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トロトロ違い。
しおりを挟む凭れたドアをズルズルと滑り落ちていく水嶋に擬音を付けると「デロン」と「プルプル」。差し詰め蒟蒻と言ったところだ。
逃げて行く体を追って座り込んだ。
すると、緩~いビンタがペタンと頬を撫でた。
「それ……拒否する気は無いですよね?」
「してるだろ~…俺は…しないからな」
「それは体に聞いた方がいいですね」
「体じゃ無くて……俺に……聞け…」
「欲しい欲しいと体も水嶋さんも言ってますけど…」
「言うてへんわ」
「ハイハイ」
また、ペタンと頬を撫でられ恒例の「ハイは一回」だ。
水嶋のどこが好きって聞かれれば、とにかく首が好きだ。長く細い首が好き、普通の男が普通にスーツを着るとシャツとジャケットの襟で普通に隠れてしまうから、どんな首をしているかなんて意識もしないが、水嶋は違うのだ。まあ、いつも凝視しているからって事情もあるが、少し余ったシャツの襟からニョキっと首が出ている。
それは随分と生々しくて色っぽい。
「………だって……勃ってますよ」
「触んな~」と甘えたような声で言われても、まだそこは触ってないし、ちょっと首と乳首を舐めただけだし、押し倒して鼻を擦りつけているだけだ。
感度がおかしいと思う。
時々思うけど、この人は肩を摩ったり脇を撫でるだけでもイケるんじゃ無いかと疑う。
普段から脇には弱いけどエッチなスイッチが入ると体のどこを触ってもピクピクとよがるのだ。
そして、気持ちよさそうに細めた目を涙で潤ませ色の付いた息を吐く。
酔っている今は更に輪を掛けてむしゃぶりつきたくなるような顔をするのだ。
もう好き。
何かあるとすぐに超嫌な奴に変身するけど、「青木」と「はるやま」を間違えるけど、セックスは全て「事故」と位置付けらるけど、水嶋の首が好き、肩が好き、強情な所も、思い込みが激しい所も全部好きだ。
そのうちに身体中を撫で回すだけ触りまくって焦らし、欲しいと言うまで虐めてやりたいと思ってる。
チュウチュウと首を吸う。
耳を齧りながら、気の済むまでクンクンと匂いを嗅いでゆっくりと、頭を打ったりしないように押し倒す。
なすがままなのくせに嫌とかよく言う。
水嶋は顎の下も好きなのだ。額でアゴを押し上げて……そこで何の反応も無い事に気が付いた。
「………寝てる……」
幸せそうに、気持ち良さそうに、ちょっと笑ったような顔のままスヤスヤと穏やかな寝息を立てている。
このまま続きをすれば……きっと面白い所で目を覚ますのだろうが…
「それは出来ないよな…」
いつの間にそうなったのか…水嶋は性欲を満たす相手では無いのだ………
ヤリたいけど。
一緒に笑い、一緒に困り、一緒にのんびり歳を取っていく、そうなればいいと思う相手だ……
ヤリたいけど。
こうやって体を求める相手を前に易々と寝てしまえるのは気を許している証拠だと思う、しかし……
ここまで来てっ?!
って思うのは許して貰う。
「酷いですね…あれだけ熱烈に煽っておいて…」
ピンと顎を弾くとムニャムニャと応えるが、もうすっかりと深い眠りに落ちている。
いつも、いつも。
引っ張ってくれる、頼りになる、そして、さり気無く守ってくれる。
そこは後輩らしく大きな傘に入れてもらうけど、目を離すとすぐ無理をする水嶋にはその生態を知った愛の手が必要だと思う。
前しか見ない人だから、横とか後ろとか見ないから、せめて、引っ掛けようと突き出された足ぐらいなら防いであげたいのに、手助けをするつもりなのに、何も出来ないまま甘えっぱなしなのだ。
だからこそ、こんな時は頼りになる後輩でいたい。水嶋は自らの体を大切にしようとはしないのだ。立てなくなる程の泥酔も、もうそろそろやめさせたいのにまだまだ無理なのだ。
こうして監視を逃れ、出し抜くように酔ってしまう。このままではいつか必ず体を壊す、それだけは防がなければならない。
「もっと…一緒にいませんか?」
聞こえてないのはわかっている。
その問いはここの所ずっと心の中を占めている事だった。
もう寝ているくせに……「うん」と応える煽り上手な唇に、軽いキスをして毛布と枕と、どこでても寝てしまう水嶋の為に買った簡易マットレスを取りに行った。
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