと思う。
突然顔を上げた俺に驚いている水嶋を抱き上げ、風呂場に放り込んだ、シャワーを浴びたのはお互いにスーツのままだ。
片手は風呂桶の縁にしがみ付いている。もう片手は拘束するように背中に回し自由にはさせてない。四つ這いになった膝下にはスラックスと下着がズリ下がっている。
濡れたシャツが張り付く背中は肌色が透け、ウネウネと山を描く背骨のラインがSの字に撓む。
一応脱いで脱がせた2人分のジャケットは排水口の辺りでグチャグチャになって固まっていた。
「ふ……あ……は…あ、江越…手を…手を離せ」
「だって…自分で触ろうとするから」
「もう…あ…あ…駄目だから…頼むから…」
「水嶋さんが……悪い」
途切れ途切れの哀願が濡れた浴室に響いて篭る。
水嶋相手では無くても、誰かにこんな真似が出来るなんて思いもしなかった。
膝立ちで怒張した下半身を押し込む先はただでも狭いのに、脱いでない各種ボトムのせいで足が閉じてるから尚狭い。潤滑剤の代わりにしたボディソープがにわかに泡立ち、ズボ、ズボ、とあられも無い音を立て、中を穿つ切っ先は狭道を抉り、腕を回した下腹から掌に感じる程だ。
パンっと腰を打つと細い背中が躍る。
「キツイねん」とか「早いねん」とか文句を言いながらも恍惚に身を委ねる様はいつもと同じだと思っているから……つい「ご希望のお風呂です」なんて言ってしまった俺は……子供だと思った。
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